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海外ドラマおすすめコラム vol.76 あの名艦長が帰ってきた。「新スタートレック」に生まれたスピンオフ「スタートレック:ピカード」

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2023年1月のスーパー!ドラマTVの目玉は「スタートレック:ピカード」の日本初放送だ。主人公はおなじみの人気SF「新スタートレック」のジャン=リュック・ピカード艦長(パトリック・スチュワート)。ちなみに「新スタートレック」は全米初放送終了後、4本の映画版が作られ、本作はそれらの続編であり、「新スタートレック」から約四半世紀後に生まれたスピンオフでもある。
 
滅亡の危機に瀕したロミュラン人を救おうとしたピカードだがそれを禁じられ、抗議のために宇宙艦隊を辞職。そして2399年、故郷で隠居生活を送るピカードは、新たな事実を知って行動を起こす。先行した「スタートレック ディスカバリー」と同様、壮大なスケールの冒険をVFX満載で描き、予備知識ゼロでも楽しめるが、いくつかポイントを理解しておいたほうがよさそう。
 
まず冒頭の場面、かつてのピカードの部下だったデータ(ブレント・スパイナー)が登場してびっくり。データは映画「ネメシス/S.T.X.」で亡くなったからだ。これはピカードが見た夢だが、ヒューマニズムを重視する「スタートレック」の美学が、ピカードとデータの友情に感じられる。引退したピカードが、故郷である地球のフランスにある生家のブドウ園“シャトー・ピカード”で暮らすのがユニーク。広い畑に囲まれた屋敷で暮らす姿は新鮮だが、名前の通りにピカードは元々フランス系。そんなピカードはまた宇宙に旅立つが、軍人ではなく個人としてだ。老いたピカードがかつての仲間データとまた会いたいと望んでいるようで、実にエモ-ショナル。
 
筆者はピカード役のスチュワートがプロフェッサーXの晩年を演じた映画「LOGAN/ローガン」を思い出した。荒んだ土地で暮らす元ヒーローの中年男性ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)と今回のピカードが重なって見えるのだ。そしてピカードも老いに負けじと奮起する。シーズン2・3も作られており、今後も楽しみだ。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2022/12/27】
 
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。



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