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海外ドラマおすすめコラム vol.20 観る人を引き付けてやまない良作の宝庫デンマークドラマの面白さ

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ここ10年ぐらいの北欧ドラマの充実ぶりは、世界的な注目を集めている。「ミレニアム」3部作はハリウッドで『ドラゴン・タトゥーの女』として映画化され、日本でも北欧ミステリーブームの火付け役となった「THE KILLING/キリング」、「THE BRIDGE/ブリッジ」はアメリカほか各国でリメイクされる大ヒットとなった。今年はNetflixでデンマーク発のオリジナルドラマ「ザ・レイン」が配信され、来年は『ドラゴン・タトゥーの女』の続編『蜘蛛の巣を払う女』の劇場公開が予定されている。同様に、北欧出身のスターも映画にドラマに大活躍。「HANNIBAL/ハンニバル」のマッツ・ミケルセンを筆頭に、「ゲーム・オブ・スローンズ」のニコライ・コスター=ワルドーや「ビッグ・リトル・ライズ」のアレクサンダー・スカルスガルド(とその一家)、映画『ミッション:インポッシブル』シリーズで存在感を見せているレベッカ・ファーガソンなど、次々とハリウッドのメインストリームに名乗りを上げている。北欧の映像業界は、まだまだ知られざる才能や新たな人材が眠る宝庫なのだ。
 
そんな中、デンマークから新たな話題作「BELOW THE SURFACE 深層の8日間」が、いよいよ日本でも放送となる。首都コペンハーゲンで、地下鉄の乗客15人を人質にとったテロ事件が発生。多額の金を要求する3人の犯人たちと、対テロ特殊部隊の攻防戦が幕を開ける。現場の陣頭指揮にあたるのは、中東で軍務中に捕虜になって拷問を受けた経験のあるフィリップ。どこか鬱屈したものを抱えながら、強いリーダーシップを発揮すると同時に怒りをあらわにすることもあるフィリップは、タフで有能、仏頂面でクセのあるキャラクターがいかにも北欧ドラマらしい味付けで渋い魅力。このフィリップや人質、犯人、関係者の過去を含めた人間描写には、背景にあるデンマーク社会が抱える問題も見え隠れする。
アメリカやイギリスのドラマで見慣れているような中東や移民をめぐるテーマはデンマークも同じなんだなと納得したり、そういう事情がデンマークにはあるのかといった驚きや発見も。異文化を知るという意味でも海外ドラマを観る本来の楽しみがあるのと同時に、優秀な北欧ミステリーらしくきっちりと張り巡らされた伏線と、それらを回収していく終盤は社会派のテイストもあって見ごたえがある。
 
一方で、北欧ドラマといえば、重厚で密な映像世界に独特の味わいが、ともすれば地味な印象(そこが良さでもある)にもなりがち。だが、本作は対テロ特殊部隊の活躍を描くとあって、爆破や銃撃戦、肉弾戦などアクションも派手でハリウッド的な華やかさがあり、北欧ドラマの幅の広さ、進化を感じさせる一作でもある。主演のヨハネス・ラッセンは、デンマークやスウェーデンの映像作品で活躍する実力派。次なるスター候補として今から注目しておきたい。
 
 
【映画・海外ドラマライター 今祥枝 2018/10/03】