「ブラックリスト」でジェームズ・スペイダーが演じたレイモンド・"レッド"・レディントン。犯罪コンシェルジュとして指名手配された後、FBIに自ら出頭し、凶悪犯罪者の逮捕協力を申し出る謎のキャラクターだ。
これまでにない斬新な発想とジェームズのミステリアスなキャラクター作りが功を奏し、「ブラックリスト」は大ヒットした。
実はそのキャラクター、レッドにはモデルとなった人物がいると、製作総指揮の一人、ジョン・アイゼンドレイスが米エンタメサイトにて明かしている。
「犯罪者を逮捕するヒーローたちが主人公のTVシリーズは、これまで数多く作られてきました。僕らは悪を懲らしめるという、テーマそのものを変えることなく、主人公を悪人にしてみたらどうかと考えたのです」
まだ企画構想段階の頃、ニュースが大物犯罪者ジェームズ・バルジャーの逮捕を告げた。ホワイティの通称で知られた、米マフィアのドンである。
ホワイティはかつてFBIの情報提供者でありながら、犯罪を重ね、やがて姿をくらました。1999年にFBIの10大最重要指名手配となり、多額の懸賞金がかけられた後、2011年に逮捕された。終身刑を宣告され、服役中の2018年に獄中死。一部のメディアは殺害されたと報じているという。
憎むべき犯罪者でありながら、ドラマチックな男の逮捕は、全米で話題となった。企画を練っていたアイゼンドレイスらクリエーターにも大きな影響を与えた。
「もしホワイティのような男が自首して、『俺がホワイティだ。もし、俺の条件をのんでくれたら、これまで共に悪事を働いてきた犯罪者の名前を教えてやる』と言ってきたらどうだろうと」
「ブラックリスト」主役レッドの誕生である。
「現実の世界の出来事が、すでに構想されていた作品に影響を与えたのです。犯罪者を捕まえる作品の主役が、最も信用ならない男だなんて、思いもつかないことでしょう。それが現実の話だというのですからね。ホワイティの一件が起こって、僕らにとっては幸運でした」
このホワイティの存在は、「ブラックリスト」の他にも、さまざまな作品にインスピレーションを与えている。映画『ディパーテッド』では、ジャック・ニコルソンが、『ブラック・スキャンダル』では、ジョニー・デップが、それぞれホワイティをモデルとしたキャラクターを演じているのだ。
「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるが、ホワイティの人生はその典型と言えるだろう。ちなみにジェームズはマサチューセッツ州ボストン出身、ホワイティは同じボストン近郊の出身だ。その奇縁をジェームズは心のどこかで感じながら、レッドを演じていたのかもしれない。
<「collider.com」 2013年7月28日>