2025年2月のスーパー!ドラマTVの目玉は「
ザ・サーペント」の日本初放送。
1970年代にタイなどで数々の凶行を繰り返した連続殺人犯シャルル・ソブラジ。フランス人アランを名乗った宝石ディーラーだが、在タイ・オランダ大使館員クニッペンバーグは、オランダ人の男女2人の他殺体が見つかった事件をきっかけに凶悪犯ソブラジの存在に気づく。
英国BBCが映像大国インドと組み、タイや英国で壮大なロケーションを実現した本格犯罪ミステリーだ。
物語は1975年のタイ・バンコクで幕を開ける。
アランとその共犯者マリー・アンドレ、クニッペンバーグという三者の視点から、過去と現在が複雑におりなすスタイルでストーリーは語られていく。
1967年生まれである自分のような日本人にとって1970年代の世界は断片的にでも思い出せるものだが(なので第1話、1970年代の香港を舞台にした各場面は当時の香港映画を思い出させてよくできていると思った)、ネットもなければ科学捜査もない時代、クニッペンバーグが素人探偵であるからか、時にヒートアップし過ぎながらも真相に熱く迫り続けるのが楽しい。
ソブラジ役のタハール・ラヒム(本作でゴールデン・グローブ賞にノミネート)、共犯者マリー・アンドレ役のジェナ・コールマン、クニッペンバーグ役のビリー・ハウルも、いずれもはまり役。
ちなみにタイトルの“サーペント”は“蛇(ヘビ)”という意味で、蛇といえば“スネイク”じゃないかと思ったら、エデンの園でイブを誘惑して禁断の実を食べさせた蛇が“サーペント”だったという。
まずはソブラジがどんな凶悪犯だったか、ググったりせず、本作に接してみてほしい。まさに究極の“シリアルキラー”で、ヒット作「クリミナル・マインド」のファンも興味を誘われるだろう。
それにしても最終話となる第8話、犯人たちや捜査関係者たちのその後を知り、筆者は呆気に取られるしかなかった。深い問いかけが、そこにはあった。
【海外ドラマ評論家 池田敏 2024/1/31】
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。