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スパドラ!最新USレポート Vol.254:映画『セブン』のデヴィッド・フィンチャー監督、「ブレイキング・バッド」を例に「興味深いキャラクターは、映画でなくTVに生まれる」と断言

October 16, 2014

BreakingBad_yr4_37_us250_1016.jpgハリウッドの才能が次々TVに参入する米ショービズ界。クオリティ面で、「TVが映画を追い抜いた」と指摘されることは珍しくないが、ハリウッドで最も人気の高い監督の一人、デヴィッド・フィンチャーでさえも「興味深いキャラクターは映画ではなく、TVに生まれる」とその逆転現象を認めている。

フィンチャー監督自身も「ハウス・オブ・カード 野望の階段」でTVシリーズの製作総指揮に取り組む。「今はTVの黄金期と呼ばれているよ。皆がTVに夢中になっているんだ。最も興味深いキャラクターは全てTVから生まれているからね」

フィンチャー監督が「最も興味深いキャラクター」として挙げるのは、「ブレイキング・バッド」のドラッグメーカー(ブライアン・クランストン)、「TRUE DETECTIVE/二人の刑事」の刑事コンビ(マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソン)、そして「Orange Is The New Black(原題)」の女性受刑者(テイラー・シリング)だ。

「彼らは自分が何を言うべきか、どう振る舞うべきか分かっているキャラクターなんだ、たとえそこに邪魔が入り、思うように事が進まなかったとしても関係ない。映画でそういったキャラクターを生み出すのは難しい」

もともとTVはクセの強いキャラクターありきでエピソードが続いてゆく。そこに今の良質な脚本、第一級の演技が加わることで、より興味深いキャラクターがTVに生まれているというわけなのだろう。これまで映画『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』など人間の心理を大切に描いてきたフィンチャー監督にとって、ハリウッドの大作主義こそが映画をつまらなくしていると嘆く。「マーケティングが第一なんだ。この映画には、若い男の子たちが見に来てくれるだろうとか、ハンバーガーチェーンのタイアップになりそうだとか、そんなことが最優先事項に挙げられるんだからね」

大人向けのドラマ作りが許されるTVに創作の場を求めるのは、フィンチャー監督には当然の成り行きだったのかもしれない。またフィンチャー監督のようなクリエーターだけでなく、俳優たちもTVに向ける視線が変わってきたという。

「(TVと映画の)境界線があいまいになっている。10年前だったら、俳優たちは『オレはTVなんてやらない、映画しか出ない』と言っていたけれど、今は違う。良い脚本のあるところに人は集まるんだよ」


<「telegraph.co.uk」 10月13日記事より>