
「NCIS ネイビー犯罪捜査班」シーズン14に出演しているジェニファー・エスポジートが、米紙のインタビューに答え、伝説のTVシリーズ「ザ・ソプラノズ」のオーディションを断っていたことを明かした。
「呼ばれても行かないことにしたのです。もう二度とあんな思いはしたくなかったから」
米HBO「ザ・ソプラノズ」は1999年から6シーズン放送され、エミー賞ドラマ部門最優秀作品賞を2度受賞したドラマシリーズ。ニュージャージーを縄張りとするマフィア、ソプラノ家の仁義なき戦いとファミリーを中心とした人間模様を描き、傑作としてTV史の一ページにその名を刻んだ。
役者であれば、誰もが気をそそられる作品のはず。それなのにジェニファーは何度か声をかけられたものの、一度もオーディションに出向くことはなかったという。
「あの作品で唯一私が好きだったのは、メドウというキャラクターだけでした。彼女はいい子でしたよね。私自身は近所の女の子たちにいつ殺されてもおかしくなかった、そんな街に育ちました。だからトラウマになっているんです」
物騒なコメントと思われるだろう。ジェニファーはNYブルックリン生まれ、郊外のスタテン島育ち。ジェニファーが子供だった1970年代、80年代のNYは治安が悪く、スタテン島も例外ではなかった。「いつ殺されても」という過激なフレーズは当時の治安を反映したものだろう。実際、ジェニファーも反社会的勢力に囲まれて育っている。
だからこそ、「ザ・ソプラノズ」は、見る度、辛かった過去を思い出す"トラウマ"。そして反社会的勢力が主人公の「ザ・ソプラノズ」も好きにはなれなかった。
「あのイタリア文化の描写が嫌いでした、勘弁してよ、って思っていました」
「ザ・ソプラノズ」の評判が高まるにつれ、反発は増した。イタリア系移民の子ジェニファーにとって、同胞への偏見は何より耐えがたかったのだ。
しかし、様々な作品に出演し、映画『Fresh Kills(原題)』を監督するなど、経験を積むにつれ、視野は広がり、考えが変わった。
「『ザ・ソプラノズ』は素晴らしい作品でした。あの頃、私は未熟で(作品の)意図が分かってなかった。今になってみればオーディションを受けなかったことを後悔しています」
「ザ・ソプラノズ」を受け止められるようになり、トラウマも乗り越えつつあるのだろう。ジェニファーの強気でタフな個性を生かし、より一層多様な作品、役柄に期待したいものだ。
<「variety.com」 2023年6月5日>