声優名鑑 -広川太一郎

声優で見る作品を選ぶという、ドラマ。ファンは少なくない・・・。毎回一人の声優に焦点をあて、本人インタビューや出演作品の映像をもとに、「ドラマ吹替え制作当時」のとっておきのエピソードや彼らのバイオグラフィーを紹介するドラマ・ファン待望のコーナーを完全収録!

広川太一郎

広川太一郎

「謎の円盤UFO」のエド・ストレイカー司令官、「ダンディ2 華麗な冒険」でトニー・カーティス演じるダニー・ワイルド、モンティ・パイソンのエリック・アイドルの声を吹き替えている広川さん。作品の魅力を引き出す練りに練られた神業的アドリブと独特のセリフ回しは有名ですね。

役者になったきかっけ

広川
小さいころ、学校の先生、ジャーナリスト、演劇活動が、僕の目にはカッコイイ仕事に映っていました。それで高校に入って演劇部に入り、その延長線上で日芸(日本大学芸術学部)の演劇科に入ったわけですから、(役者になった)きっかけとなると、(将来の夢に関する)三つのうちの選択肢の一つである、高校時代に演劇部に入ってしまったということですね。

声の仕事に携わった経緯は

広川
吹き替えの仕事では第一人者といわれる東北新社というところがあります。そこに大学時代の4年先輩で小林 守夫さんという人が入社して(日本語版制作の)ディレクターになられて、僕に声をかけてくれたんです。

声優としての最初のシリーズ

広川
しっかりとは覚えていないのですが、恐らく「シャノン」という30分のシリーズだったと思います。主演はジョージ・ネイダーです。

「ダンディ2」について

広川
当時としては本当におもしろい、楽しい、エンターテイメント性が盛りだくさんなものでした。シチュエーションもよかったですね。今はあまり持ち役という形はないんですが、当時は大体、この俳優の吹替えはこの人・・・と決まっていて、それ以前から僕はトニー・カーティスをやり始めていたので、当然、僕のところに出演の話が回ってきました。
日本で日本人が聞くんだから、日本語として楽しくわかりやすい吹き替えにしたいと思いました。向こうのシステムとか文化とか、そういったものは結構無視しましたね。イギリスなのにレバニラ炒めが入ってきたりとか。半分はウケたんですけど、半分は「やりすぎだよ」とか、いろいろ言われました。でも、僕としては画期的な方向にいったんだから、まあいっちゃえ!っていうんでやりましたね。

リズミカルな言葉が生まれた背景

広川
(「キーがなければ扉も開かぬ 開かぬ扉が気にかかる」のようなリズミカルなセリフを作り出すときに影響を受けたものは)特別ないと思います。大学時代に落語研究会をやっていた時の影響があるんじゃないかと言う人もいますけど。でも、僕がやってきたいろいろな習い事や体験したことなどが混ざり合って、ある種、僕の中にあるドライブ感覚とリズムとテンポみたいなものが相まって、ああいう表現になったのかな。だから、ああいう表現をすることが僕にとって楽しいし、おもしろいしっていうのがあったんじゃないですかね。
「ダンディ2」のアテレコは、大体収録の前日に映像を見て、台本でブレス合わせをして、あくる日が本番になります。だから、台本をもらった日の晩は夜も寝ないでというとちょっとオーバーですが、結構書き込んでから翌日行きました。だけど、そこまでする人は当時いませんでしたね。・・・今もいないかもしれないけれども(笑)。
本番でアドリブをやると、僕にとっては新鮮で楽しいし、ある種、周りにサプライズを感じさせるところがあります。でも、(アテレコは)1人でやってるものではない。みんなの共同作業ですから、「僕はここをこういうふうに直しましたんで、語尾はこうなります」と、リハーサルのうちから僕が書き足したものをしゃべりました。それでも周りの人には迷惑をかけたと思うんです。とんでもないことを言うから。リハーサルのうちにとんでもないことを言うことがわかっていても、本番になってやられると大変なんじゃないかな。だから、周りの人には結構迷惑をかけたと思います。思いますけれども、思いながらやっちゃったというのが「ダンディ2」です。

「ダンディ2」の言葉遊びについて

広川
(なぜ生み出されるかというと)僕の才能? そう言っちゃうととってもばかばかしいんだけど(笑)。でも、これはとにかくイギリスのシリーズものだけれども、日本の人が聞いているんだから、今生きてる日本語でもって伝えたいなということが芯にあったんです。そのためには、ちょっととっちらかってもいいかなってやったことなんです。ものをつくるということに関しては、みんないろいろアイデアを出すわけじゃないですか。しゃべる、語るということに関しても、僕はそこにアイデアを持ち込んでいきたい。だから、そういう意味でのアイデアマンではあったでしょうね。
五七調のしゃべり方にしたほうがリズム感が出てくるし、テンポもいいし、耳ざわりもいい。日本人が聞くときに、「ナニナニナニしてナンとやら」みたいなことは、割とスッと耳の中に入ってきて、心地いい部分があるじゃないですか。だからそれを無意識のうちに僕はやっていたんだと思うんです。

トニー・カーティスについて

広川
僕は吹き替えで早くからトニー・カーティスをやっていました。たまたまあの人は超二枚目からライトコメディみたいなものまでやってくれたので、僕もそれにあやかって幅はつくれたと思います。俳優さんとしてはそんなにうまい人ではないと思うんだけれども、でも僕のしゃべりの中では大切な人で、ありがたい人でした。

ロジャー・ムーア(佐々木功)について

広川
ロジャー・ムーアも僕の持ち役だったんです。たまたまあのときにかち合って、結局はトニー・カーティスをやることになりました。それで、(佐々木)功ちゃんがロジャー・ムーアということになったんです。彼は、吹き替えの仕事を始めてまだ間がないころだったので、吹き替えのいろいろなことを知識として吸収したんじゃないかと思います。

「ダンディ2」の魅力

広川
大げさに言えば、日本の吹き替えがどういうものであるかについて、今はある種のフォーマットができてしまっていて、言ってみれば良くも悪くも無難にできている。けれども、当時僕らがやっていたころは、あまりマニュアルみたいなものはなかったので、手探り状態でした。そういうことも含めて、今どこを探しても「ダンディ2」みたいな吹き替え版はないだろうなと思います。おそらく今見ても、今聞いても、すごく新鮮だと思います。ぜひ、今の若い人に見てほしいですね。

「謎の円盤UFO」について

広川
僕は懐かしんで話すのはあまり好きじゃないんだけれども。でも、あの当時としては結構画期的なSFテレビシリーズだったですね。僕は何よりも気に入ったのは、未来を想定しているんだけれども、そんなに遠くない未来を描いていること。根底には結構「浪花節」な人間性みたいなものがあるんです。(エド・)ストレイカー司令官の家庭環境や、人間の悲しみとか憎しみとか恨みとかっていうものも結構裏側にありました。そういう意味で、SFものなのだけれど、結構くさい人間味がそこに流れていて、その辺が好きでしたね。(ストレイカーは)気持ちは浪花節なんだけれども、立場的には司令官であり、冷静沈着。だから、割とクールにセリフはやりました。
(衣裳に関しても)当時、ミニは流行っていましたね。今で言えばコスプレみたいな。それはそれなりに見ている人の中には、楽しく入り込んでいったんじゃないですか。僕らも見ていて楽しかったし(笑)。

「Mr.BOO! ミスター・ブー」のマイケル・ホイを演じて

広川
僕は、生身で何かを演じるときもそうだし、吹き替えのときもそうなんだけれども、この役がどんなものなのかと一所懸命叩いて、返ってくる音でもって自分の中に吸収していくというとらえ方をします。この人の人生の裏にはこんなことがあったからというような分析の仕方はしないんです。だから、このシリーズの中のこの人のキャラクターとか有り様を、いち早く僕の中に僕なりの解釈で溶け込ませる。あとは周りのバランスとか演出家の意向などを採り入れて、自分の中で咀嚼して、バランスいい状態でもって表現していく。これが僕のやり方です。
要するに、吹き替えでミスター・ブーをやるのも、どうしたらあの人らしくできるか、僕は欲張りだから、「あの人らしく」以上に、日本人に日本語としてどのくらい楽しく伝えられるかをまず考えます。だから、あの役を日本流に増幅することをすごく考える方向で、僕はやってきました。ああいうコメディーものに関しては、なるべく生きた日本語で皆さんに見てもらおう、聞いてもらおうと思っています。というよりも、僕自身がそうやりたいと思ってやってきたんでしょう、きっと。
(いまだに話題なのは)あの当時、「うわあ、おもしれえっ」と言って見た人が、再びノスタルジックに言っているだけなんじゃないかな。今の人に反響があるとすれば、とてもすばらしいし、うれしいことだけれども。その辺が僕もよくわからないんですけどね。

「ミスター・ビーン」について

広川
「ミスター・ビーン」を地上波のテレビでやったときは、確か、滝口順平さんがおやりになったと思います。そうすると、そのまんまやると滝口さんがおやりになったように、(ビーンは)「うーん」「あー」「うーん、あー」とかっていう発声だけで、セリフはあまりしゃべってないんです。それで僕が映画版の「ビーン」をやるとき、しゃべり過ぎのビーンをやろうと思ったんです。だから、彼が「うーん」とか「あー」とか言っているところに、いろいろセリフを入れていく。顔が見えないところにも入れていく。何かやっていて後ろ向きのときにも入れていく。
それをやることを嫌う人もいると思います。ビーンがあまりしゃべらないでやるからおもしろいんだ、と。ビーンをぶっ壊してくれるなという解釈の人もいるわけです。それは、僕はどっちがいい悪いということではないと思います。原作に忠実に吹き替えるのもあってよし、それをぶっ壊したものがあってもいいじゃないかということで、しゃべり過ぎのビーンをつくったんです。

「モンティ・パイソン」当時の熱気

広川
当時はテレビのゴールデンタイムに洋画の吹き替えものがあった時代でした。僕は役者の中では、年齢的に言うと一番下っ端くらいだったんです。「モンティ・パイソン」の中でも僕が一番若い。そういうことで言うと、先輩たちにも臆することなくやっちゃえ!っていうのでやりました。それを快く思わない人もきっといたと思うんですけれども、「あいつ、やってるよ」って、いい意味で相乗効果が生まれたかもかもしれませんね。僕が通常の速度で走らないで、全速力で走っちゃうから、周りが「ちょっと待てよ」と言いながらもついてきちゃうというかな。のっけられちゃうっていうか。でも、それは僕がリーダーシップをとったというのではなく、「モンティ・パイソン」をやっていたときの先輩方も熱量を感じていたんじゃないですか。そうやらなければ仕上がらないということを、皆さん個々に持っていたんだと思います。それが僕みたいなね、ピーナッツが弾けるみたいなのが導火線になって、ワーッという勢いになったという気はします。それは僕のせいというのではなく、みんなそれぞれ持っていたものがポーンと弾けたという気はしました。

アニメ「名探偵ホームズ」での役づくり

広川
「シャーロック・ホームズ」に対して、みんないろんなイメージがあるわけじゃないですか。例えばイギリスでつくられた「シャーロック・ホームズ」のシリーズは、原作に結構忠実で、キャラクター的にもしっかり合っていて、とてもよくできているもの。それはそれとして、宮崎駿さんのあの「シャーロック・ホームズ」はキャラクターがみんな犬。僕はシャーロック・ホームズのイメージではなくて、あの方の描いたあの絵とキャラクターをどうとらえるかだけなんですよ。だから、シャーロック・ホームズをやるというのではなく、あのキャラクターはどういうふうにやったらいいのかなと思ったときに、何話か重ねていくうちに、結構気取ってて飄々としてて、結構まじめそうなんだけどもちょっと抜けてたりっていうのが頭の中に浮かんできたイメージだったんです。それでああいうせりふ回しを自分でつくったんですよ。

「吹き替え」の過去と今

広川
僕は、昔はこうで今はこうだというのをあまり感じようとしないし、好きじゃないんです。今は今。今はこういう場でこういう空間でものをしゃべっている、ものをつくってる。そういうことでしかないんです。そのときそのとき、時代時代で、僕は同じレベル、同じ熱量でやってきました。今、僕はほとんど吹き替えをしていませんが、たまに行くと知らない人ばかりだったりしますけれど、それは仕方のないことです。だから、その空間で、僕は僕なりにできることを精いっぱいやる。それをよろしく思わない人がいても、いなくても、あるいは逆にいい意味で影響を受けてくれる人がいれば幸いというくらいです。だから、あまりそういう細かいことに気を遣ったり思いをはせることはないです。それは、大ざっぱと言えば大ざっぱだけれども、僕の特質ではないでしょうか。うんと砕けて言えば、いいかげんっていう人なんでしょう、僕が(笑)。

今後、吹き替えをやりたい人にメッセージ

広川
ものを表現する表現者になろうとする人たちにとっては、とにかく自分なりに基礎をつくることを怠らないほうが得だということは言えます。だから、知識もそうだし、訓練もそうだし、ある種、マニュアルみたいなものもあるはずなんです。それらを自分ではっきりしっかり吸収しておいて、その上に自分なりの構築するものをつくっていく。その努力だけはしておいたほうが得じゃないですか、ということぐらいです。こうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとは言えない。あとはその人の特質を生かせる場所を見つけるということは、きっと大切なことなんでしょう。なかなかそういうタイミングは難しいけどね。いずれにしても、しつこくなるようだけれど、基礎固めだけはしっかりしておかないと。ちょっとした揺れに対しておうちが崩れちゃったりしたらもったいないから、基礎は一応つくっておきましょうよっていうくらいかな。

広川さんにとって声優とは

広川
ああ、難しいですね。例えば「声優とは何でしょうか」っていうのは、あんまり質問としてはよろしくないような気がします(笑)。咎めているのではありませんよ。しかし、要するに「表現者っていうのは一体何ですか」というほうが、僕にとっては答えやすいんです。
吹き替えだけのことを言えば、長くなりますが、自転車みたいなものです。いっぺん慣れちゃえば乗って行けるんです。だから、それを正確にきちんと乗っていくのか、少しパフォーマンスしてみるのか、あるいは曲芸してみるのか、曲乗りしてみるのか。そういうことというのは、その人の資質の問題です。「吹き替えって何ですか」という質問には答えていないかもしれませんが、僕はそんなふうにとらえています。

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