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海外ドラマおすすめコラム vol.35 「LOST」に匹敵する壮大な"ツカミ"! 見逃せなくなる「MANIFEST/マニフェスト」

 

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10月のスーパー!ドラマTVの目玉は独占日本初放送の「MANIFEST/マニフェスト」だ。

 

これまでにも第1話の冒頭、どでかい事故や事件が起き、その謎に迫るファンタジー系ドラマはあったが、この「MANIFEST/マニフェスト」の第1話にもぐっと心を持っていかれる。2013年、中米のジャマイカを飛び立ちニューヨークに向かった航空機は乱気流に巻き込まれるが、何とか米国に到着。しかし、そこは5年半後の未来で……。

 

かつての「LOST」「フラッシュフォワード」に負けない、壮大な“ツカミ”が出色だ。そんなことがあるのかと疑心暗鬼になる政府関係機関やマスコミが大騒ぎする一方、190人以上いる搭乗客や機のクルーの人生や運命も大きく揺れ動く。

 

ネタバレになるので詳細は語らないが、その後も二転三転どころでは済まない急展開が続く。サスペンスフルであると同時にヒューマンな見せ場も満載し、他人事と思わせない説得力がある。視聴者の好みに合わせていく米国のドラマが増えた昨今、本作は幅広いファン層を魅了しようと挑んだ野心作であり、全米放送した地上波のNBCネットワークでは、全16話からなるシーズン1に続くシーズン2への継続も決定。近年の地上波ドラマとしては大きな成功例になった。

 

個人的に5年半という短いタイムスリップが、ひょっとしたらありうるかもというリアリティがいい……と思ったら、製作総指揮の1人が映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督だと知り、なるほどねと納得。特に筆者が気に入ったのはこんなやり取り。ある生還者は娘から「アレクサに聞いて」と言われるが、「アレクサって誰?」と返す。アレクサとは、生還者がいなかった2014年にアマゾンが発表したAIだが、こうした生活感が本作の世界観をより豊かにしているのだ。

 

また筆者は日本のある昔話を思い出した。「浦島太郎」だ。この“米国版「浦島太郎」”、多くの日本人の琴線にもふれるのではないか。

 

【アメリカTVライター 池田敏 2019/9/30】

 
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