エドゥアルド・カストロ
『アグリー・ベティ』コスチュームデザイナー
インタビュー

『アグリー・ベティ』がウケている理由は何だと思いますか?

ありとあらゆるタイプの視聴者にアピールするドラマ、ですね。それがヒットの理由だと思います。テレビドラマっぽくない、面白くてフレッシュでウィットに富んでいて、きらめく感性と、ほのぼのとしたファンタジーが伝わってくるんです。衣装を探してきてラックにかけて、それをそのまま役者さんに着せるというスタイルも、他のドラマとは違いますね。 『アグリー・ベティ』では常にキャラクターのファッションを変化させることに気を遣っているし、どんな色やスタイルも果敢に取り入れています。コーディネートの幅もとても広いんです。ハイエンドなモード系からローエンドなリアルクローズまで何でも自由に組み合わせています。

『アグリー・ベティ』の衣装は何人で担当しているのですか?

『アグリー・ベティ』の衣装部は大所帯です。初めは6人でしたが、ドラマがヒットして今では13~14人にまで増えました。規模の大きなドラマですし、陰で支えるスタッフが大勢いるのは、お察しの通りです。登場人物すべてにスタイリングが必要ですからね。

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ドラマで使う衣装は、どこで買っているのですか?

ありとあらゆるショップで買いますよ。高級デパートの「ニーマン・マーカス」や「ロバートソン・ブルバード」から、アイザックミズラヒのワンピースを買った「ターゲット」などのスーパーまで幅広く利用しています。昨日は「ベベ」でセーターを何枚か買いました。でもあそこにはベティっぽい服はないですね。

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ベティのファッションとは?

ベティはニューヨークのクイーンズ出身ですから、ファーストシーズンでは明るく大胆な色を使った若々しいスタイルにしました。でも問題は、それだけだとかわいく魅力的になりすぎてしまうこと。そうならないように、オフビートな感じを強調して“アグリー(ブス)”っぽくしなくてはならない。そこで色と素材の組み合わせを工夫してます。例えば、単体で見ればとてもステキなブラウスでも、そこに凄まじい色や素材のスカートを合わせると、とたんにダサくなる。そう、ベティっぽくなるんです。合わないものを一緒にすることでちょっとヤボったいというかカッコ悪くなるんですね。

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ベティのスタイリングは難しいですか?

ややもするとテーブルクロスみたいな色や繊細なフラワープリントのような“おばあちゃんスタイル”になってしまうから、常に若さが失われないように心がけています。シーズン2ではフラワープリントを使わず、代わりに大胆なグラフィックプリントを取り入れてます。よく見ると分かるんですが、彼女の着る服はどれも体にフィットしています。実は、ほとんどブランド物ですが、それに変なセーターやタイツを合わせているところもポイント。ウェストを少し詰めてシェイプするのも好きですね。

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ベティのダサかわいいスタイルは流行るでしょうか?

今、L.A.のショップにはベティっぽいスタイルがたくさん並んでるんです。面白いですよね。今年に入ってからの傾向ですが、本当にどこの店にもある。トリーバーチは大きな柄やドットをあしらったビッグシルエットのワンピースを大ヒットさせました。アイザック・ミズラヒは昨シーズンの『アグリー・ベティ』に出演しましたが、彼が大手スーパー「ターゲット」とのコラボでデザインしたワンピースも実にベティっぽいと思います。ちょっとダサめに外して、なおかつ大胆に。それがオシャレという風潮になってきているんでしょうね。
私の仕事はファッションを作り出すことではないですし、キャラクターを生かす衣装を作ることが務めだと思っています。でも時代の気分をとらえたものが注目されれば、それが流行になる。ファッションとはそういうもの。人の心から生まれるものなんです。みんながあるものを見て何かしらの共感を得れば、いきなりそれがトレンドになってしまう。トレンドは計算して作り出すものではないと思います。どこからともなく生まれるものなんですよ。

今後は、ベティのトンデモないファッションセンスに変化がくる?

シリーズが進むにつれてベティは成長し、ファッションも徐々に変わっていきます。時間をかけてゆっくりね。「モード」の世界に足を踏み入れたばかりの頃は何にでも目を丸くしていた女の子でしたけれど、今や大人の女性になって恋愛もしている。成長とともに彼女のライフスタイルも変わっていきます。成長したベティはもうド派手な色を着ることはないでしょう。トマトレッドはもっと柔らかいレッドに変化して、ファーストシーズンでずっと履いていた靴も卒業です。

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ベティも上質な素材を身につけるようになる?

ベティはこれまでもずっと素晴らしい素材を身につけています。でも、誰もそれに気づかないんです。有名デザイナーの服を着ていても、そうは見えなかったんですね。例えばすごく大きなリボンのついたクロエのブラウス。ウェイフモデルのようなガリガリの女性が黒いレギンスと合わせて着たら間違いなくカッコいいでしょう。でもベティはベストと膨らんだスカートを合わせてしまう。それで、おかしくなってしまうんです。

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ベティで一番お金をかけたコーディネートは?

シーズン1のときに、トップスはトリーバーチの900ドルのブラウスに600ドルのベスト。ボトムスはマイケル・コースのシルクのスカートで、1100ドルのものでした。全部足したらすごい金額です。1シーンで一度使っただけだったんでしが、トンデモないコーディネートなので、そんなに高価なものだなんて誰にも分からなかったでしょうね(笑)。 ベティが来た衣装の中で一番豪華なのは、シーズン2で使ったクロエのワンピース。手染めでベティらしさを加え、ボタンも新しいものを付けました。もとは2000ドルでしたが、カスタムメイドしたものは3000ドルぐらいの価値があると思います。

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お馴染みのポンチョは、また登場しますか?

あのポンチョは今、あるミュージアムに展示されているんです。でも、回想シーンとかでなら、シーズン2で復活するかもしれませんね。昨年ポンチョを取り入れた時は、我ながらワクワクしましたね。

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ポンチョは誰のアイデアだったんですか?

パイロット版を担当したパトリシア・フィールドです。面白いアイデアだと思いました。ポンチョは目に楽しいコスチュームでしたが実は、一度しか登場していないんですよ。

アメリカ・フェレーラはドラマで着る衣装を気に入っていますか?

ハチャメチャな格好を楽しんでくれているみたいですね。今後もステキなワンピースにまるで合わないベルト締めたり変なセーターを重ねたりして、台無しにする予定です。最近取り入れた小物でベティの定番になりそうなのは、インダストリアルっぽいベルト。携帯電話が取り付けられるようになってるんです。

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ベティ以外のキャラクターのことも聞かせてください。

アマンダのファッションについてはどう考えていますか? アマンダには「べべ」というアメリカンブランドを着せていたんですが、だんだんハイファッション寄りに変わり始めて、ロベルトカヴァリというデザイナーのものを使っています。アマンダはとても小柄なので衣装負けしないように気を付けないといけません。シリーズが進んでゆくにつれて彼女のファッションも変化します。ファーストシーズンではケバケバしくて安っぽいイメージでしたが、セカンドシーンではそうでもありません。徐々にエキセントリックな面を前に出して、楽しいファッションにしたいと考えています。オフィスの雌ギツネ的なイメージは変わりませんけどね。

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ウィルミナは?

ウィルミナはファッショナブルで美しい。ポイントは、身につけるものすべてがリッチであることです。つややかなシルクや最高級のカシミアはドルチェ&ガッバーナ、マイケルコース、ケヴァンホール、ラルフローレン等トップメゾンのものばかりです。でも我々が作ったオリジナルの衣装もたくさんあるんですよ。ヴァネッサ・ウィリアムズは素晴らしいボディの持ち主ですから、彼女専用のマネキンがあるんです。作るのは常にシンプルだけれど力強い印象を与えるスーツやブラウスですね。彼女のカラーパレットは非常に限定的です。よく使う色はアイボリー、キャメル、グレー。静かな力をたたえたキャラクターにふさわしい色です。ヴァネッサ・ウィリアムズ自身はどんな色を着ても似合うんですが、一度か二度ダークな色調を試したらキャラクターとしての魅力が半減してしまいました。白やクリーム色だと、彼女の持つパワーがより伝わるんです。

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今までで一番お金をかけた衣装は何ですか?

キャラクターとしてはウィルミナが一番お金がかかっていますね。6000ドルもするキャロリーナヘレラのドレスも用意してあるんですが、まだそれに見合うシーンがないんです。ウソみたでいしょ。セカンドシーズンではウェディングドレスも登場します。カール・ラガーフェルドのようなトップデザイナーがドラマに出演してドレスを作るという設定も話に出ているんですが、最悪の場合は我々が2日で作るハメになるかもしれません。

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クリスティンのファッションについては、いかがですか?

クリスティーナの服は、エスニックが得意なユニークなブティックで調達しています。特にロンドンのコヴェントガーデンで見つけることが多いですね。バリやインドのエスニックジュエリーもよく使います。彼女のスタイリングは楽しいですよ。

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ヒルダは?

ヒルダも楽しいですね。身につけるものはとにかくタイト。ジーンズもスカートも全部タイトです。ドルチェ&ガッバーナのスカートも着ているんですが、気付く人はあまりいないでしょうね。

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「モード」誌の男性スタッフは?

エリックに似合うスーツはドルチェ&ガッバーナ。それとオズワルドボーテングというロンドンのデザイナーのものもいい。それからグッチもね。

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ファーストシーズンでお気に入りの衣装は?

ウィルミナがファッションウィークで着たシルクのコートドレスでしょうか。オリジナルで作成したもので、帽子もそれに合わせてあつらえたんです。コートドレスはサイドにボタンを並べたアシンメトリックなデザインで、とてもステキなものでした。レベッカ・ローミンの赤いコートと赤いシルクのワンピースもお気に入りです。彼女があれを着てエレベーターから出てくるシーンはダイナミックで最高でしたね。

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セカンドシーズンのファッションの見どころは?

そうですね。まずはウィルミナのソフトな色遣いに変化が見られるかもしれません。彼女が置かれる厳しい状況に合わせて黒い衣装が登場するかも! 変化が楽しみなのはアマンダですね。彼女はもっとファッショナブルになっていくと思いますよ。「モード」誌のパリス・ヒルトンとでも言いましょうか。職場でパーティドレスを着たりね。受付嬢としてのキャラクターよりも、視聴者を楽しませるファッショニスタのアマンダが前面に出てくるでしょう。

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このドラマから生まれたトレンドは?

怖がらないで大胆な色に挑戦するってことでしょうか。ベティの色遣いは掟破りですからね。街に出るといろんな色を自由に組み合わせている人をたくさん見かけるようになりました。これからは派手なプリントや明るい色のものが増えるでしょう。それもベティの大胆コーディネイトがルーツかもしれませんね。

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エデュアルド・カストロ

Eduardo Castro

舞台衣装に魅せられ、大学卒業後ロサンゼルスで舞台衣装を手がける会社に入社。そこでセオドア・ヴァン・ランクル(映画『俺たちに明日はない』)やイーディス・ヘッドに師事。映画『マリー・アントワネットの首飾り』でアカデミー賞を受賞したミレナ・カノネロに誘われ、TV「マイアミ・バイス」のシーズン3の衣装を手伝ったことをきっかけに、シーズン4から番組を引き継ぎ、衣装デザイナーとしてデビュー。これまでに手がけてきた作品は「ペッパー・デニス」、ジョナサ・リース・マイヤース主演のTV映画『ELVIS エルヴィス』、ハル・ベリー主演の『ビューティフル・ウェディング』など。「アグリー・ベティ」のパイロット版を担当したパトリシア・フィールドの後を引き継ぎ、第2話以降から衣装を担当。「アグリー・ベティ」では衣装デザイナー組合賞を3年連続受賞。エミー賞にも毎年ノミネートされている。

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