声優名鑑 -大塚芳忠

声優で見る作品を選ぶという、ドラマ。ファンは少なくない・・・。毎回一人の声優に焦点をあて、本人インタビューや出演作品の映像をもとに、「ドラマ吹替え制作当時」のとっておきのエピソードや彼らのバイオグラフィーを紹介するドラマ・ファン待望のコーナーを完全収録!

大塚芳忠

大塚芳忠

「新スタートレック」のデータ少佐や「ER 緊急救命室」のシェップ役、「新・アンタッチャブル」のエリオット・ネスなどスーパーチャンネルではおなじみの作品から、「Xファイル」のドゲット捜査官、「フルハウス」のパパや映画「ロード・オブ・ザ・リング」ではアラゴルンなどコミカルな役から渋い役まで幅広く演じられていらっしゃいます。

役者という仕事に出合った経緯

大塚
私が田舎から18歳のときに東京に出てきました。ほとんど何のあてもなく出てきたんです。特別、役者を志すとか何かをやりたいなという思いは、全然なかったんです。ただ、あてもなく、就職する気もなく東京に出てきまして、あてもなくアルバイト生活を始めたんです。自分が何になりたいんだろう、何をするんだろうとずっと思ってたんですけれども、あるアルバイト先にお客さんが見えて、「君はずっとこんな生活をしてるの?」みたいな質問をされました。そのお客さんと話しているうちに、その方はあるテレビ局の外画のプロデューサーだったことが後でわかったんです。
その方の話を聞いているうちに、ああ、もしかしたら僕のやりたいのはこういう仕事かもしれないなと、その店で、バイト先で思ったんです。それで、まあ無理だろうとは思ったんですけれども、「よかったら、僕、そういう仕事をやらせていただけませんか。頑張りますんで、ひとつ、紹介していただくアレがあればしていただきたいな」みたいなことを言ったんです。そうしたら、「あ、いいよっ」とその方はおっしゃるんです(笑)。
あんまり調子よく返事されるもんで、ああ、またこんな調子のいい人はなと思って信用してなかったんですけど、1週間後に仕事が入ってきました。突然。「どこどこのスタジオに行け」。それで半信半疑でそのスタジオに行きました。30数年前です。それがこの世界に入るきっかけなんですけれど。
まあ、なんていうか、あてもない東京生活から、突然降ってわいたような幸運に巡り合った。そういうことですね、最初のきっかけは。初めての仕事は声でした。

声の仕事の魅力

大塚
私が魅力を感じる点は、道具としては声と体だけですよね。それを駆使する職人という意味で、非常にやりがいのある、自分の体一つ、みたいな。言ってみれば、男の仕事っていう気がしなくもないんですね。それだけの声と体だけを使って、あらゆる役をやり分けていく。今日は優しい父親、明日は極悪非道な悪役。毎日毎日、そういう違う場面に巡り合えるっていうのは、本当に楽しいことだと思いますね。

自分の声の特徴

大塚
私の声を自分で客観的に聞くことはなかなか難しいんですが。ほとんどの声は、自分ではあまり好きじゃないんですけれど。......まあ、そうですね。男ですから、こういう年になると低音のソフトな声が自分では出したいな。そしてまたそこに魅力のある役者になりたいなと思うんですけれども。その逆に、僕の好きな声は、高音のシャウトしたような(笑)、叫び系の声も、これは結構、自分では好きなんです。僕の仕事の半分は叫んでいると思いますね(笑)。

キャラクターを演じ分ける上でのポイント

大塚
まず、私がリハーサルをしますよね。できるだけそのキャラクターを一生懸命見るようにしています。とにかくその人をジッと見ていれば、顔のちょっとした表情に、その人の裏側というか、人生というか、今まで生きてきた過去みたいなものが見える瞬間があるんです。それが見えたら、もう、そこをとにかく強調するというか、そこを中心にせりふをしゃべるというか。そういう思いでいれば、何となく彼のキャラクターにのっていくという気はするんですね。

アニメ・洋画・ナレーションの違い

大塚
昔は、その違いはないと思っていました。一つの声を使ってやることだから、しょせん何でも同じだろうと思ってたんですけどね。最近、やっとわかってきました。これは、具体的にどう違うということは、なかなか言えないんですけれども。やはり、何でしょうね......。そのスタジオに行って、その雰囲気、それから、さまざまなキャラクター。それから、ナレーションなら、その原稿。その瞬間の、何か空気のようなもの......。そうすると、自然に何か違った種類のものが出てくるんですね。それは自分では具体的に、自分でどうしているかよくわからないんですけれど。......そうですね。こんなお答えで申しわけないです(笑)。

声を維持するために気をつけていること

大塚
特別ないんです。お酒もたくさん飲みますし、飲んでカラオケも歌いますし、夜更かしもしますし、辛いものも食べるんですけれど。ただ、真夏でも口と首にタオルを巻いて寝る。これはもう、習慣になっちゃって、どんなに暑くてもそれがないと寝られない。結構、声にはいいのかなと。もう、何十年もそれをやっています。

魅力ある悪役とは

大塚
やっぱり、セクシーっていうことでしょうね。魅力ある悪役は、ほとんどセクシーですよね。最近、僕は、ドラキュラを何種類かやらせていただきました。まあ、ドラキュラは悪役ではないでしょうけれども。やはり、すごくセクシーなんですよね。やっぱり、セクシーっていうのが一番のポイントじゃないでしょうか。

海外ドラマの魅力について

大塚
私が海外ドラマの魅力を感じるのは、やっぱり、向こうの文化とか生活とか習慣とか、直に触れられる。日本では想像できないような発想を向こうの役者がする。せりふをしゃべる。それを直に見られるっていうことですね。だから、いろいろ日本人じゃ考えられないような展開。そこがおもしろいですね。また、向こうのきれいな女優さんがいっぱい見られる。ええ、その辺です。

好きな女優

大塚
みんな好きなんでね(笑)。すみません。

「新・アンタッチャブル」について

大塚
禁酒法時代の暗いアメリカの時代ですよね。ノンフィクションという意味で、アメリカの成り立ちというか、本当のアメリカを見る上で、本当にいい作品だと思うんですよね。そして、暗い時代ですけれども、人間が生きるという、悪と正義の闘いの、その情熱の駆け引き、やりとり。手に汗握るような、裏をかく、またその裏をかくというような、その時代の息づかい。暗いフィルムの中で、人間の情熱というか、執念というか。そういうものがもろに見られるいいドラマだと思いますね。

エリオット・ネスについて

大塚
静かに燃える人というか。悪に対する熱い情熱は、心に、だれよりも負けないくらい持っているんですけれども、それを冷静に、表にあまり出さない。カポネと冷静沈着に闘っていく。正義感の固まり。家庭に帰れば、実に優しい父親。......13年前なので、あんまり覚えていなくて、すみません。
(エリオット・ネスの魅力は)静かに燃えるところと、熱く家族を愛するところ。やはり、正義感の固まり。そういうところですね。ともすれば、僕は悪人のほうに声が転んでしまうので(笑)。そこは何とか、いつも正義の味方だぞというふうに言い聞かせながら、やらせていただきました。

「新・アンタッチャブル」の見どころ

大塚
正義と悪との駆け引きですね。人間がお互い生きていくために、どれほどの情熱を持って闘っていくか。悪は悪なりの正義、正義漢は本物の正義。マシンガンをぶっ放すだけじゃなくて、人間のやりとり、駆け引き。暗い時代の中でどれほどのことを人間はやってきたか。生きるために。そういうところが非常によく出ていると思うので、そこを見ていただきたいと思います。

「新スタートレック」について

大塚
私はSFというのはあまり、昔から好きじゃなかったんです。ほとんどの作品は見ていないような状態。「スタートレック」がどういうものかっていうのも、昔、映画をちょっと見たくらいで全然知りませんでした。だから、別にレギュラーをいただいたときも、何の感慨もなかったんですね(笑)。自分の役はアンドロイドだし。なんだ、つまんないな、とか思って1、2本はやったんです。ところが、ストーリーが毎回毎回、実に深くておもしろくて、どんどん引き込まれていきました。次の台本を早く見たいなっていうくらい。
最初はアンドロイドだってばかにしていたデータですけれども、これがまた実に深い味わい深いキャラクターで。もう、何というか、僕の仕事をしていく上でデータをやったことが本当に基本になっているというか。さまざまな勉強を、データによってやらせてもらった。今はそう思っています。
データはアンドロイドですよね。それで、人間の言葉をしゃべります。自分も感情を持ちたい、人間になりたいって常に思っています。だけど人間じゃないんですよね。どうしてもなれない。その葛藤がいつもあるわけで。その葛藤がチャーミングなんですよね(笑)。かわいいんですよね、この四苦八苦しているところが。だれよりも、人間たちよりも優秀な能力を持っているのに、アナログな人間になりたがっている。その七転八倒する苦しみが、本当にかわいくてチャーミングで。抱き締めたいくらい、データを本当に好きですね。

データを演じてみて

大塚
向こうのブレント・スパイナーさん。非常にアンドロイドを演じていらっしゃるんですけれど、その表情が豊かなんです。アンドロイドが表情が豊かっていうのは変なんですけど、ちょっとした口の端とか目の端の動き、鼻のちょっとした動きによく感情が出るんです。そこをよく見て、ちょっとせりふを操作すると、いいアンドロイドになるんですね。それがもう楽しくてね。すごくすてきな、うまい役者さんだな、と。僕はちょっと表情を見ているだけで、自然にその中に入っていけました。
(思い出に残っているシーンは)娘のアンドロイドをつくるんだったっけな......。忘れました(笑)。兄弟も出ましたね、悪い兄弟が。ローアは別の人がやったんじゃなかったっけな。コアなファンがいますから、あんまりうかつなことは言えないですね(笑)。

麦人さんとの共演について

大塚
麦人さんとは、「新スタートレック」をやる以前から、個人的なお友だちです。もちろん、大先輩ですけれども。長い時間を一緒に過ごした、酒を飲んだり、遊んだりした仲でした。ですから、気心はよくわかっていたんです。ただ、役者さんとしての歴史としては、僕の何倍もある方だし、さまざまな舞台や仕事を経験なさっている方ですよね。だから、すごくせりふ一つ一つの意味が深くて。僕が軽く渡したせりふでも、深い意味をもって返してくださるので、安心して楽に、気楽に全部お任せしてやったらすべてまとめてくださるな、という感じで、頼りがいがありました。

麦人さんのカポネ、ピカードについて

大塚
ええ、もう、見事な悪役ですよね。ただ、カポネはカポネで、どこかかわいいところもあるんですよ。すごくチャーミングなところがあるんですね。ただの極悪非道っていうわけじゃなくて、人間の弱さも随分見せてくれるキャラクターですから。麦さん自身がまた、そういうところをよくとらえていて、ただの悪ではない。ちょっとチャーミングなかわいいところもあるというところを、カポネとして。
それから、ピカードは立派な人格者の艦長ですね。それはちょっと違和感がありましたけれども(笑)。......すみません(笑)。

印象深い、スタジオの怖さ

大塚
仕事を始めたころのスタジオの怖さが一番印象に残っていますね。何しろ、先輩方がすごく怖かった。もう、それで、マイクの前に僕が立つと、後ろにズラッと先輩方が並んでいらっしゃるんです。背中を見られているわけです。人間、背中を見られるって本当に気持ちの悪いものです。しかもその怖い先輩たちばかりで。もう、冷や汗かいて手に汗握る。もう、せりふが言えないんです。怖くて。フィルムはそのまま通過してるのに、ひと言もしゃべらないで(笑)、そのまま終わったなんていうことも随分ありました。
さらに、演出家が怖いんですね。今は皆さん、優しくなりましたけれど、昔の演出家は怖かったですね。本当に僕は、仕事が入ると胃が痛くなって、登校拒否みたいに何度もなりました。本当に怖かったです。まあ、そのことは一生忘れないでしょうね。その怖さは。
怖いんですけれど、それはしょうがないですから、懐こうと思ったんですね。怖い先輩に。先輩たちはみんな、お酒が好きですから。「先輩、今日、金ないんですけれど、ちょっと1杯、一緒に飲みに行ってもいいですか」って言ったら、みんな優しく(笑)。仕事以外では優しかったです。
そんなことで、先輩方とふだん、何げなく口をきけるようになったらもうしめたもの。スタジオで無駄口をきけるようになったら、もう、緊張することもなくなりました。そういうふうに入っていったのはよかったなと思っています。

吹き替え現場の変化

大塚
やっぱり、全体が優しくなりました。いい雰囲気になりました。あんまり怖い人たちはいいもんじゃないと思いますね。やっぱり、優しく心を開いて、みんながワイワイやった中でいいものができてくると思うんですね。まあ、締めなきゃいけないところは締めなきゃいけないんでしょうけれども。和気あいあいといいムードで和やかに。いいことだと思います。

演技をするうえで重要視すること

大塚
難しい質問ですね。ちょっと待ってください......。こういう仕事ですから、言葉をはっきり伝えるということですね。人間にしゃべる、っていうことです。一つはそれです。もう一つは、やっぱり、いつも頭の中に実在する人間の像を描くということですかね。世界にいない人間のせりふをしゃべってもしょうがない。いつも僕らの周りにいる、ふだんの会話をしているその人たちの言葉をしゃべる。
昔、よく言われましたね。アテレコ調だとか、ドラマの言葉だと。その中だけの言葉、せりふじゃつまらないと思う。自然というとまた別のものになるんでしょうけれど。やっぱり人間の会話、人間の言葉。それをしゃべる。とにかくそのことを念頭に置いています。

大塚さんにとって声優とは

大塚
難しいですね。でも、誤解を恐れずに言えば、僕にとって最高の趣味です。

趣味:スポーツについて

大塚
昔、自転車に乗ってました。自転車でスタジオに通っていました。元気だったんですね(笑)。学生時代は野球をちょっとやっていましたから、体を動かすことは嫌いじゃないんですけれど。自転車は一番長くやりました。なぜか、そういうこと(ふだん、自転車で都内を移動する)を考えたんですね。それは楽しかったですよ。危険なこともありましたけれど。甲州街道で転んじゃったときは大変でした。車道で、危なく命を落とすということが何度かありました。

声の世界を目指す人へのメッセージ

大塚
僕も苦労しました。だから、皆さんもきっと苦労なさると思います。でも、まあ、頑張っていればいいことありますから。ええ。苦労と思わないで。好きなことやってるんだから、とにかく辛抱して頑張ってください。ということですね。

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