ニューヨーク交響楽団を舞台に奇想天外な天才指揮者ロドリゴ・デ・ソウザ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が波乱を巻き起こす、コメディ・ドラマシリーズ「
モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」。プロのオーボエ奏者として長年クラシック音楽の世界に身を置いたブレア・ティンダルが執筆した書籍『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル ~セックス、ドラッグ、クラシック~』を原作にした話題作だ。
2016年にはゴールデングローブ賞のコメディ/ミュージカルシリーズ部門最優秀作品賞を受賞。「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」のプロデューサー、ジェイソン・シュワルツマンが、その魅力について米エンタメサイトに語っている。
「クラシック音楽家は皆、ちょっぴり切ない人生を送っていると言えるかもしれません。とにかく犠牲にするものが多すぎるのです」
プロデューサーとして、クラシックの世界にどっぷり浸かって、彼らの哀しみを知った。
「オリンピックを目指すアスリートと似ています。幼い頃から遊んでる暇はない、これをやってはダメだ、練習しなくっちゃと思い込んでいる人たちです。だからこそ、彼らは独特の経験をするのでしょうし、その経験は彼らの周りにいる人しか理解できない。僕らの作品は、そういった部分を描きたかったのです」
クラシック音楽とスポーツ。世界は全く異なれど、プロを目指すレベルにおいて共通点を見出す人も多いのではないだろうか。
「そして、彼らにはいくつもの段階があります。プロになるのはとても難しいことは分かっているから、皆一生懸命です。けれど同時に自分がどこかで妥協したり、ツライ思いを経験したり、恋愛をしたりすると、ふと思い止まることがある。夢を実現させるため、自分は何をどこまで犠牲にすればいいのだろうと」
夢の途中において、叶えるには過酷な日々を過ごす。そして道半ば、夢は妥協せざるを得ないと気づく時、(自分はこれで良いのか?)と迷うことになるというのだ。
「さらに夢に近づけば近づくほど、もっと苦しむでしょう。まるで太陽に近づくように」
とはいえ、「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」はスポ根ならぬクラシック音楽根性を描いた作品ではない。
「この作品のユーモアを気に入っています。古い映画を見ているような滑稽さを感じるかもしれません。下品でなく、できれば上品な。それがどんどん愉快に思っていただけると嬉しいです」
知らない世界をのぞき見するのは楽しい、それが突き抜けていればなおさら。「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」は、突き抜けたクラシック音楽家たちの姿を描くユニークな作品なのだ。
<「nylon.com」 2016年1月16日>