「グッド・ファイト」のクリスティーン・バランスキーは才能あふれるベテラン女優。賞レースの常連であり、1995年にはエミー賞助演女優賞を受賞している。
そんな実力派女優にも、夢を叶える前には苦労があったと、米エンタメサイトで語っている。
カナダ国境近くの米バッファローで生まれ育ったクリスティーン、幼い頃からバレエやタップダンスにいそしみ、高校時代には演劇も始めた。進路を考え始めた頃、名門ジュリアードを知り、「必ず入学する」と決めた。
もちろん、パフォーマーなら誰もが憧れる学校だけに入学は簡単ではない。最初に志願書を提出した時は、受験さえできず、ウェイティングリストに名前を載せた。
そのタイムラグはクリスティーンにとって良かったに違いない。「s」の音に強いクセがあると指摘されていたのだ。誰の耳にもスムーズに聞こえるよう、標準的な「s」を発音する必要があった。
「歯擦音(SやSHの音)の発音が苦手でした。矯正が難しいと言われていた音でした」
学生演劇では問題のなかった歯擦音だが、ジュリアードは求められる次元が違う。発音矯正のために、ひと夏を費やしたという。
「歯医者に行って、前歯にかぶせ物をしてもらいました。そして夏の間、スピーチセラピーを受けたのです」
1度目の受験は失敗したが、2度目で合格。ジュリアードの一員となれたクリスティーンは有頂天になったという。
「お金はありませんでしたが、最高に素晴らしい時間を過ごせました。4年間の凝縮された時間があったおかげで、プロフェッショナルな女優としての準備期間を得ることがでたのです」
TVや舞台のクリスティーンから、発音で苦しんだ過去など想像もできない。欠点を克服した努力、そして養分のように芸事を吸収した4年間が、今も支えとなっている。
歳を経ると役がなくなると言われるハリウッドで、72歳のクリスティーンは主演クラスの出演作が続くまれな存在。年齢を超越した唯一無二の女優は、これからもファンを魅了することだろう。
<「townandcountrymag.com」 2022年1月24日>