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海外ドラマおすすめコラム vol.60  有色人種をヒロインとし、時代の最先端を描くリーガル ドラマ「オール・ライズ 判事ローラ・カーマイケル」

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9月のスーパー!ドラマTVの目玉は独占日本初放送となる「オール・ライズ 判事ローラ・カーマイケル」。法曹界を舞台にした、いわゆるリーガルドラマは米国ドラマの定番ジャンルだが、判事=裁判官を主人公にした作品はほとんど無い。
 
恐らくはスポーツが題材の作品が、選手やその周辺を登場人物にすることが多くても、審判を主人公にした作品がほとんど無いのとよく似ているのではないか。近年、スポーツの世界では最先端のテクノロジーを駆使する再判定が行われることが増えたが、ジャッジ(英語で“判事”もこう呼ぶ)の判断は絶対的という価値観が意外な展開を生みづらいからだろう。絶対的であるがゆえ、物事の白黒をはっきりさせる過程を見どころにしたエンターテインメントと最もなじまないのが、判事=裁判官という存在なのかも。
 
しかし本作は、検事補からロサンゼルス郡の判事に転じた有色人種のローラ(シモーヌ・ミシック)をヒロインに。2017年に始まったドナルド・トランプ政権下の米国では大勢のマイノリティや社会的弱者が苦境に立たされ、“ブラック・ライヴズ・マター”“#Me Too”といった運動が発生。だからこそ自身も有色人種であるローラは社会的弱者を救う手段を模索し、その人間味に感動を誘われる。
 
実は筆者もロサンゼルスの裁判所に呼ばれたことがある。約20年前にレンタカーを運転中、軽い気持ちで黄信号を突破したが、それが交通違反ということでレンタカー会社→クレジットカード会社を経て、自分がカードを作った時の住所、両親が暮らす家に「●月●日までに罰金を払えないならロサンゼルスの(ある)裁判所に▲月▲日のある時間に来い」という連絡が届いた。筆者は罰金の小切手を国際郵便で送ってことなきを得たが、「ロサンゼルスの裁判所、ごめんなさい」と痛感。そうしたリアルな世界が背景の「オール・ライズ~」、自身に対する後悔の念もあり、ぜひお薦めしたくなった。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2021/9/2】
 
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