海外ドラマスペシャルコラム

アメリカTVのスペシャリストがドラマの魅力や見どころを語ります!

Vol.108 話題作「マイケル・J・フォックス・ショウ」第1・2話の1時間スペシャルを見逃すな!

MJFShow_tate_column250_0328.jpg1985年に作られて世界的にヒットした映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は来年の2015年、ちょうど30周年を迎えると共に、そんな2015年は第2作「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」の重要な舞台のひとつで、シリーズ全体が再評価されるにちがいない。

そんな「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の3部作すべてに主演したマイケル・J・フォックスは、何かと“「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の人”と語られがちだが、海外ドラマファンにとっては、けっしてそれだけの男ではない。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に先がける出世作「ファミリータイズ」や後の「スピン・シティ」を通じ、米TV界ではむしろ“コメディドラマ王”と呼ぶべき大物だ。

4月のスーパー!ドラマTVの目玉は、そんなマイケルが主演・製作総指揮を務める日本初上陸作「マイケル・J・フォックス・ショウ」の第1・2話を合わせた1時間スペシャル。マイケルが演じるのは、かつてニュースキャスターとして名声を博したが、パーキンソン病の治療のためにTV界から去った主人公マイク。彼はニューヨーク(「スピン・シティ」でも舞台だった)を世直ししようと、ニュースキャスターの座に復帰する。職業はニュースキャスターと俳優というように異なるが、パーキンソン病のために「スピン・シティ」を去ったマイケルが今回、13年ぶりにドラマのレギュラー出演にカムバックしたことを重ねずにいられないのがファンには泣ける。

いや、ファンを泣かせるためではなく、もちろん笑わせるのがマイケルの目標だ。2001年の同時多発テロ事件以降、特にリーマン・ショックから後のアメリカンコメディは、市民が自身の生活を見つめ直す、等身大の作風が流行している。そこでマイケルはこう考えたのではないか、自身の病気を隠さないことで新たな笑いを生み出せるのではないかと。だとしたら、筆者のようなマイケルファンが、その前向きな姿勢を受け止めない訳にはいかない。マイケルの復活をスーパー!ドラマTVで目撃してほしい。

【アメリカTVライター 池田敏 2014/03/31】

Vol.107 やはり名優ジョン・ヴォイトの存在感が光る!「レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー」上陸!!

Ray Donovan_column250_0227.jpg3月のスーパー!ドラマTVの目玉は、日本初上陸の「レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー」。

主人公のレイは、ジョージ・クルーニーが2007年の映画『フィクサー』で演じ、TV「スキャンダル 託された秘密」でケリー・ワシントンが演じるような、トラブル揉み消しのエキスパート。日本では1979年の東映映画『日本の黒幕(フィクサー)』の影響からか、フィクサー=黒幕と誤解されがちだが、Fix(フィックス)は本来、修理するとか安定させるといった意味で、権力を持つ者というよりは調停する者(揉み消しを含む)だ。

本作でリーヴ・シュレイバーが演じるレイは、セレブが多いハリウッドで評判のフィクサー。第1話では有名バスケ選手に頼まれ、彼が寝ていたホテルのベッドで女性がドラッグの過剰摂取で亡くなった一件を鮮やかに処理することになる。近年、「デクスター」「HOMELAND/ホームランド」「ナース・ジャッキー」など、大人向けのヒット作を連発する全米チャンネルShowtime(ショータイム)らしいスキャンダラスな作品だが、レイの仕事や日常をリアリティたっぷりに描写。セレブ社会という光が生み出す影を濃いめに描く、そのハードボイルド感は極上だ。

加えて素晴らしいのが、レイの謎めいた父親ミッキーを演じる名優ジョン・ヴォイト(「24」シーズン7などでおなじみ)。筆者はTVムービー「UPRISING アップライジング」出演直後のヴォイトにインタビューしたが、威厳も存在感もたっぷりなだけでなく、ナチスドイツに立ち向かうユダヤ人レジスタンスを描いた「UPRISING アップライジング」の裏話を熱く語ってくれ、すっかり感激してしまった。番組数が増えて激戦地と化したゴールデン・グローブ賞の助演男優賞だが、ヴォイトが本作で受賞したのも納得だ。その胸を借りるシュレイバーもトニー賞に輝く実力派。火花散る演技合戦から目が離せない。

【アメリカTVライター 池田敏 2014/02/27】

Vol.106 スリリングなのに女性も楽しめる最新ヒットミステリー、「ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言 シーズン2」

Body of Proof_y2_column250_0130.jpg2月のスーパー!ドラマTVの目玉は、このコラムのVol.98でもご紹介した最新ヒットミステリー「ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言」のシーズン2だ。

検死官がヒロインと聞いて、遺体がしょっちゅう出てくる怖いドラマを想像する人がいるかもしれないが、グロい描写は某科学捜査ドラマほど刺激的ではなく、それでいて事件の謎解きの面白さやスリルはたっぷり。ヒロインのミーガン・ハントがとにかく魅力的で、彼女と女性の上司ケイト(「スタートレック/ヴォイジャー」のジェリ・ライアン)とミーガンの元夫なんて三角関係もあり、男性だけではなく女性も大いに楽しめるだろう。ミーガンが男性の同僚や刑事を相手にしっかりと自己主張していくのも、共感や憧れを呼ぶにちがいない。

本作の成功の理由はやはり、ミーガン役のダナ・デラニーの好演が大きい。女性の年齢の話は失礼と承知の上で書くが、とても五十代とは思えない美貌の持ち主だ。実はあの「SEX AND THE CITY」のヒロイン、キャリー役をオファーされたことがあるデラニー。赤裸々なガールズトークが注目された映画「青い体験」(1995、日本は劇場未公開)にキム・キャトラルらと出演していたのが目に止まったそうだ。デラニーは自分のイメージに合わないと断ったが、親友でもあるキャトラルにはサマンサ役を引き受けるべきとアドバイス。結果、キャトラルは「SATC」でブレイクし、デラニーも後に「デスパレートな妻たち」でキャサリンを新たな当たり役にした。

そんなデラニー、2008年のあるインタビューで、当時80歳の母親が現役のインテリア・デザイナーで、彼女から高いプロ意識を学びながら育ったと語った。その影響からか、仕事やチャリティで忙しい毎日を送り続けているデラニー。プライベートではずっと独身を続けているが、幾つかのインタビューにまだ結婚願望があるとコメント。いや、これほどチャーミングならいつ誰と結婚してもおかしくないでしょ!

【アメリカTVライター 池田敏 2014/01/30】

Vol.105 主演男優はスキンヘッドで役者人生の新章へ。最新全米ヒットドラマ「ブラックリスト」上陸

blacklist_column250_1226.jpg2014年1月のスーパー!ドラマTVの目玉は、日本初のレギュラー放送が始まる「ブラックリスト」だろう。全米で2013年9月23日に始まったばかりの本作は、たちまち全米ネットワークが放送中の番組の視聴者数トップ20に加わり、シーズン2への継続がすぐに決まった上、最近ではトップ10に到達。2014年1月発表のゴールデン・グローブ賞TV部門でジェームズ・スペイダーはドラマ・シリーズ主演男優賞にノミネートされた。

まず第1話のオープニングにぐっと心臓を掴まれる。スペイダー演じる犯罪者“レッド”ことレディントンはFBIに突然出頭して捜査協力を申し出るが、自分の担当にFBIアカデミーを卒業したばかりの新人プロファイラー、エリザベス(メーガン・ブーン)を指名。凶悪犯と新人FBIの組合せから映画「羊たちの沈黙」を思い出させる導入部だが、続いて護送中のレディントンが武装グループに命を狙われるあたりから、本作が21世紀型のスピーディでテンポが速いアクション・サスペンスであることが鮮明になっていく。とにかく謎めいたレディントンの存在感が圧倒的だ。

演じるスペイダーは1980~90年代に映画界で多彩な役を演じた後にTV界へ転じ、「ザ・プラクティス」「ボストン・リーガル」でエミー賞のドラマ・シリーズ主演男優賞を3度も受賞。あくまで推測だが、もう仕事を選べる立場なのにあえてレディントン役を引き受けたことには理由があるはず。「羊たちの沈黙」でアンソニー・ホプキンスがレクター博士を初めて演じたのは52歳か53歳だった頃だが本作の全米放送開始時、スペイダーは53歳だった。こんな意気込みがあったのではないか。“俺も役者として、もっと翔べる”と。TV「ザ・シールド ルール無用の警察バッジ」を経て映画やTV「VEGAS/ベガス」で活躍するマイケル・チクリスを参考にしたのか、スキンヘッドにしたのが実に意欲的。スペイダーの俳優人生の新章としても要注目だ。

© 2013 Sony Pictures Television Inc. and Open 4 Business Productions LLC. All Rights Reserved.

【アメリカTVライター 池田敏 2013/12/26】

Vol.104 旬の大物J.J.エイブラムスの才能とは?「恋するブライアン」は要注目のヒントだ!

brian_column250_1128.jpg12月のスーパー!ドラマTVの目玉は、旬の大物J.J.エイブラムスが製作総指揮し、2006~07年に全米放送された「恋するブライアン」。

J.J.はまず、筆者も大好きなキャンパス・ドラマ「フェリシティの青春」を成功させたかと思えば、続く「エイリアス」で急転してスパイものに挑み、大スケールの「LOST」も手がけるなど、多彩なジャンルを横断し続ける点、実は手堅いヒットメーカーというより挑戦者だ。そして「LOST」の2年後、ぐっとスケールダウンし、まさか悩める三十代男女を題材にしたのが「恋するブライアン」。

主人公は三十代前半で、周囲の中唯一独身のブライアンバリー・ワトソン)。彼と同世代の男女がおりなす、いわば“三十代前半あるある”の世界だが、題材に沿い続けてブレない姿勢はJ.J.らしい。1980年代から海外ドラマを見ている人には、エミー賞でドラマ・シリーズ作品賞に輝いた「ナイスサーティーズ」(1987~91)の再来と見る人もいるかもしれない。ブライアン役のワトソンは、11シーズンも続いたが日本未放送の「7th Heaven(原題)」(1996~2007)で名製作者アーロン・スペリングに見出されて人気スターとなり、後に「ゴシップガール」シーズン6ではスティーヴン・スペンス役を演じた。

「恋するブライアン」に話を戻すと、楽しいのはJ.J.の旧作「フェリシティの青春」のキャスト、エイミー・ジョー・ジョンソンやアマンダ・フォアマンも出演していること。「フェリシティの青春」「エイリアス」「LOST」やJ.J.の他の映画・ドラマのスタッフを見渡しても分かるが、同世代のクリエイターたちと充実した共同作業ができることがJ.J.の稀有な才能だと「恋するブライアン」は証明している。ネットの時代、赤の他人といちいちつながりたがる人が増えたが、まずは自分の周囲の友人こそ大切にすべきだという当たり前のことを実践しているから、やはりJ.J.作品は信頼できるのだ。 

© TOUCHSTONE TELEVISION

【アメリカTVライター 池田敏 2013/11/28】

Vol.103 最凶犯罪者の正体を全米とリアルタイムで探れ 「ブラックリスト 第1話先行プレミア放送」

blacklist_column250_1031.jpg11月のスーパー!ドラマTVの目玉は「ブラックリスト 第1話先行プレミア放送」に尽きる。かつて海外ドラマは、本国で最低でもシーズン1の放送が終わらないと日本上陸が難しかった。日本のTV局としてもシーズン1全体でどんな出来だったか、シーズン2以降続くのかといった情報がないと、自局の売りにけっしてできなかったからだ。

しかし、今やありとあらゆるメディアを通じて海外ドラマが日本に入って来るようになり、ここ数年は本国で放送が始まっていないドラマまで日本上陸するように。あえて言おう、今や海外ドラマはギャンブルの世界だと。しかし、お客(ファン)をすっからかんにして帰すこともないのは、TVが庶民のためのメディアだからか。五感を駆使して情報を少しでも多く入手し、長く続きそうなドラマを見つけること自体、これまで多くの海外ドラマファンがお楽しみにしてきたことで、変わったのはタイミングが少し早まったことだけだろう。

そして今秋の全米TV界の改編シーズンでいち早く勝ち組に名乗りを上げたのが、この「ブラックリスト」。FBIに1人の男がふらりと訪れる。男は最重要指名手配犯、レイモンド・“レッド”・レディントン。演じるのは、日本の映画ファンには「セックスと嘘とビデオテープ」(89)などでおなじみのジェームズ・スペイダーだが、見た目はかなり変わり、特にスキンヘッドなのがカリスマ的でミステリアス。彼はこれから起きる凶悪事件を予言するといい、やがてそんな事件が続々と発生。“レッド”は神か、それとも悪魔なのか……。

監督に映画「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」「THE GREY 凍える太陽」のジョー・カーナハンを迎えた第1話に、まずは筆者は圧倒された。全米では地上波のNBCネットワークで放送されたが、主人公が善か悪かをまったく予想させないのは地上波向けドラマとしては未知の領域。まずはこの先行プレミア放送で片鱗を体験してみたい。

© 2013 Sony Pictures Television Inc. and Open 4 Business Productions LLC. All Rights Reserved.

【アメリカTVライター 池田敏 2013/10/31】

Vol.102 男の意地と誇りを描く米国版「半沢直樹」!?日本初放送の話題作「VEGAS/ベガス」

VGS-keyart_column250_0930.jpg10月のスーパー!ドラマTVの目玉は「VEGAS/ベガス」の日本初放送開始。見どころ満載の大作だが、まずは時事ネタを押さえると、日本ロケが話題の「ウルヴァリン:SAMURAI」のジェームズ・マンゴールド監督が製作総指揮&第1話監督というのが凄い。トム・クルーズ主演「ナイト&デイ」などアクションの名人であると同時に、初期作「コップランド」から後の西部劇「3時10分、決断のとき」まで、米国のフロンティア・スピリットを描くのが巧い逸材だ。

1960年に始まる欲望の都ラスベガスの栄枯盛衰を迫力たっぷりに描くこの「VEGAS/ベガス」でマンゴールドと並ぶもう1人のキーパーソンは、映画「グッドフェローズ」でアカデミー脚色賞に輝き、同じくラスベガスが舞台の映画「カジノ」で脚本も担当し、当番組を企画したニコラス・ピレッジ。正義感が強い保安官ラルフ・ラム(実在の人物をデニス・クエイドが熱演)と、あるカジノを仕切るマフィアのサヴィーノ(TV「ザ・シールド」で悪徳刑事を激演したマイケル・チクリス)の死闘をスリリングに綴る。

一見正反対でライバルのような2人だが、まだ砂漠の中の小さな歓楽街に過ぎなかったラスベガスを外部からの圧力から守るという役割を引き受けた点で、実は呉越同舟なのが面白い。銀行マンたちが男の意地と誇りを懸けて戦った日本のドラマ「半沢直樹」とどこか似ているのは偶然か。いや、リーマン・ショックからこちら、時代と戦う男たちにエールを贈る点で両者はよく似ている。むしろ“倍返し”なんてハッタリは一切なく、会社という小さな共同体にも束縛されることなく、ひとつの町を築こうと挑む人々を、当時興隆しつつあった暴走族ヘルズ・エンジェルズをさりげなく盛り込むなど、米国の暗黒史と交錯させながら描く手腕は実にキレキレ。

欲望とモラルをバランスよく描いて美学とすら感じさせる「VEGAS/ベガス」。まずは第1話は必見だ。

© 2013 CBS Studios Inc.

【アメリカTVライター 池田敏 2013/09/30】

Vol.101 ますます深まる犯罪の"業"から目を離せない 人気作「クリミナル・マインド シーズン5」

criminal mind _column250_0829.2.jpg世界的なTVの多チャンネル化の中、米国ドラマに相変わらず勢いがある理由の一つは、一部の犯罪ドラマに突出した勢いや深みがあるからだろう。9月のスーパー!ドラマTVの目玉、「クリミナル・マインド シーズン5」もそんな1本だ。

州ごとに法律が異なる米国で各州の犯罪捜査機関に協力する米連邦捜査局、いわゆるFBIだが、そんなFBIの一流プロファイラーたち、BAU(行動分析課)が全米各地の連続殺人事件に協力していく本作。ところで、犯罪ドラマの魅力とは何だろう。筆者は、犯罪をきっかけに浮かび上がる人間のダークサイドではないかと思う。この「クリミナル・マインド」にも、異常なシリアルキラー(連続殺人鬼)のせいでプロファイラーたちや事件に巻き込まれた面々が自身のダークサイドと向き合うことにつらく思うこともある一方、好奇心を強く刺激され、人間が背負った“業”を痛感させられる。

そんな「クリミナル・マインド」シーズン4最終回では、かつてホッチ(トーマス・ギブソン)も捜査にあたって逮捕に成功した連続殺人犯リーパー(C・トーマス・ハウエル)が再登場。そんなリーパーにホッチは急襲され……。新シーズン、ホッチの運命が気になると共に、リーパーの凶行はエスカレートしていき、理由は筆者も説明できないほど理不尽だが、同時に一応の納得をさせられるのがまた怖い。そんな矛盾こそが人間が背負った“業”であるかのようだ。ホッチVS“リーパー”の決戦を描く第9話「死に神との決着」は、30年以上海外ドラマを見続けている筆者にとっても、忘れられないエピソードの一つとなった。また、第18話「2つのBAU」は、名優フォレスト・ウィテカーを主演に迎えたスピンオフ「クリミナル・マインド 特命捜査班 レッドセル」とのクロスオーバー・エピソード。

送り手と受け手が“業”を共有させられるのがたまらない「クリミナル・マインド」から、引き続いて目を離せない。

© ABC Studios

【アメリカTVライター 池田敏 2013/08/29】

Vol.100 真相を推理するお楽しみに没頭させられる「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」

TheFALL_column250_0729.jpgおかげさまでこのコラム、今回で第100回(のはず)。いつもご愛読いただきありがとうございます。今後もがんばりますよ~。

さて8月のスーパー!ドラマTVの目玉は、独占日本初放送の英国サスペンス「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」。ヒットドラマ「X‐ファイル」でダナ・スカリーを演じたジリアン・アンダーソンが主演し、今年5~6月に全英BBC2で放送されて高視聴率をマークしたばかりの話題作だ。BBCはシーズン1が放送中の5月にシーズン2の製作を発表するほどの大反響を呼んだ。

舞台は英連邦を構成する国の1つ、北アイルランドの首都ベルファスト。そこで起きた2つの殺人事件を捜査すべく、ロンドンにあるスコットランドヤードから女性の警視ステラ・ギブソン(アンダーソン)が現地へ。そこで第3の事件が発生し……。様々な点で英国の犯罪サスペンスらしい作風で、それでいて型にはまることをよしとしない英国ドラマらしさを併せ持つ、ディープなテイストのドラマだ。

対極に、米国の犯罪ドラマを置いてみると魅力は理解しやすくなる。米国の犯罪ドラマは見る者をスピーディに引き込むべく、記号化・パターン化を駆使する。例を少し挙げると、パーティ場面では必ず何か事件が起きる、オタク・キャラは地味でもそこそこ活躍、流血する登場人物は白い服を着がちetc.

しかし、ミステリー好きの国民が多いと思われる英国の犯罪ものは、そうした単純化に満足しないファンが多いのだろう。この「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」も、主人公のステラ自身だけでなく、多くの登場人物に二面性がある。しかし、犯罪をめぐる人間模様は本来きっとそうあるのがリアルであり、同時に、真相を推理するというお楽しみに没頭するのに適したスタイルなのだろう。近年、米国でリメイクされる英国ドラマが増えているが、本作もその可能性は高いと見た。まずは第1話の衝撃的クライマックスまで、ぜひ見届けてみてほしい。

© Steffan Hill 2012

 

【アメリカTVライター 池田敏 2013/07/29】

Vol.99 本当にパーフェクトなクライマックスに期待!「CHUCK/チャック ファイナル・シーズン」

chuck5_250.jpg7月のスーパー!ドラマTVの目玉は「CHUCK/チャック ファイナル・シーズン」だ。前シーズン最終話はチャックサラの結婚という番組史上最大の見せ場で大いに盛り上がったが、米国ドラマ好きはこう思ったのではないか。“主人公が結婚したことで番組の命が縮まったかもしれない”と。

そんなドラマは実際キリがないほど多く、主人公の結婚で盛り上がる反動もあってそれからテンションが下がり、番組ごとフェードアウトしがちだ。しかし、さすがは「CHUCK/チャック」。前シーズンの結末は、ある戦略に基づいていたように思える。戦略とはずばり、このシーズン5をファイナルにして有終の美を飾ることだ。やり残したことをすべてやり尽くす、送り手も受け手も後悔しないように。それはエンタテインメントの矜持を思わせる。

人気がある限りは少しでも長く番組を続けることを是とする米TV界において、送り手が自発的に番組のゴールラインを決めることは冒険のはずだ。「CHUCK/チャック」のスタッフもまたチャックの冒険の最後に、自分たちもそんな冒険に挑んだのだとしたらとても感動的。前出のやり残したことを考えると、まず只のオタクだったチャックがサラと結婚し、リア充になったかと思わせたが、いきなり彼を経済面でピンチに立たせる。そしてケイシーモーガンのキャラをさらに掘り下げていく。ケイシーにもロマンスをと願い続けたファンには嬉しい展開もある。

また、これはとても大胆だが、チャックがCIAを敵に回したこと。前シーズン最後で宿敵デッカーが言おうとしたことは何か。小ネタも、チャック来日というエピソード(誘拐されてだが)があるのも楽しみ。そして最終話は筆者も未見だが、英語のあらすじをざっと読んだ印象では、ちゃんと物語が終わるのは確実そうだった。サラはチャックの結婚の誓いをパーフェクトとほめたが、本当にパーフェクトなクライマックスにぜひ期待したい。

© Warner Bros. Entertainment Inc.

【アメリカTVライター 池田敏 2013/07/01】

Vol.98 ダナ・デラニー演じる敏腕検死官が魅力的。「ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言」

Body of proof yr1_250.jpg6月のスーパー!ドラマTVの目玉は、「メンタリスト シーズン4」とともに、もう一つの目玉である、チャンネル初放送の「ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言」をお薦めしたい。大都市フィラデルフィアの女性検死官、ミーガン・ハントが主人公の犯罪ミステリーだ。

“検死官が登場人物のドラマは増え過ぎたからもういい”なんて海外ドラマ好きがいるかもしれないが、ミーガンにはヒューマンな魅力がたっぷりなのが他の検死官ドラマと異なると断言したい。

まず、キャリアを重視して家庭生活をおろそかにしたせいで離婚された上、娘を配偶者(夫)に奪われたという設定は、これまでのドラマ・映画でなら男性の役割だろう。ようやく自分の母性に気づいたミーガンを女性は当然応援したくなるだろうし、筆者のような男性も彼女に共感できる。ミーガンがある理由から脳神経外科医を辞め、検死官に転職した理由も同情すべきもの。それでいてミーガンがタフであるという二面性がいい。ドクターだから遺体を見ても動揺しないのはもちろんのこと、捜査をめぐって男性たちにがつんと自己主張もする。情熱を胸に秘めながら、姿勢はクールなのがいい。お医者さんにかかったことがある人ならみんな分かるだろうが、クールなお医者さんのほうが絶対に信頼できる。

そんなミーガンがはまり役なのは、演じるダナ・デラニー。「ER 緊急救命室」のスタッフの旧作「チャイナ・ビーチ」でエミー賞のドラマシリーズ主演女優賞に2度輝き、一時期は映画中心に活動したが、代表作にめぐり会えなかったデラニー。TV界に戻り、ようやく「デスパレートな妻たち」のキャサリン・メイフェア役でスターダムにカムバック。そんなデラニーだからこそ、複雑なプロフィールを持つミーガンに圧倒的な存在感を付加できるのだ。人としての中身もいいが、美貌もまた魅力的。正直にいって、とても五十代には見えない美熟女だ。働く大人の女性ドラマとしても見応えがあるのが「ボディ・オブ・プルーフ/死体の証言」なのである。


© ABC Studios

【アメリカTVライター 池田敏 2013/05/28】

Vol.97 "犯罪+ファンタジー+ホラー"という未踏の 境地をめざした新作「GRIMM/グリム」

GRIMM/グリム_tate.jpg5月のスーパー!ドラマTVの目玉は新感覚ダーク・サスペンス「GRIMM/グリム」の日本独占初放送に尽きると言っていいだろう。

どれほど刺激的で野心的なドラマかという説明はスーパー!ドラマTVのHP「GRIMM/グリム」番組公式ページに譲るとして、個人的に唸らされたポイントはこの約10年、世界のTVシーンで米国ドラマを盛り立てる役目を担った2大ジャンル、犯罪捜査ドラマとファンタジー、両方の要素をまぶした、何とも憎いバランス感。

貢献したプロフェッショナルの顔ぶれを見渡すとまた、その充実ぶりに唸らされる。番組を企画したトリオが、『アベンジャーズ』のジョス・ウェードン監督のもとでTV「バフィー~恋する十字架~」「エンジェル」に参加したデイヴィッド・グリーンウォルト、小品映画だが1980年代を代表する佳作『ヒドゥン』『張り込み』のジム・カウフ、新進気鋭のスティーヴン・カーペンターというだけでもわくわくもの。

さらに、製作総指揮陣の中に「CSI:科学捜査班」のナレン・シャンカー(筆者は本人と会ったことがあるが非常に頭脳明晰なインド系クリエイターという印象)、やはり「CSI:科学捜査班」に始まって「ブラザース&シスターズ」「HAWAII FIVE-0」などのヒット作に参加してきたサラ・ゴールドフィンガー、あと、ファンタジー系ドラマに多数参加してきたタニア・セント・ジョンなどの顔ぶれを見つけ、何か起きないはずはないと期待させられると同時に、そんな気持ちは満足させられた。実際「GRIMM/グリム」は、とにかく面白い。

ユニークなのは、本作が舞台となるオレゴン州ポートランドで実際にロケしたこと。米国の地方に行ったことがある人なら分かると思うが、地方分権を是とする米国ならではの、どこで何が起きてもおかしくない、そんなローカル感もまた「GRIMM/グリム」に独自のムードを加えていると思えてならない。

その面白さをまずはその目で確かめてみてほしい。

© 2012 Open 4 Business Production LLC All rights reserved.

【アメリカTVライター 池田敏 2013/04/25】

池田敏
海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。

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