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海外ドラマおすすめコラム vol.39 主人公はゲイだとカミングアウトしたスーパーガイ! 必見ミステリー『インスティンクト -異常犯罪捜査-』

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2月のスーパー!ドラマTVの目玉は『インスティンクト -異常犯罪捜査-』だ。
本作は全米TV史上でも画期的な試みに挑んだ。主人公は地上波の1時間ドラマで初となる、カミングアウトしたゲイだ。
 
まず内容をざっと紹介すると、ニューヨーク市警の女性刑事リジー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)はある連続殺人事件の捜査で、事件のヒントになったらしき本の著者、ディラン(アラン・カミング)に協力を依頼。
 
ディランは突出した個性の持ち主で、現在は大学の心理学教授・兼・作家だが、元CIAで、格闘術も得意でオートバイに乗るスーパーガイだ。そこまではドラマの主人公として珍しくないが、ゲイであるとカミングアウトし、アンディ(ダニエル・イングス)というパートナーがいる。
 
まず引き込まれるのは、婚約者でもある相棒が殉職して以来、相棒を持とうとしなかったリジーの心を、ディランが開いていくこと。
 
やがてディランは市警のコンサルタントとなってリジーの相棒であると同時に、彼女の“ソウルメイト”になっていく。しかし恋に落ちることはないので、実は極めてハードボイルドなのだ(『エレメンタリー ホームズ & ワトソン in NY』を参考にしたのかもしれない)。素晴らしい“バディ”同士だ。
 
一方、ディランとアンディのカップルは微笑ましく、殺伐とした事件の捜査がメインの物語であってもけっして暗いムードにならず、安心して楽しめる。ディランとアンディは養子を持ちたいと願うが、結婚しても子供が生まれないカップルは現実にも多く、2人が醸す無比の“ほっこり”感もムード抜群だ。
 
何よりディラン役のカミング(海外ドラマ好きなら『グッド・ワイフ』のイーライ役が印象に残る)自身、バイセクシュアルで、グラフィックアーティストの男性と同性婚をし、2人は本作の舞台と同じくニューヨークで暮らしている。
 
ダイバーシティの時代を象徴するドラマとして今後も語られていくであろう必見作だ。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2020/1/30】
 
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