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海外ドラマおすすめコラム vol.9 こちら全米が驚いた 大ヒット「Roseanne(原題)」の打ち切り騒動

朝から晩までTVやネットは大騒ぎ。よくもまあ、次から次へと報じることがあるものだと思います。それに当事者はともかく、振り回された周囲はかわいそう……。
 
え?日大アメフト騒動のことじゃありませんよ。米で大ヒットしたリバイバル・シットコム「Roseanne(原題)」(ABC)打ち切りの話です。
 
この5月、日本に一時帰国していた私は、日大アメフト騒動にもろぶつかってしまいました。記者会見も釘付けに。
 
そんな騒動を引きずってカリフォルニアへ戻ったところ、5月29日の午前中、TVで突然の“Breaking News(ニュース速報)”。なんだろう?と目を凝らしてみると、“Roseanne Cancelled(「Roseanne」打ち切り)”どっかーん。
 
この打ち切りの話は当日あちこちのチャンネルで取り上げられました。日大アメフト騒動ほどじゃないですが、あらゆる角度からいろんな見解が述べられました。そんな大事件だったとは!
 
その「Roseanne」、在米TV愛好家を自称するわりには、私も見ていませんでした。知識としては、工場で働くブルーカラーのロザーン・コナー一家を中心に日々のてんやわんやを描くシットコム~。オリジナルは1988年から9シーズン放送され、リバイバル版は今年の3月から5月に放送されました。
 
“ロザーン一家のてんやわんや”からは全く見る気が起こりませんが、全米ではなんとリバイバルが大ヒット。一話当たり2210万人の視聴者数を稼ぎました(ライブ及び7日間の録画視聴を含む)。この数字は「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」(CBS)、「THIS IS US 36歳、これから」(NBC)と3つ巴の闘いを制したものですから、その人気が分かるというものです。新シーズンの更新も3月の初回放送から3日後にスピード決定していました。
 
ちなみになんで今ごろリバイバルしたかといえば、「フラーハウス」や「ギルモア・ガールズ」(共にネットフリックス)が成功したこと。そして何よりトランプ大統領の誕生で、TVネットワークがいかに庶民のニーズを読み間違っていたか反省したことにあるらしいです。ロザーン・コナーはトランプ支持者の設定ですからね!(トランプ大統領は番組成功のお祝いをロザーンに向けツイートしています)
 
さて前置きが長くなってしまいましたが、ABCが「Roseanne」の打ち切りを決めたのは、主演の女性コメディアン、ロザーン・バー(65歳)のツイッター投稿が原因。イラン生まれで、オバマ前大統領の大統領上級顧問だったヴァレリー・ジャレットを指して、“ムスリム同胞団と『猿の惑星』から生まれた子”とジョーク飛ばしたのです。ジョーク?ののしったと言い換えましょう。
 
この人種差別に満ちたツイートを知ったABCの決断は早かったと言えます。ロザーンのツイッターが炎上後、半日も経たないうちに打ち切りを発表したのですから。
 
新シーズンは間違いなくABCの目玉だった「Roseanne」の打ち切りによる損失は計り知れません。残されたキャストでスピンオフを作る計画もあるらしいですが、良くも悪くもダイナマイトの迫力で番組を引っ張ったロザーンの抜けた穴を埋めることができるのか難しいところ。共演者にはジョン・グッドマン、ローリー・メトカーフら渋い売れっ子が名を連ねています。すでに番組を去ることを発表していますが、製作陣にはワンダ・サイクス、ウィットニー・カミングスら裏に置いておくにはもったいない人気コメディアンが参加していました。凄い番組だったんだなァ、今さらだけど見とけばよかった!
 
 
【ロサンゼルス(米) TV愛好家 橋本ゆめ子 2018/06/06】