2003年から放送開始した米CBS「NCIS ネイビー犯罪捜査班」は、今秋よりシーズン23を迎える大ヒットTVシリーズ。
その人気の理由の一つに、完璧ともいえるキャスティングがある。ファンならば、どのキャラクターも替えが効かないと感じていることだろう。
「NCIS ネイビー犯罪捜査班」の顔と言えば、マーク・ハーモン。主役のリロイ・ジェスロ・ギブスを演じるマークが、絶大なカリスマと献身で共演陣を引き立て、「NCIS ネイビー犯罪捜査班」及びそれに続くスピンオフの成功を導いたことは間違いない。
ギブス役には、ハリソン・フォードやアレック・ボールドウィン、ケヴィン・ベーコンらそうそうたるスーパースターも候補だったという。実際の有力候補には、スコット・グレン(『羊たちの沈黙』)やアンドリュー・マッカーシー(「ブラックリスト」)らが挙がっていた。最終的にクリエーターのドナルド・P・ベリサリオとマークが面談し意気投合、ギブス役に決定したのだという。
ベリサリオは「NCIS ネイビー犯罪捜査班」に「ユーモアをたくさん散りばめたい」と考えていたのだとか。そこで生み出されたのが、アビーなるキャラクター。お堅い分析官のイメージとはほど遠いファンキーな人物像に、演じるポーリー・ペレットの愛嬌がカチリとはまり、シリーズ屈指のインパクトあるキャラクターへと成長した。
個性派ぞろいキャスティングの中でも、ベリサリオがCBS上層部とケンカしてまでこだわったのが、ベテラン検視官ダッキー役の英国人俳優デヴィッド・マッカラムだ。
デヴィッドの配役に、CBSは「絶対無理、ダッキー役にあの年配のくせ者俳優を当てるなんてあり得ない」と猛反対。
しかし、ベリサリオは踏ん張った。「ダメだというなら、もうやらない」と辞職もちらつかせて突っぱねたのだ。
そこまでデヴィッド・マッカラムが欲しかったのか、それともキャスティングに口を出すCBSに腹を立てたのか不明だが、とにかくベリサリオは譲らなかった。
CBSがそのキャスティングに異議を唱えたのは、米海軍犯罪捜査局が舞台なのだから英国人より米国人を優先したいと考えたからだろう。当然といえば当然なのである。
結果的にCBSはベリサリオの"脅し"に屈し、英国人俳優の配役を認めた。以降デヴィッドが2023年に亡くなるまで、20年間に渡りダッキー役を演じ続けることになる。
完璧なキャスティングのために、妥協を許さなかったクリエーター陣。「NCIS ネイビー犯罪捜査班」成功の第一歩は、彼らの粘りから始まったのだ。
<「hollywoodreporter.com」 2023年9月25日>