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海外ドラマおすすめコラム vol.30 一見オフビートな犯罪ドラマだが、歴史の転換点を描く大胆不敵な野心作「STARTUP スタートアップ」

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5月のスーパー!ドラマTVの目玉は、チャンネル初放送の「クリミナル・マインド シーズン12」もあるが、日本初放送の「STARTUP スタートアップ」にも注目したい。ダブル主演を思わせるのは海外ドラマ好きにおなじみの2大スター、「SHERLOCK/シャーロック」のワトソン役で知られるマーティン・フリーマンと、かつてスーパー!ドラマTVが日本初放送して人気を呼んだ青春ドラマ「The OC」のセス・コーエン役で知られるアダム・ブロディ。
 
このドラマ、かなりユニークなので驚かされる。題材は時代の最先端を行く“仮想通貨(暗号通貨)”だ。ビジネスのドラマかと思いきや、それに絡むのは、銀行員、キューバ移民のIT女子、ハイチ系ギャングという、ばらばらの3人。彼ら3人が気になるFBI捜査官もいて、これほど登場人物が多彩なドラマは珍しい。
裏社会やセックスといった刺激的な描写もあるが、家族がいるキャラが多いのでホームドラマでもある。そこにおける親の世代と子の世代の対立が、従来の通貨と新しい仮想通貨の関係に重なるのは、いわば“歴史の転換点”だ。主演のフリーマンとブロディも、その斬新さを見込んで出演を決めたのではないか。
 
これまで人のいい役どころが多かったフリーマンが冷酷なFBI捜査官ラスク役で意外な凄みを見せる一方、青年のイメージが強かったブロディも大人の俳優として成長。ちなみにブロディは「CHUCK/チャック」のザッカリー・リーヴァイが主演した映画「シャザム!」でも重要な役を演じている。タイトル“スタートアップ”には動詞としての“始める”といった意味に加え、“ベンチャー企業”や“(コンピュータなどの)起動”もさす。本国で既にシーズン3も製作されたこの新たなヒットドラマ(シーズン2からは映画『パシフィック・リム』などの俳優ロン・パールマンも出演)、俳優陣・スタッフがそれぞれに“起動”に挑んだ野心作として要注目だ。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2019/4/26】
 
池田敏: 海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。