「プロディガル・サン 殺人鬼の系譜」で、JT・ターメル刑事役を演じている米俳優フランク・ハーツが、米エンタメサイトのインタビューに答え、TVや映画と舞台の違いについて語っている。
イリノイ州の小さな町で生まれ育ったフランクは、NYの名門ジュリアード音楽院で演劇を学んだ本格派だ。
「ジュリアードで学んだ大切な教えの一つは、カメラが回り始めたからと言って、質問を止めるべきではないということです」
TVや映画の現場では、撮影の直前に監督と俳優の間で、そのシーンについて打合せが行われる。監督の指示が大部分だが、俳優は思うことがあれば質問をする。たとえ撮影が始まっていても、疑問があれば、中断して納得するまで話し合うべきだというのである。
「『プロディガル・サン 殺人鬼の系譜』に参加して良かったと思えたのは、監督のリー・トランド・クリーガーの根っこに映画人の矜持があることでした。彼は、僕たち俳優に役を思う存分、探求させてくれたのです」
フランクいわく、「最高の俳優は最高の探偵である。疑問がなくなるまで質問することを止めない」
とはいえ、TVの撮影現場では、"最高の探偵"になることは難しい。時間に追われるからだ。映画監督気質のクリーガーはそれを厭わなかった。「仕事に行くのが楽しかったです。そんなことは滅多にないんですよ」とフランク。
とはいえ、フランクは映画出身でも、ましてやTV出身でもない。ジュリアード以来、舞台で育ち、舞台を愛す、舞台人。
「『プロディガル・サン 殺人鬼の系譜』の仕事がなければ、ブロードウェイかオフブロードウェイで舞台に出ているでしょう。舞台人としてのプライドを持ち続けていたいんです。早く戻りたい気分ですね」
実力派だけにTVや映画の仕事は引きも切らない。長期の撮影休みがフランクの舞台の時間だ。しかし、いくら慣れた舞台とはいえ、TVや映画から舞台への移行は準備が必要だという。
「一番大切なのは、自分を鍛えておくことです。舞台は週に8公演あります。幕が上がれば、メインキャストに休みはないのです。シェイクスピアでも他のどんな舞台でも、役者は楽器の一つのようなものです。常にいい音を奏でるように準備しておかねばなりません。台詞の途中で咳き込んだり、声が裏返ったりしてはいけないのです。舞台は体力勝負、それは本当に大変なことなんです」
舞台に立つのは楽じゃない。けれど観客が目の前にいて、反応を即座に感じられることが舞台の楽しみだとフランク。どんなにTVや映画の仕事が舞い込んでも、これだから舞台はやめられない。
<「theknockturnal.com」 2019年9月23日>