夢の世界を生きているようなスターも、私たちと同じように家族の介護を経験することは決して珍しくない。米の超人気シリーズ「CSI: 科学捜査班」「
CSI: ベガス」のマージ・ヘルゲンバーガーが、自身の介護経験を明かしている。
米ネブラスカ州の田舎町で生まれ育ったマージ。連邦職員だった父ヒューさんが難病の多発性硬化症(MS)と診断されたのは、マージが大学を卒業した頃。女優の卵であるマージは、ソープオペラ「Ryan's Hope(原題)」撮影のため、居をNYに移したばかりだった。
「診断された時、父はまだ46歳くらいだったと思います。医師から『これは寛解しないだろう』と告げられました」(マージ)
敬虔なカトリック教徒のヘルゲンバーガー家。田舎町のつながりは濃く、すぐに地元のコミュニティがヒューさんの車いすアシスト付きのワンボックスカー購入に向け、ファンドレージングを始めてくれた。マージのソープオペラ出演料の半分は、そのワンボックスカー購入に費やされた。
NYからネブラスカまでの遠距離を時間の許す限り介護に通ったマージ。父のためカテーテルの挿入もいとわなかった。「私はあまり意識はしませんでしたが、父は恥ずかしく思っていたようです」と、当時の気持ちを思いやる。
家族の介護も虚しくヒューさんの病状は進行し、コミュニティの手助けだけでは手が回らなくなっていた。医療費も同じこと、請求書の束はかさむ一方だった。
周囲はマージの両親に離婚を勧めた。介護のためにマージの母が離職すれば、一家の収入はほとんど途絶えてしまう。カトリックの両親には苦渋の選択だったが、夫婦共倒れになるのは避けなければならなかったのだ。
ヒューさんは病気の発覚から3年後に亡くなった。愛する父のため、介護に仕事に明け暮れた20代前半の頃。精一杯の自負があるから、マージには無念も後悔もない。
それでも、かつての自分を思い出すと、苦しかった日々がよみがえる。今も家族の介護のため精神的、経済的に苦しむ人々がたくさんいる。彼らの存在を知ってほしい、マージはそう願っている。
<「aarp.org」 2024年6月27日>