
「ベター・コール・ソウル」ボブ・オデンカークが、米誌で同共演者のレイ・シーホーンと対談した。同シリーズのクリエーター、ヴィンス・ギリガンについて語っている。
「X-ファイル」の共同製作者としても知られたギリガンは、後に「ブレイキング・バッド」「ベター・コール・ソウル」、最新作の「プルリブス」とヒットを連発。今、ハリウッド最注目のクリエーターの一人だ。
ギリガンには"ハリウッドの天才"、そんな言葉もふさわしく思えるが、ボブたちの意見は少し違うようだ。
「僕はいつも"天才"という言葉を使うのにためらってしまうのです。とりわけヴィンスのような人に対しては特に。なぜなら天才と呼んでしまうと、彼の血のにじむような努力を無視してしまうような気持ちになるからです。舞台裏でいかに苦労しているか知らずに『彼には才能があるんだろう』なんて評価してしまうんじゃないかと思うのです」(ボブ)
これにはレイも完全同意。「脚本の一語一句全てを練りに練っている」と、ヴィンスの台詞へのこだわりにひれ伏す。
ボブもコントからTV、映画まで脚本を手がけてきたから、脚本家の仕事はよく知っている。
「僕も物書きだからよく分かるんです。第一稿から始まって三稿目くらいになると『もう十分だろ、これで完成だよ!』なんて終わらせたくなる。ところがヴィンスは違います。僕にとっての完成品が彼にとっては、下書きでしかありません。彼には脚本が全てなんです。だからそこから議論が始まり、推敲を重ねるのです」(ボブ)
ヴィンスの脚本は小説のように読み応えがあると、レイ。そして何より俳優が嬉しいのは、彼の脚本にさえ、俳優が自分の考えを述べることが歓迎されるという。
「あれほどヴィンスたちが議論を重ねて作り込んだ脚本に、僕らが質問したり、コメントすることが許されるのですからね。本当に光栄なことです。『うるさい、黙ってろ』なんて言われることは絶対にありません」(ボブ)
ヴィンス天才説はひとまず置いておくとして、実はヴィンス自身がある性格ではないかと疑っているという。レイが以前、ヴィンスと一緒にポッドキャスト番組に出演した際のことだ。
「ヴィンスは『自分がサディスト(加虐趣味の人)じゃないかと思う』って言ったのよ。自分自身を絶体絶命のピンチに追い込んで、そこからどうやって抜け出すか考えるのが好きなんだって」(レイ)
ヴィンスは、天才なのかサディストなのか? 答えはおそらく「どっちも」だろう。俳優だけじゃない、クリエーターもテッペンに振り切れている。ハリウッドは表も裏も個性と才能にあふれる人たちの集まりなのだ。
<「interviewmagazine.com」 2025年11月20日>