実在のシリアル・キラーを描いたサスペンススリラー「ザ・サーペント」で、連続殺人犯のシャルル・ソブラジ(タハール・ラヒム)の恋人マリー・アンドレ・ルクレールを演じた英女優ジェナ・コールマン。
「ドクター・フー」や「女王ヴィクトリア 愛に生きる」などで知られる売れっ子にとっても、マリー役は難しい役だったようだ。米エンタメサイトのインタビューに答えている。
「複雑ですよね。長い間、マリーになりきって演じていたので、いろいろ考えてしまいます。なぜ、彼女はソブラジとあのような関係になってしまったのか、私も彼女の精神状態を学び、頭の中を理解しようと試みたものです」
犯罪意識があろうとなかろうと、結果的にマリーはソブラジの犯罪の片棒をかついだ。ジェマにとって、マリーの道徳観そのものはもちろん受け入れられない。しかし、演じるに当たりそれは問題ではなかったという。
「役になりきるのに、自分自身の正義感は必要ないのです。それよりなぜ彼女が犯罪に手を染めたのか、どのような行動を取っていたのか、それが知りたかった」
本来の自分とかけ離れた役を演じるのは、俳優として珍しいわけではない。この「ザ・サーペント」で演じたマリーは実在の人物だったからこそ、ジェナは想像力を膨らませるというより、事実から彼女自身の言動を学び、彼女になりきったということだろう。
では、マリー・アンドレ・ルクレールが語られる上で、最大の疑問、彼女は犠牲者か、共犯者か。
「両方の側面がある」と、ジェナは考えている。
「(ソブラジの共犯者)アジェイの言葉で、『彼女(マリー)は強い女性。風に吹かれる柳ではない』というのがあります。マリーはソブラジに洗脳された可哀そうな女性じゃないんです。彼女はソブラジを自らの意思で好きになり、追いかけた」
ソブラジに対する愛情は本物だったから、去ることは出来なかった。一方で、自分が犯罪に手を染めているのも分かっていたはず。その上で、マリーの心の中には葛藤があったのだ。
キャリアを重ね、数々の共演者に恵まれたジェナ。もう一度、共演したい共演者の一人にソブラジを演じたタハール・ラヒムを挙げている。
「共演者には本当に助けられました。タハールとはまたすぐにでも再共演したいです」
初の主演シリーズ「女王ヴィクトリア 愛に生きる」で共演した名優ルーファス・シーウェルも思い出に残る一人だとか。そして、ジェナと言えば、何よりSFシリーズ「ドクター・フー」のクララ・オズワルド役。
「『ドクター・フー』で共演したマット・スミスとミシェル・ゴメスには多くのことを教わりました。初めてのメインキャラクターで、セットにいる時間も長かったですから。アドリブや間が大切だと知りましたし、映像編集の自由を教わったのも、『ドクター・フー』でした」
自らを勉強熱心だと語るジェマ。演技については、英のトップ女優の一人となった今もどん欲に追求する。これからも優れた俳優と共演し、多種多様なキャラクターに挑戦し続けるつもりだ。
<「brieftake.com」 2021年4月1日>