声優名鑑 -納谷悟朗

声優で見る作品を選ぶという、ドラマ。ファンは少なくない・・・。毎回一人の声優に焦点をあて、本人インタビューや出演作品の映像をもとに、「ドラマ吹替え制作当時」のとっておきのエピソードや彼らのバイオグラフィーを紹介するドラマ・ファン待望のコーナーを完全収録!

納谷悟朗

納谷悟朗

「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長、「ルパン三世」の銭形警部など、おなじみのあの声の方が「スパイ大作戦」ではマーティン・ランドー演じるローランド・ハンド役を演じていらっしゃいます。当時の「生放送アフレコ」など興味深いエピソードをお話して下さいます。

役者になったきかっけ

納谷
僕は京都の立命館大学に通っていました。そのとき、演劇部があったんです。劇研です。周りはみんな京都弁なのに、演じるのはみんな標準語の本でしょう。だから、はじめは方言指導みたいなことをやってくれないかというで、京都弁を直してたんです。そのうちに、「おまえ、やったほうがいいんじゃないか」みたいなことになって。それがきっかけです。それまでは芝居なんてひとつも考えたことはなかったですね。
大学時代から今まで舞台から離れたことはないんです。いまだにやっています。吹き替えもやりましたけど、本命は舞台です。舞台を外したことはないんです。

演じることの魅力とは

納谷
演じることの魅力っていうのは......。難しいですな。みんな、どんな役者だって「いろんな役ができるから」っていうことでしょう。舞台の場合は、とにかくお客さんと直に喋れる。これが一番魅力ですよね。

声の仕事に携わった経緯は

納谷
当時(1950年代後半~)は(30分ものを中心に)外国からいろいろな番組が日本に入ってきて、その吹き替えの役者をだれにしようかというのがあったんじゃないですか。それで、言ってみれば新劇の中堅どころっていうのかな。あんまり売れてねえやつを(笑)、使おうじゃねえかっていうことで。だから、いろんな新劇団からもいっぱい若手が来ましたよ。

生吹き替えの現場の様子

納谷
まあ、やってる当時は大変でしたね。だって、とちったりなんかしたら絶対取り返しがつかないんですから。でもよく考えてみると、とちっても何しても、証拠も何も残らないんですよ。ですから、女が喋ってるのに男が喋ったりして、テレコになってる部分も山ほどありました。でも、ミキサーのほうも一生懸命声をとってるわけだし、ディレクターはディレクターで台本ばっかりチェックしてるし。役者のほうなんか見やしないですよ。役者は役者で勝手に喋って。
当時は、終わるとすぐ伝票くれて、その伝票を持っていくとそれがお金になりましてね(笑)。よかったですよ。行ってお金もらって、みんなで飲みに行ったり。生っていうのは、とちったら困るけれども、やってるときは真剣だし、30分なら30分、時間が経ったら終わるわけですから、気が楽といえば気が楽でしたね。

アテレコ発祥の地・番町スタジオ

納谷
名前は忘れちゃったけど、あの辺の大変な人のお屋敷の一部を改造したんじゃないですかね。ですからはっきりした録音スタジオになってないから、蓄音機が故障すればだめだし、犬が鳴いちゃ中止だし。それは随分ありましたよ。防音も一応はあったんでしょうけどね。でも、しょっちゅうとまりましたね。夏は氷の柱を立てて、みんなパンツ一丁でやるくらい。空調なんてもんはないですよ。

今のアテレコ形式について

納谷
今は天国でしょう。アハハ(笑)。僕らは、生のときは絶対にとちらない、絶対とちったらいかんっていう信念のもとにやってたみたいなところがあるでしょう。今の人は平気でしょう。いい悪いは別にしてね。でも、(今の環境では)いいものができるんじゃないですか。

アテレコをすることについて気をつけていること

納谷
とにかく声で勝負ですからね。芝居は向こうがやってるんですから。それは向こうの芝居に合う声を出す。向こうのアクションに合った言葉でぶつけるっていうか。それしかないですよね。

ジョン・ウェインの声

納谷
ジョン・ウェインの場合は、小林昭二君が亡くなって僕に変わりました。でも、ジョン・ウェインって、あんなにいい声で低い声じゃないんですよ。もうちょっと鼻にかかって少し甘い感じの声。それでやったら「だめだ!」って言うんです。「ジョン・ウェインっていうのは強いイメージがあるから、もっと強く!」って。それで随分ケンカしてやった覚えがありますよ。

クラーク・ゲーブルの声

納谷
クラーク・ゲーブルは、もう、とにかくすごい役者ですよね。あの人が出てくると画面がパッと締まるっていうか。パッといなくなるとつまんなくなっちゃうような。これはもう、やってて楽しかったですよね。

チャールトン・ヘストンの声

納谷
チャールトン・ヘストンは、僕に言わせるとうまくないんですよ。何やっても大して変わんないでしょう。ひとつのパターンしかできないみたいな。だから、吹き替えは楽だったですよ。きっとこうやるだろうっていうと、そういう芝居をやる。あの人は格調が高いっていう芝居が多かったから、それも合うんでしょうけど。大体ここでこういう声でこうやっていけば、っていうところがありましたよ。

最近の映画を見て

納谷
だめですねえ(笑)。当時僕らがやってたあの連中、あのスターさんたちがみんな亡くなって、アテレコの第1期も全部終わったと僕は思っているんです。今はもう、全然違う段階の吹き替えじゃないですか。当時の僕らがやってたスターさんたちは、それぞれ個性がある芝居をしてたでしょう。ですから、やるほうも楽は楽っていうか。そういうところがありましたよね。今はとにかく、日本でもそうでしょうけど、リアルに、普通の芝居をやればそれが一番いいみたいな。どこか違うでしょう、もう。だからああいうハリウッドの往年の大作時代が終わって、僕らも終わって(笑)。というふうに僕は考えてますけどね、はい。

「モンティ・パイソン」について 

納谷
背の高い、ジョン・クリーズ。あれもだれかがやったやつを、2本目か3本目から僕がやったんです。セリフのほとんどがアドリブだから、台本だって言ったって、しょうがなかったですね。だから、(アテレコも)役者が好き勝手につくってしゃべって合わせて、みたいな。また、アドリブのうまいやつばっかりがいて。山田康雄とか、広川太一郎とか、青野武とか、飯塚昭(三)ちゃんとか。僕なんかまじめだったほうですよ(笑)。

「ルパン三世」銭形警部

納谷
はじめ僕は五右衛門だったんです。そのとき銭形はだれがやったのか覚えてないけど、それで1本とったことがありますよ。だけど、虫プロのだれかが「納谷ちゃん、つまんないよ、これ。きっと」なんて言って。モンキー(・パンチ=原作者)もいて。僕は刑事の声もやってたものですから、銭形のほうがおもしろいんじゃないかっていうことで、途中でああいうキャラクターをつくったんですよね。あんな三枚目になるとは思わなかったですけどね。はじめはもうちょっとカッコよくやってたんですが、まわりがみんなカッコイイでしょう。それについてっちゃだめだ、少し三の線でずっこけようよっていうことで、ああいうキャラクターになったんでしょうね。

「宇宙戦艦ヤマト」沖田艦長

納谷
松本零時さんは、僕のオヤジのイメージがあったって言ってましたよ。それで沖田っていう役がきて。あれはとにかくワンクールで終わっちゃうんですよ。みんな、打ち上げやったりなんかして。まさか、また続くとは思わなかったですよ。まして僕なんか1本目で死んじゃうわけですから。それでナレーションをやったりしてるうちに、生き返ったんですからね。あれはびっくりしましたよ。なんでおれが生き返るんだって(笑)。

「スパイ大作戦」ローラン・ハント 

納谷
はじめローラン・ハント役のマーチン・ランドーはゲストだったんです。それで出て、いつの間にかレギュラーになっちゃって。女房がいたせいじゃないでしょうかね。
登場人物のそれぞれが、変装したり、力持ちがいたりって、手づくりのおもしろさがあったんで、毎週楽しみでしたよ。

「スパイ大作戦」パリス

納谷
(ローラン・ハントの後、パリス役を演じて・・・)僕は言われたらやるだけです。少しは声を変えたつもりですけどね。でも、変装しちゃうと変装したやつの声を使うわけでしょう。本人の声じゃないから。だからあまり僕らは気にしませんでした。

「スパイ大作戦」の人気の秘密

納谷
さっきも言ったけど、手づくり(のおもしろさ)っていうかな。「エッ!?」ってやつを自分の力でやっていったでしょう。それが一番おもしろいんじゃないですか。今のスパイものみたいに、(何でも簡単に)ポンポンポンッてやったり、ピーッとやったり、機械で処理するっていうのかな。そういうものは一切ないでしょう。這って行くなら這って行くとか。そういうことじゃないですかね。

「アンタッチャブル」について

納谷
あれもおもしろかったですね。日下(武史)君が(エリオット・)ネスをやって。あの人の声は特徴があるんで、あいつだけマイクが別なんですよ。「ここからこうやってしゃべったらネスの声だ」って、1本別にあって。ほかの連中は、当時の売れっ子が全部集まってましたよ。若山弦蔵がいたり、大塚周夫.がいたり、小林清志がいたり......。とにかくズラーッといて。昔のテレ朝の屋上なんかで、みんな遊んでましたね(笑)。録音するのが屋上のすぐ側にあったのかな。
僕は捜査官一家のはずなんだけど、出てきてもあんまり喋んないんですよ。ですから、「納谷ちゃん、今日、運転手の1ね」とか。「運転手の2は、そうだ、弦ちゃんが空いてるね」なんて。そうすると若山弦蔵さんと2人で運転手1と2をやったりね。結構楽しかったですよ、そういう意味じゃ。黒沢良ちゃんが、いつものあの渋い喋りじゃなくて、アハハキャアキャアとでかい声で喋って。はじめ「なんだこの喋りは」と思ったら、それですっかり売れちゃいましたもんね。だからいろんな意味で、みんな、実験したり何かしたりしたんじゃないですかね。「アンタッチャブル」で僕は、「コロンボ」の役者さんの声を何回かやりましたよ。ピーター・フォークがゲストに出てきた回に。彼は必ずどこか欠陥のあるような役を演じていて、楽しかったですよ、やってて。

納谷さんにとって喜劇とは

納谷
一言では言えない感じがします。でも、僕は、「人間」だと思うんですよ。人間のドラマがあれば、そこに笑いもあれば泣きもあるし。それが喜劇だと、僕は思うんですよ。だから「人間」っていうふうに答えるのが一番の逃げ道でね(笑)。
人間が描かれてなかったら、僕は喜劇じゃないと思うんですよ。だから、引っぱたいて笑ったり、ひっくり返って笑ったり、これもひとつの喜劇パターンでしょうけれども、本来的な喜劇っていうのは、人間のあり方、人間の生き方みたいなものがきちんと出なかったら、喜劇はあり得ないと僕は思います。

納谷さんにとって声優とは

納谷
最初はとにかく食うためにやったんですから。商売だと思っていますよ、僕はやっぱり。

舞台と声優について

納谷
(舞台も声優も)同じでしょう。やっぱり基本っていうのは、喋って動くっていうことが演技ですから。例えばそれを声だけで表現するためにはどうすればいいか。そのためには、自分の中で「動く」っていうことを意識しないと、その声は出てこないんじゃないでしょうか。ただ難しいのは、動いてるのは向こうですから、向こうの芝居がこういうふうにやってるんだと把握しないとだめですよね。ですからそれが舞台と通じるところじゃないですかね。ある動きがあって、そのとき応ずるのはどういう声だろうっていうことでの声ですから。

声優を目指す者にひと言

納谷
基本でしょう。さっき言った、いわゆる舞台という演技の基本をきちんとしないとだめだっていうことですね。

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