
8月のスーパー!ドラマTVの目玉は「RFDS:航空救命医療チーム」の独占日本初放送開始だ。オーストラリア(豪州)に実在する、飛行機で各地に飛ぶ医療サービス"RFDS(Royal Flying Doctor Service=航空救命医療チーム)"の活躍を、壮大なスケールで描くメディカルドラマ。
これを機に物語の舞台となる豪州について調べてみた。
面積は日本のなんと約20倍で世界第6位。人口の90%が海の近くに住む一方、"アウトバック"と呼ばれる内陸部は鉱業・観光業が盛んで、人口密度は低いが住民は多い。そこで飛行機に乗った"RFDS"は1928年からあるそうだ。
医師たちが乗り物で飛ぶというと、ヘリコプターに乗った"フライングドクター"を連想する人は多いはず。
離着陸の難易度を考えるとヘリのほうが便利に思えるが、とにかく大地が広い豪州だからこそ飛行機で移動するのが可能で、第1話にはドクターたちの飛行機が公道で離着陸する場面もある。
そして筆者が個人的に驚いたのは"RFDS"の基地がブロークン・ヒルという土地にあること。ここ、筆者の人生ベストテンに入る映画「マッドマックス2」(1981)や最近の続編「マッドマックス:フュリオサ」(2024)の撮影も行なわれた聖地だ。
加えて第1話の中盤ではドクターたちが行く地元の酒場でドラァグクイーンがステージ立つが、後に米国で「3人のエンジェル」としてリメイクされた「プリシラ」(1994)もここがロケ地だった。そんなブロークン・ヒル、シドニーからの距離は1,100km以上(東京と札幌ぐらい離れている)。
なのでヘリより速い飛行機に"RFDS"は乗る。
物語だが、登場人物陣は日本の各救命ドラマに比べ、英国から来たイライザ(エマ・ハミルトン)など大人が多く、彼らが家族との関係に悩む姿は大人の視聴者の共感を呼ぶ。
本国では2023年にシーズン2が放送され、シーズン3への継続が決定。医療ドラマは都会の大病院に舞台がなりがちだが、大自然が舞台の本作独特の味わいに注目したい。
【海外ドラマ評論家 池田敏 2025/7/31】
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。