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海外ドラマ最新レポート Vol.586  「S.W.A.T.」のシェマー・ムーア、番組終了を撤回させた魂のSNS動画を語る

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米CBS「S.W.A.T.」シーズン7が2月からスタートした。実はこのシーズン7、昨年4月の段階では製作の予定はなかった。「S.W.A.T.」はシーズン6での終了が決定していたのだ。
 
しかし、終了の一報を聞いた「S.W.A.T.」主演のシェマー・ムーアが、SNSで思いのたけをぶちまける動画を投稿すると、事態は一変。シェマーの魂の激白に揺さぶられたファンたちの熱い思いがムーブメントとなり、製作するCBSとソニーは前言を撤回、もう1シーズン製作することが決まったという。一旦終了の決まったシリーズが他のTVネットワークや配信サービスで引き継がれることは珍しくないが、同じTVネットワークが終了を撤回するのは稀だろう。シェマーの情熱がビッグビジネスを動かしたのだ。
 
ファイナルとなるシーズン7を迎え、一年前の騒動について、シェマーが米エンタメサイトの取材に答えている。シェマーは「S.W.A.T.」終了のニュースを聞かされるまで、まさか番組が終了するとは夢にも思っていなかったとか。
「ポジティブな話しか聞いてなかったからね。視聴者数も多く、時間帯にも恵まれて、作品としての成長も感じていた。もちろん、僕らの番組は製作費がかかることは知っていたけれど」
シェマーらが体当たりで挑んできた映画のような上質なアクション。スタント、カーチェイス、爆破シーン、どれを取っても従来のTVの枠を超えている。長年ショービジネスに身を置いてきたシェマーには、「S.W.A.T.」のような規模の大きな作品を製作することの大変さも理解していた。それでもだ。
「ニュースを聞いた仲間たちから連絡があった。『どう思う?』って。僕はちょっとムカついているけど、ショックというか頭が混乱して、まだ何を信じていいか分からないと答えたんだ」
 
6シーズンの間、「S.W.A.T.」に全てを捧げていた。結果も出ていただけにシェマーが呆然としたのも無理はない。
「それから数時間、僕は自分自身と向き合った。どうすべきか考えたんだ」
考え抜いた末、シェマーは正直な気持ちをSNSで発信することにした。決して衝動にかられたからではない。
「僕の中の何かが、気持ちを伝えるべきだと背中を押した。だから僕は7分ほどの動画を撮影した。だけどね、僕はあの動画を投稿する前に12回見返した。嘘じゃないよ、7分の動画を12回だから、84分間見返して、それから投稿したんだ」
この動画を世に出すことで、怒りに任せて発信したように見えないか、スターの我儘に見えないか、自分のことばかり話していないか。なにより後々トラブルにならないか?
「(業界から)面倒な奴だと思われたり、悪い評判を立てられるのは御免だからね。だから、何度も見返して、正直に真っ当に意見を述べていると確認した。願わくば、僕の情熱も伝わればと。だけど送信ボタンを押した瞬間、ヤバいと思った。炎上するだろうなって」
悪い予感は全て外れた。ファンの熱心な拡散とコメント。そして、番組の上層部からは「シェマー、よくやった。これで上手くいきそうだ。もう何もするな、あとは我々に任せてほしい」と連絡があった。
 
そして72時間後、シーズン6での番組終了は撤回された。
「興奮はしなかった。むしろホッとしたんだ。この作品にはきちんと最終回を迎えさせてあげたかったからね」
自分自分ではない、300人を超えるスタッフたちの今後が心配だったのだ。もう1シーズンあれば、製作している間に次の身の振り方を考えることもできる。ある日突然、路頭に迷う彼らの姿を見たくなかった。主演俳優としてのプライドだ。
実は、まだ諦めてはいない。ファンたちの熱い思いがあったから、シーズン7につながった。シェマーは簡単には引き下がれない。
「これで最後だって言われているけど、僕らのハートはまだ熱い。これからも継続してもらえるよう、頑張るつもりだ」
 
「S.W.A.T.」の7シーズンの間に、シェマーは最愛の母の死、婚約、娘の誕生と人生の区切りを経験した。そして、この騒動。より逞しく、より強く、シェマーは俳優として人間として一回りも二回りも成長した。
 
 
<「parade.com」 2月16日>