ニュース

海外ドラマおすすめコラム vol.74 2部作=第8・9話が最高に楽しめる! 「ベター・コール・ソウル シーズン5」

BCS_s5_yoko.jpg

11月のスーパー!ドラマTVは「プロディガル・サン 殺人鬼の系譜 シーズン2」も目玉だが、「ベター・コール・ソウル」のシーズン5にも注目したい。ヒット作「ブレイキング・バッド」の前日譚で、高校教師ウォルターに味方した弁護士ソウル・グッドマン(ボブ・オデンカーク)を主人公に格上げ。過去にさかのぼり、後にグッドマンを名乗るジミー・マッギルの運命を描くのはご存知の通り。

 

シーズン4、前シーズンの最後に起きた異常事態を受け、弁護士資格を停止されたジミーは携帯電話業界に転じた。さすがはジミー、そこで成功を収めたが、1990年代に始まった携帯電話の普及期を憶えている人なら“懐かしい!”と思ったはず。一方、準主人公と呼べる元警官マイク(ジョナサン・バンクス)が、悪の大物ガス(ジャンカルロ・エスポジート)が地下トンネルを掘る壮大な計画に協力することになって驚いた人も多いだろう。もしもこのドラマを前半と後半に分けるなら、後半が始まったのがシーズン4だ。そしてやはりご存知の人も多いだろうが、本作はシーズン6で完結する。エピローグに向けて物語が大きくうねるので見逃せないのがシーズン5だ。

 

出色なのが第8・9話。ジミーは前話でキム(レイ・シーホーン)とハッピーなムードになるがこの第8・9話、がらりと変わって地獄の底に突き落とされる。第8話は番組生みの親のひとり、ヴィンス・ギリガン自身が監督した。この2エピソードのためにこのシーズン5はあると言いたくなるほど、サスペンスとしてもアクションとしても一級品だ。また、ジミーを心配し続けるキムもより人間的魅力を増す。ゲスト俳優陣も「ブレイキング・バッド」からディーン・ノリス(同じハンク役)らが登場し、「プロディガル・サン 殺人鬼の系譜」で検視官イドリサ役を演じる日系人ケイコ・アゲナが小さな役で顔を見せる。何より最終章=シーズン6への助走としてたっぷりと堪能したい。

 

【アメリカTVライター 池田敏 2022/10/31】
 
池田敏:海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。