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スパドラ!最新USレポート Vol.569:大物脚本家が明かす、ドラマのキャスティング舞台裏 ジェームズ・スペイダー、マンディ・パティンキンも却下寸前?

November 9, 2017

blacklist_yr4_us250_1109.jpgブラックリスト」のジェームズ・スペイダー、「クリミナル・マインド」のマンディ・パティンキンといえば、それぞれ主演するドラマシリーズで圧倒的な存在感を見せる、トップクラスのTVスターだ。しかし、彼らがTVに出演し始めた頃、キャスティングを成立させることに難航したと、大物脚本家が語っている。

キャスティングの裏話を明かしたのは、「アリー・myラブ」「ビッグ・リトル・ライズ ~セレブママのたちの憂うつ~」など次々と人気シリーズを世に送り出す、デビッド・E・ケリー。女優のミシェル・ファイファーを妻に持つ、TV界屈指の大物脚本家だ。

現在は「ブラックリスト」に主演しているジェームズ・スペイダーを、ケリーが最初に起用したのは、法廷ドラマシリーズの「ザ・プラクティス」。同作で敏腕弁護士を演じたジェームズは、エミー賞ドラマ主演男優賞を初受賞。「ザ・プラクティス」終了後、ケリーが新シリーズ「ボストン・リーガル」で再びジェームズとタッグを組みたいと願ったのも不思議ではない。

そこに待ったをかけたのが、放送ネットワークの米ABC。「(視聴者は)誰もジェームズ・スペイダーを自分のお茶の間に招きたいとは思わないと言われたんだ」とケリーは当時を回顧する。「彼を、映画館に見に行くことはあるだろう、だけど家で見たい顔じゃない、ってね」

当時のジェームズは、TVにも出始めていたものの『セックスと嘘とビデオテープ』、『レス・ザン・ゼロ』 など主演映画で演じたイメージは強烈。TV向きの俳優ではないと、ABCは判断していたのだ。

もちろん結果はケリーの粘り勝ち。5シーズン続いた「ボストン・リーガル」で、ジェームズはさらに2つのエミー賞ドラマ主演男優賞を稼いでいる。

そして1990年代に人気を博した医療ドラマシリーズ「シカゴ・ホープ」で、ケリーが初めてキャスティングを試みたのが、マンディ・パティンキン。のちに「クリミナル・マインド」や「HOMELAND」での熟練した演技が評判を呼ぶマンディだが、当時のTV出演は数えるほどしかなかった。

「彼は素晴らしい。どんな役だって演じられる」と、マンディにベタ惚れしていたケリー、しかし「シカゴ・ホープ」の放送ネットワークである米CBSはその主演起用を渋った。理由は「あまりにもユダヤ系すぎる」から。

マンディはユダヤ系米国人。90年代の米国は、今より人種差別の風潮が強かったのかもしれない。マンディの濃いユダヤ系の容貌にCBSは二の足を踏んだ。

マンディの場合も、最後までケリーは意思を曲げなかった。ケリーの頑張りがなければ、以降、マンディの出演する優れたTVシリーズの数々は誕生してなかったかもしれない。

キャスティングについて、ケリーは今でもネットワークと意見をぶつけ合うことがあると愚痴る。「(ネットワークの)手の中に1000万ドル、2000万ドルがあると、意見を言いたくなるものなんだろうね。時々、僕らは分かりあえないと思うこともあるんだよ」と、その交渉の難しさを語っている。


<「hollywoodreporter.com」 10月27日付け>