THE KILLING/キリング: インタビュー

本国デンマークでは史上最高視聴率を獲得し、イギリスBBCでも大ヒットを記録!
ヨーロッパでの絶大な人気からアメリカ版リメイクも制作された傑作ミステリー!

インタビュー

ソーレン・マリン 来日独占インタビュー

「THE KILLING /キリング」イエン・マイヤ役の俳優ソーレン・マリンさんが、第25回東京国際映画祭に合わせて緊急来日!コンペティション部門に出品された出演映画『シージャック』について、そしてTVシリーズ「THE KILLING/キリング」についてのお話を伺いました。
※このインタビューには一部、シーズン1のネタバレ要素を含んでおりますのでご注意ください。

来日された感想は?

今回が初めての来日で、東京も初めてだよ。素晴らしい場所だ。小さな国から来た僕のような人間にとっては、とても大きな都市だね。昨日はスカイツリーに登ったんだけど、街が一望できてすごく感動した。30分くらい感激しながら眺めていたよ。だからここに来られてとても光栄だし、素晴らしい街だよ。

映画『シージャック』で演じた役どころについてお聞かせください。実際にモデルとなった人物がいるキャラクターを演じるのは大変ですか?

僕が映画『シージャック』の中で演じる役は、実在の人物そのものではないんだけど、輸送会社のクリッパー・グループのCEOに触発されている。彼からは、ビジネスの仕方や様々な事態への対処法を教えてもらったよ。実際に彼のオフィスに座らせてもらって、彼の仕事ぶりを観察させてもらった。そして極めて個人的な質問も含んだ多くの質問を、彼にする機会ももらったんだ。この映画の中で僕に起きたことが数年前、彼の身に実際に起きたんだよ。彼はハイジャックされた船と電話で交渉をしたんだ。その事態は彼を激憤させたけど、船員たちを生還させたいという前向きな意志で必死に交渉に挑んだ。だからペア・グルストラップ氏には本当にインスパイアされたよ。彼は今ロンドンに住んでいるんだけど、彼にまた会いたいと思っている。

(映画『シージャック』の)監督のトビアス・リンホルムさんとはデンマークのTVシリーズ 「コペンハーゲン/首相の決断」 で一緒に仕事をされていますが、この映画に出演された経緯を教えて下さい。

『ハイジャック』の監督で、TV「コペンハーゲン/首相の決断」の共同脚本家でもあったトビアス・リンホルムがある朝、「コペンハーゲン/首相の決断」の撮影現場に僕を訪ねて来たんだ。ちょっと来てと呼ばれて彼と話をした。彼は「今、素晴らしい話の脚本を執筆しているんだけど、僕の中では君が演じているんだ。どうかこのCEOの役を引き受けてもらえないか」と言ってきたんだ。その話をされた時、「僕がCEO?とんでもない!無理だ」と言ったんだけど、彼は、「僕は君は出来ると信じている」と言ってくれた。「でもひとつお願いがあって、決して面白く演じないで欲しい」と要求されたんだよ。デンマークで僕は、コメディアンとして知られているから、たいていの人は僕がスクリーンに登場した瞬間に笑うんだ。でも今回の作品では敢えてそれを避けるように釘を刺されたから、それを聞いた途端、僕はとても刺激されてすぐに出演を決めたんだ。そういう経緯だったよ。

映画運動ドグマ95など、「デンマーク映画」は世界に大きな影響を与えています。デンマークの作品ならではの特徴・魅力は何だと思いますか?

それはドグマ運動の先駆者の功績に負うところが大きいと思う。撮影の技法に大変革をもたらしたからね。デンマークのテレビは、俳優もスタッフ同様に制作を委ねられていて、僕ら俳優も脚本家や監督と一緒に考えるんだ。それに撮影では自由に即興させてもらえるし、クリエイティブな演技をさせてもらえる。もうひとつ重要なことは、デンマーク特有の物語の語り口だと思う。デンマークの脚本家の書く物語は正直で飾らない。だからアメリカ映画と比べると、デンマーク製作のテレビや映画は“素”をさらけ出して、生身の人間であることを表現するのを全く恐れていないことが分かる。だから明確なストーリーラインが生まれるんだろうね。それはとても重要なことだ。

TVシリーズ「THE KILLING/キリング」についてお伺いします。ご自身が演じたイエン・マイヤというキャラクターは、全体的に重い雰囲気のドラマの中で見ている側がホっとさせられる愛すべきキャラクターでした。「THE KILLING/キリング」に出演されたきっかけについて教えて下さい。

まず、「THE KILLING/キリング」について質問してくれたことに感謝するよ。あの番組は8年前に始まった。8年前に撮影が始まったものだから、ちょっと記憶が定かじゃない部分もあるかもしれないことをご容赦頂きたいんだけど、正直に話したいと思うよ。
マイヤというキャラクターは、出演オファーをもらったあと、主人公のサラ・ルンド役のソフィー・グローベールと合わせてみたら、すごく良い化学反応があったんだよ。実際に彼女(ソフィー)とは私生活でも良い友達だし。キャスト合わせでの化学反応がとても良かったから、二日後にプロデューサーが僕に電話をくれて「君にはノーと言えない。お願いだからこの役を引き受けてくれ」と言った。なぜか分からないんだけど、ソフィー・グローベールと僕の化学反応がうまく運んだからなのか、撮影を重ねてゆく過程でこういう2人の関係性になったんだ。20話分の撮影には2年かかったんだよ。脚本家が執筆し始めの頃は、マイヤのキャラクターはここまで重要な役に考えていなかったようなんだけど、制作の過程でこのように発展したんだ。僕らのペアがあまりにも良かったから、脚本家も2人の関係をどんどん広げていったってわけさ。僕らも撮影時に多くの即興演技をしたしね。特に即興は僕が得意とする分野だから、脚本家がそこを気に入ったんだよ。僕らのチームは、全くの無から美しい花を咲かせたというわけさ。それからマイヤのキャラクターは、他の人からはばかられるようなことを平気で口にできる人だ。彼はとても感情的だから、感じたそのままを表現するんだよ。

「THE KILLING/キリング」がイギリスで放送された特はサラ・ルンドのセーターが注目の的でしたが、日本の視聴者の間では、マイヤの食べ物に関するセリフがウケていました。役作りで心がけたこと、脚本家や共演者と話し合ったことなど、教えて下さい。

それを聞いてもらえて嬉しいな。彼に何を食べさせるか、どのくらい食べさせるかというのは、撮影中に脚本家と議論した事だから。正直言うとそこは、アメリカの俳優ブラット・ピットに触発された部分が大きいんだ。彼のような容姿になりたいということでは当然なく、彼が映画に登場する時は、何かを食べ終わったばかりという場面が多いと思っていたんだ。バナナだったりホットドッグだったりバーガーだったり。それを見て、その行為がキャラクターに個性を与えていると感じたんだ。だってある意味ではとても自然なことだからね。実際に僕らだって日常的に食べるし飲むしタバコをふかしたりする。多くの脚本家は、それを取り入れることを嫌うんだ。継続して撮影することを困難にするからね。だから脚本家とこの部分では議論を重ねたよ。その上で彼は、それが成立できるということを僕に証明させるチャンスをくれた。最初の2エピソードを撮り終えた段階で、彼から「まさに君の言った通りだった、申し訳ない。どうか食べ続けてくれよ」と言ってもらえたんだ。そういう経緯があってバナナを食べたりコーヒーを飲んだり、常に飲食するということが始まったんだ。それもあってその間は少し体重が増えたね(笑)。

サラ・ルンド役のソフィー・グローベールさんとは何度も共演されていると思いますが、どんな方ですか? 役作りなど、お二人で相談されたことなどをお聞かせ下さい。

「THE KILLING/キリング」の主人公サラ・ルンドを演じるソフィー・グローベールは、今日では僕の親友の一人だ。彼女の性格について言えるのは、彼女はとても優しい人だということと、彼女はとても控えめでシャイな女性ということ。でも彼女が一旦心を開くと、彼女の人生の中に引き込んでくれる。現に今ではお互いに数メートル離れただけの場所に住んでいるし、休日は家族ぐるみで一緒に過ごすことも多い。とにかく多くの時間を一緒に過ごすよ。男女が愛し合っているという関係性ではなく、1人の人間としてお互いに愛し合っているんだ。彼女と仕事を一緒にするのはとても素晴らしい経験だ。彼女が演じるキャラクターを理解できた時というのは、頭で理解できた時なんだ。彼女は分析する人で、僕とは真反対のタイプだ。逆に僕は全く分析なんてしないタイプだ。とにかくそこに飛び出して身体で感じたことを表現し始める。彼女と仕事を始めた頃は、それは違和感があるからやめてと言われたこともあった。まずは理解すべきでしょ?ってね。でも僕は「何で?とにかくやろうぜ」って感じだったんだ。だから異質の僕らはとても良いコンビになったんだ。僕は彼女にとって挑戦だったし、彼女は僕にとって挑戦だったからね。とにかく彼女は素晴らしい女性だし、大好きな人だよ。彼女は今デンマークにいて、僕は今ここにいる(笑)。

ドラマの終盤でマイヤに悲劇が起こるとは本当にショックでした。クリエイターのソーレン・スヴァイシュトゥルップさんは、「主人公サラ・ルンドはシーズン1ですべてを失う、そのためにはマイヤの死は必要だった」というようなことをコメントされていましたが、はじめてそのシーンの台本を読まれた時はどう思われましたか?

脚本家のソーレン・スヴァイシュトゥラップから、第10話か11話で僕のキャラクターをぜひ殺したいと言われたんだ。サラに感情的な大きな試練を与えたいとね。2人はとても良いパートナーだったから。でも僕らがあまりにも良かったので、脚本家もあと1話、あと1話とそれを先に延ばしていたんだ。そしてついに彼から、「もうシリーズの終盤だから、君を殺さなきゃならない。本当に申し訳ない。どうしてもドラマの最後にサラ・ルンドにとても大きな試練を与えなきゃならないんだ」って言われた。彼はとても正直に言ってくれたし、僕をシリーズに残してくれた彼には感謝の気持ちしかないよ。なぜ僕のキャラクターを殺さねばならなかったのかも理解できる。だって主人公の親友が死ぬっていうのは、極めて典型的な設定だろう?(脚本家の)ソーレンは僕に本当に申し訳なく思っていたみたいで、撮影の後も僕に「本当にごめん。でも必要なことだった」ってメールをくれた。ちゃんとギャラももらったし、問題なしだよ(笑)。

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© Tine Harden