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海外ドラマおすすめコラム vol.110 米国のドラマの歴史を変えた伝説の名作! 「ヒル・ストリート・ブルース 完全版」

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11月のスーパー!ドラマTVで絶対に注目したいのは「ヒル・ストリート・ブルース 完全版」(ヒルスト) シーズン1の放送開始。
とにかく伝説の名作なのでどこから語ればいいのか思わず迷うほど。エミー賞でドラマシリーズ作品賞を計4回受賞したのは5作品だけだが、これを最初に実現したのが「ヒルスト」だ。シーズン1でいきなり8部門受賞という記録は19年後に「ザ・ホワイトハウス」(9部門受賞)に抜かされるまで史上最多だった。さらに第34回ではドラマシリーズ助演男優賞のノミネーション(5人)を独占してしまった。


内容にもふれよう。物語の舞台は米国のどこかの都市で、そこにある警察のヒル・ストリート分署の面々が登場人物。それまでの警察ドラマは刑事・警官による事件解決を一話完結形式で描いたが、本作は群像劇として複数の物語を並行して描き、次回に続くストーリーラインも少なくない。
登場人物陣の仕事と私生活を両方描いたのも画期的だった。つまり後にいう"アンサンブルドラマ"の原点になったのだ(伝統的メロドラマを除く)。
本作が無ければ「ER 緊急救命室」も「ザ・ホワイトハウス」も無かっただろう。米国のドラマの歴史を「ヒルスト」は変えてしまった。また毎回は分署の中で始まるが、手持ちカメラを多用したドキュメンタリータッチも衝撃的だった。


またレギュラーと準レギュラーのキャラが計約20人もいる一方でゲスト出演陣も充実し、無名時代のフランシス・マクドーマンド、ティム・ロビンス、フォレスト・ウィテカー、ホアキン・フェニックスらが出演。これほど後の米国ドラマに影響を与えた番組は他に無い。
ちなみに"完全版"というのは日本初放送時、吹替が無かった場面(昔はオリジナル版を日本では数分削って放送したのでこういうドラマは多い)を復活させ、その部分に字幕を付けたもの。しかもこの"完全版"は今回が独占日本初放送だ。昔見たなんてファンもお見逃しなく!!



【海外ドラマ評論家 池田敏 2025/10/31】


池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。