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海外ドラマ最新レポート Vol.752  プロの演奏家がガチ批評 「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」

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ゴールデングローブ賞コメディ/ミュージカルシリーズ部門最優秀作品賞を受賞した傑作「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」。同シリーズはニューヨーク交響楽団に異端の天才指揮者ロドリゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が就任したことから巻き起こるクラシック音楽界の内幕を描くコメディだ。
これまでクラシック音楽をテーマにしたドラマシリーズは皆無に等しい。新鮮なテーマをユーモアと皮肉を込めて描く「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」について、現役の演奏家たちはどう感じているのだろうか。米サイトが、ワシントンDCにベースを置く国立交響楽団の団員にインタビューを試みている。


主人公の一人、ヘイリー(ローラ・カーク)と同じオーボエ奏者のジェイミー・ロバーツさんは、同シリーズについて「私たちも皆さんと同じ社会の一員だと認めてもらえるのは嬉しい限りです。私のご近所さんにもようやくオーボエが何たるものなのか知ってもらえるようになりました。空港でも以前はよく荷物検査をされましたが、今はスルーです」
ただし、音楽家仲間は第一話で見るのを止めてしまう人が多いのだとか。「第二話以降はずっと面白くなるので、我慢して見続けてとアドバイスしています」(ロバーツさん)
それでは「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」はどのくらいクラシック音楽界の現実に即しているだろうか?
「私たちの業界をぎゅっと凝縮したものと考えれば、うまくできているのではないでしょうか。個人の演奏家や運営などは交響楽団の理事長グロリア(バーナデット・ピーターズ)を通して描かれています。現実はもっと複雑で、描き切ることは難しいでしょう」と語るのは、ヴィオラ奏者のジェニファー・モンディさん。登場人物も多いので、1話22分では無理があると考えているという。
ロバーツさんは「『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』では私たちの世界はデジタルミュージックのように描かれていますが、実際にはよりレコード盤に近い気がします」と音楽家らしい批評。クラシックの世界も人間臭いのだ。


「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」の目的の一つは、クラシック音楽界を活性化させ、若い観客を引き寄せること。現代人に広くアピールするためにセンセーショナルな描写も含んでいる。
「クラシック音楽は衰退していると言われて久しいのは知っています。『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』の原作本は2005年に出版されたもので、それよりは私たちもステップアップしています」とモンディさん。
音楽の授業がクラシック音楽入門の王道とするならば、「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」は寄り道、もしかして邪道かもしれない。しかし、その寄り道を経験してからの王道はきっと見方が違うはず。もっとクラシック音楽を知りたい、好きになりたい人にこそ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」はおすすめだ。



<「dcist.com」 2016年3月24日>