「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」でシーズン1から15の間、NY市警ジョン・マンチ刑事役を演じたリチャード・ベルザー。2023年に鬼籍に入ったリチャードの当たり役"ジョン・マンチ"刑事を海外ドラマファンなら、あちこちのドラマシリーズで見たことがあるだろう。
"ジョン・マンチ"の誕生は「ホミサイド/殺人捜査課」。ボルチモア市警殺人捜査課が舞台のこのTVドラマシリーズで偏屈なジョン・マンチ刑事役がなぜかリチャードにはまり、この後、マンチ刑事は「X-ファイル」「THE WIRE/ザ・ワイヤー」「LAW & ORDER」やシットコムにも出演を果たす。
そして、仕上げが「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」へのレギュラー出演だ。「LAW & ORDER」でのゲスト出演がいたくお気に召したのだろう、クリエーターのディック・ウルフがジョン・マンチ刑事役での出演をオファーしたのだとか。
並みの俳優ならば、大喜びすることだろう。相手は大物プロデューサー、しかも「LAW & ORDER」シリーズともなればロングランも期待できるのだ。
個性派俳優はそこで一つの条件を出した。
相棒刑事にディーン・ウィンタースを配役すること。
ディーンは「OZ/オズ」や「レスキュー・ミー NYの英雄たち」に出演する俳優。米国では、保険会社のCMキャラクターでお茶の間の顔でもある。
かつてインタビューでディーンは、リチャードとの縁について話している。
「リチャード・ベルザーとは長い縁です。彼とは1994年に『ホミサイド/殺人捜査課』で出会いました」
実はこれがディーンのメジャーデビュー。嫉妬のあまりガールフレンドを殺害する犯人役だった。その後も何度か同シリーズに登場していることから、視聴者・製作側共にインパクトを与えたのだろう。それはリチャードにとっても同じだったようだ。
「リチャード・ベルザーがディック・ウルフに言ったらしいのです、僕(ディーン)を相棒に選んでくれたら『LAW & ORDER: 性犯罪特捜班』で"ジョン・マンチ"をやると」
ウルフはどうしても、"ジョン・マンチ"が欲しかった。だからディーンを"ジョン・マンチ"の相棒ブライアン・キャシディ刑事に配役した。
「おかげで僕も配役されたのは、ご存じの通りです。リチャードは強気ですよね、あの超強気なディック・ウルフとやり合うんですから」とディーン。
ディーンは、1999年に「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」が放送開始した際、すでに「OZ/オズ」でメインキャラクターの一人を演じており、本来ならば他のTVドラマシリーズに出演など考えられないはず。それを可能にしたのがウルフの剛腕、そしてリチャードの無茶ぶりなのだ。
さすがにディーンは「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」シーズン1第13話でレギュラーとしての出演は終了。それでもシーズン13以降、ブライアン・キャシディ刑事として、ちょくちょくゲスト出演している。
ディーンを指名したのは、才能ある若手をもっと高みに引き上げたかったのか、気の合う仲間と再会したかったのか、リチャードのいない今はもう分からない。しかし、そんなエピソードさえも"ジョン・マンチ"の歴史として、TV史の一つに刻み込まれている。
<「tvline.com」 2025年10月14日>