デンマークの首都コペンハーゲン。古い建物が整然と並ぶ中心街から少し離れるとそこはのどかな風景が広がる。静かで穏やかな郊外の運河から、少女の死体が発見される。
一人の少女の死は、家族、学校、市庁舎、そして街中に衝撃をもたらす。一体彼女は何故殺されてしまったのか。一体誰に殺されたのか。犯人を追う刑事たちの前に次々と浮上する容疑者たち。そして捜査が進むにつれ浮かび上がってくるのは、容疑者だけではない。やがて、親も知らなかった少女の秘密、腐敗した政治、そして、人間に巣食う心の闇までも明かされていくのだ。
デンマーク生まれの「THE KILLING/キリング」は、ひとつの殺人事件が解決するまでの20日間の捜査過程を全20話で描く傑作ミステリー。「THE KILLING」は2007年、放送開始直後より熱狂的に視聴者から支持され、国民の3人に一人が視聴するというデンマーク史上最高視聴率を記録。本国での放送後、本作は国外へとその人気を広めていき、2011年1月には、イギリス BBC Four が英語圏で初めて放映。英国では「MAD MEN」を超える視聴率を獲得し大ヒット、さらに英国アカデミー賞(BAFTA)最優秀国際シリーズ賞も受賞している。アメリカでは「MAD MEN」の放映局AMCが英語版「THE KILLING ~闇に眠る美少女~」としてリメイク、こちらも6部門でエミー賞にノミネートされるなど大成功を収めている。
英国アカデミー賞(BAFTA)最優秀国際シリーズ作品賞受賞 !
本作は国際エミー賞に作品賞、主演女優賞でノミネートされたほか、2011年には栄誉ある英国アカデミー賞(BAFTA)の最優秀国際シリーズ作品賞を受賞。このとき、2010年度ゴールデングローブ作品賞に輝く「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」やエミー賞作品賞受賞の「MAD MEN」、人気作「GLEE」など強豪を下しての受賞となったことからも、本作への評価の高さがうかがい知れる。BAFTAにはシーズン1での受賞に引き続き、シーズン2(2012年)でも最優秀国際シリーズ作品賞でノミネートされている。
本国デンマークでは、本作シーズン3にて、 デンマーク・アカデミー賞 Robert Awards (2013)TVシリーズ部門において、作品賞・主演女優賞(ソフィー・グローベール)・主演男優賞(ニコライ・リー・コス)・助演男優賞(オーラフ・ヨハネセン)・観客賞の主要5部門を独占受賞している。
受賞歴
2013年 デンマーク・アカデミー賞 Robert Awards TVシリーズ主要5部門受賞
(作品賞、主演女優[ソフィー・グローベール]、主演男優[ニコライ・リー・コス]、 助演男優[オーラフ・ヨハネセン]、観客賞)
モンテカルロ・テレビ祭 最優秀女優賞受賞(ソフィー・グローベール)
2012年 BAFTA 英国アカデミー賞 最優秀国際シリーズ賞ノミネート
2011年 BAFTA 英国アカデミー賞 最優秀国際シリーズ賞受賞
英・クライム・スリラー・アワード 受賞 (海外ドラマ作品賞、主演女優、助演女優賞)
2008年 国際エミー賞 主演女優賞(ソフィー・グローベール)ノミネート
2007年 国際エミー賞 ドラマ作品賞ノミネート
エミー賞ノミネート! アメリカ・リメイク版 「THE KILLING」
「MAD MEN」や「ブレイキング・バッド」を成功させている米AMC局がリメイク版として「THE KILLING~闇に眠る美少女」を2011年4月より放送。デンマークのオリジナル版にほぼ忠実なリメイクとしてシーズン1はスタートしたが、シーズン1は全13話(事件未解決)で終了し、デンマーク版のシーズン1後半にあたるシーズン2は13話制作され、全26話で事件が完結している。リメイク版も特にシーズン1は、TCA テレビ批評家協会賞・作品賞や、主演・助演女優賞・脚本賞を含む6部門でエミー賞にもノミネートされるなど、視聴者はもとより業界関係者からも注目された作品となっている。
これが本当のリアル・タイムドラマ!
一つの殺人事件が解決するまでの20日間に及ぶ捜査過程を20話で、1捜査日を1話として描いていく「THE KILLING/キリング」。真の犯人が明らかになるまでに20話を費やすわけだが、その20日の間には実に様々なことが起こる。新たな容疑者が次々と浮上し、犯人を追う刑事たちの警察内部での関係や、被害者の家族の葛藤、事件によって思わぬ進路変更を迫られる政治家など、事件に少なからず影響を受ける登場人物たちの20日間は実に波瀾万丈なのだ。それに、たった1話で事件が解決することは現実世界ではありえない。クリエーターのソーレン・スヴァイストゥルップは、たった1時間で事件を解決させてしまう流行りのTVシリーズに違和感を覚えていたそうで、事件の周辺にある悲しみや感情が描かれることなく、たった1話で事件が解決してしまう犯罪ドラマの描き方を変えたかった、それがこの作品を書くきっかけだったと話している。
犯罪ミステリー、ヒューマンドラマ、政治スリラー、すべてを楽しめる「THE KILLING/キリング」
「THE KILLING/キリング」 ではいくつものプロットが見事に紡がれ、一つの重厚なドラマを織り成している。ミステリーの醍醐味である犯人探しを最後まで楽しめる傑作ミステリーでありながら、被害者の家族の悲しみやその再生を描く人間ドラマとしても心打たれ、また、地方政治で繰り広げられる駆け引きなど政治スリラーとしてのサスペンスにはハラハラドキドキさせられる。より深く掘り下げられたキャラクター描写、そして丁寧に語られていくストーリーテリングのクオリティは「ザ・ソプラノズ」や「THE WIRE/ワイヤー」にもひけをとらない。サラの私生活(母親や息子、婚約者との関係)、市長選挙や政治の舞台裏、被害者の家族や友人の悲しみなど、事件を取り巻く人々のいくつものストーリー、そしてミステリー、ヒューマン、スリラーというジャンルまでもが絶妙なバランスで紡がれ、よりリアルで、そして力強いドラマに仕上がっているのが、この「THE KILLING/キリング」の魅力なのだ。なお、原題の“FORBRYDELSEN”は、デンマーク語で「犯罪」を意味する。
新たなヒロイン、サラ・ルンド
シングルマザー。職場ではいつも一匹狼。禁煙ガムを手放せない。口数は少なくコミュニケーションをとるのが下手。感情を表に出すことはせず、プライベートよりも仕事優先。息子からは父親と住みたいと言われたり、婚約者にもさびしい思いをさせるけれども、仕事だけはよくできる。そんな超男前なヒロインが、サラ・ルンドなのである。無造作に束ねた髪、そしていつでも着ているあのセーター。警察という男社会の中でも、ありのままの自分でいられる強さをもっている。アウトローでいながらかっこいい。そう、まさにサラ・ルンドはクリント・イーストウッドの「ダーティハリー」なのだ。撮影途中、サラ・ルンドとある人物のロマンスを盛り込むことを打診されたグローベールは猛反対したという。「サラはクリント・イーストウッドよ、イーストウッドに彼女は必要ないでしょ!!」
「THE KILLING/キリング」ファンを熱狂させるサラ・ルンドのセーター
刑事サラ・ルンドのトレードマークのセーター。彼女は白と黒の2枚を所有しているようだが、特にイギリスの視聴者が夢中になったのがこのセーターだった。いつまにか洗濯されて、破けてもすぐに元通りになる、まるで魔法のセーター?!番組で着用されているのは、デンマーク、フェロー諸島産の手編みセーター。280ユーロ(日本円で約47,000円)。番組のヒットでセーターは生産が追い付かなくなったらしい。
クリエーター: ソーレン・スヴァイストゥルップ
1968年生まれ。コペンハーゲン大学で文学を専攻した後、デンマーク国立映画学校で脚本を学ぶ。TV映画「Deadline(原題)」、TVシリーズ「Taxi(英題)」「At the Faber(英題)」の脚本を執筆。そのほか多数の映画脚本のコンサルティングをつとめながら、デンマーク国立映画学校で教鞭もとっている。2003年にはソフィー・グローベール主演で夫婦関係を描いたTVシリーズ「Nikolaj and Julie(英題)」で国際エミー賞を受賞している。
注)初回放送当時の情報となります