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海外ドラマおすすめコラム vol.55 ありそうで無かったガールズドラマの進化形「ゾーイの超イケてるプレイリスト」

 
 
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 「ゾーイの超イケてるプレイリスト」は、頭の中で周囲の人々の心が音楽となって聞こえるゾーイ(ジェーン・レヴィ)がヒロイン。そんな彼女の“脳内プレイリスト”は、若いファンには新鮮、そして大人にとっては懐かしい、ガールズドラマの進化形だ。

 恐らく本作に大きな影響を与えた米国ドラマは「アリー my Love」(1997~2002年)と「glee/グリー」(2009~2015年)だ。「アリー my Love」の主人公アリー(カリスタ・フロックハート)は、妄想をよく見がち。当時まだドラマでは珍しかったCGを駆使し、謎の赤ん坊“ダンシング・ベビー”などを描いた。ゾーイの世界で人々が歌って踊る、そのヒントになったのかも。「glee/グリー」はやはり大ヒットした青春ミュージカルコメディ。過去や近年のヒットソングを満載し、幅広い年齢層に支持された。

 「ゾーイの超イケてるプレイリスト」は、「glee/グリー」以上に選曲に凝っている。第1話でモー(「glee/グリー」で注目されたアレックス・ニューウェル)は、ジュース・ニュートンによる「朝の天使(Angel of the Morning)」のカバーを歌うが、この曲はMTVで初めて流れたカントリーミュージック。フレッシュなドラマ「ゾーイの超イケてるプレイリスト」の始まりにぴったりだ。他にも、第1話ではザ・ビートルズの「ヘルプ!」、第2話ではホイットニー・ヒューストンの「すてきなSomebody」、第3話ではザ・ローリング・ストーンズの「サティスファクション」、第4話ではアンドレア・ボチェッリの「君と旅立とう(コン・テ・パルティロ)」など、過去から現在につながる音楽の歴史を踏襲している。

 斬新なのはゾーイが働くIT企業のオフィス。社員がどこにいてもいい最新スタイル、“フリーアドレス”なのだ。ゆったりとしているから、社員たちがいきなりダンスを始めるのも可能(?)だ。ちなみに “フリーアドレス”はコロナウイルス禍で、ソーシャルディスタンスの確保に有利とされる。本作は時代の一歩先にも進んでいく。

 「ゾーイの超イケてるプレイリスト」には、ゾーイの上司ジョーン(「ギルモア・ガールズ」でママ役を演じたローレン・グレアム)や両親(「The OC」のピーター・ギャラガーと映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」のメアリー・スティーンバージェン)という年上の世代も重量な役割で、ゾーイら若い世代と交流。過去から現在、そして未来を結んだタイムカプセル。今までありそうで無かったかもしれない、家族そろって楽しめるガールズドラマだ。

【アメリカTVライター 池田敏 2021/4/22】

 
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