3月のスーパー!ドラマTVの目玉は「スタートレック:ピカード シーズン2」の日本初放送だ。
シーズン1は、宇宙SFドラマの名作「新スタートレック」の中心人物ピカード(パトリック・スチュワート)を主人公にする大胆な趣向で「スタートレック」ファンを驚かせたが、宇宙艦隊を退役したピカードがフランスで静かに暮らす姿に過ぎた時間の重さを漂わせつつ、健在だったピカードのパワフルな再起を描く良作に仕上がっていた。ピカードがかつての親友データの娘だという双子のアンドロイド、ダージ/ソージ(イサ・ブリオネス)と出会ったのも「新スタートレック」のレガシーがたっぷり。
とはいえ、宇宙の場面が少ないと思った人も多いのでは。だがシーズン2でピカードは宇宙艦隊にカムバックし、宇宙艦隊アカデミーの総長となる。つまり、より「スタートレック」らしさを増す流れで、ぜひファンは期待したい。
ストーリーは見てのお楽しみだが、亜空間異常をめぐってスケールもアップ。「新スタートレック」ファンをくすぐるアイディアも多く、以前の宿敵ボーグ・クイーンの出現に加え、かつてのキャラたちが再登場して実ににぎやか。お久しぶりのQ(ジョン・デ・ランシー)、ガイナン(ウーピー・ゴールドバーグ)らで、「新スタートレック」は魅力的な登場人物陣によって、前作「宇宙大作戦/スタートレック」の全3シーズンを上回る全7シーズンに到達。人気キャラ再登場はありがたいかぎりだ。
さて「スタートレック:ピカード」から話はそれるが、2月25日、脚本家ロベルト・オーチーが逝去した。まだ51歳の早すぎる別れだ。オーチーは「スタートレック:ピカード」のクリエイターのひとり、アレックス・カーツマンの盟友で、2009年に始まった映画版「スター・トレック」シリーズの第1・2作の脚本に参加。
特に2009年の第1作の成功が「スタートレック:ディスカバリー」と「スタートレック:ピカード」の誕生に与えた影響は大きい。
その貢献に感謝したい。
【海外ドラマ評論家 池田敏 2025/2/28】
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。