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海外ドラマ最新レポート Vol.127 「ミセス・ウィルソン」「ゲーム・オブ・スローンズ」のイアン・グレン、俳優になったきっかけは"あの子の一言"

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傑作ミステリードラマ「ミセス・ウィルソン」で、秘密多き人生が死後明らかになる男、アレックを演じるイアン・グレン。『バイオハザード』シリーズ、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』など出演映画は多数、近年では「ゲーム・オブ・スローンズ」のジョラー・モーモント役で海外ドラマファンにもおなじみのベテラン俳優だ。
 
スコットランド・エディンバラ出身のイアンが、地元オンラインメディアのインタビューに答えている。
 
英ロンドンの王立演劇学校で学んだ本格派俳優は、「大学に入るまで俳優という職業が存在しているのも知らなかった」ほどの芸能オンチ。それでも地元アバディーン大学に入学後、演劇サークルに参加した。最初に演じたのは、米劇作家アーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」。端役だったが、評判はすこぶる良かった。
 
「見た人たちから褒められた。とりわけ、僕がすごく気に入っていた女の子から『役になりきって、上手だった』と言ってもらえたのさ。その言葉だけで僕には十分だった」
 
大好きだった、あの子に褒めてもらえた。感受性豊かな頃のイアンには何よりも嬉しい言葉だった。それ以来、本気になった、演技というものに。
 
「正直言うと、その時、自分が何をしたいのかやっと分かったんだ」
 
本気がやる気を生み、もっともっと上手くなりたいと願う。
 
「目の前が開けた瞬間だった。幸運にも王立演劇学校に合格することができた。演技に挑戦していいんだというお墨付きをもらったと思ったね」
 
王立演劇学校で舞台の経験を積み、小さな役から大きな役をつかむ。やがて興味は映画へと。
 
「(ロンドンの)オールド・ヴィック・シアターでハムレットの舞台に出ていたのを、彼が見てくれていたんだ」
 
“彼”とは英国の有名劇作家トム・ストッパードのこと。ストッパードの代表作「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」の同名映画化にあたり、イアンがハムレット役に指名されたのだ。主演はゲイリー・オールドマン、ティム・ロスという最高のキャスティング。
 
「すごく楽しい経験だった。まだ駆け出しの頃に、映画の魅力を教えてもらった。映画の中では、バケーションの時でさえ行くことのできない、いろんな場所に連れていってもらえるのだからね」
 
以降、映画・TVでの仕事を好んで選ぶようになった。撮影のためあちこちを駆け廻り、現在は家族でロンドンに暮らす。それでも、イアンの心はスコットランドにあるという。
 
「素敵な思い出がたくさんあるから。僕という人間を形造ったのはエディンバラで過ごしたあの年月だと思うんだ」
 
今でも年に数回は家族を連れ、両親の暮らすスコットランドに帰っている。
 
「エディンバラでは、僕がロンドンでやれないことも出来るんだ。たとえばバスに乗るとかね」
 
自分の身の回りの世界から飛び出したかった若き駆け出しの頃。そして月日は流れて、スコットランドはいつでもイアンをあの頃に戻してくれる。
 
 
<「edinburghnews.scotsman.com」 6月15日>