シックス・フィート・アンダー

人々の"死"を通して限りある"生"の現実をシニカルかつユーモラスに描き
全米で絶賛の嵐を巻き起こした描いた衝撃のヒューマンドラマ

フレディ・ロドリゲス インタビュー

「シックス・フィート・アンダー」ではフィッシャー葬儀社で天才的なエンバーミング(遺体整復)の腕を見せるフェデリコ役を演じているフレディ・ロドリゲスにインタビューをする機会を得た。映画『ドリーマー』ではカムバックを夢見る競馬騎手の役を演じているフレディだが、やはりテレビと映画とでは役作りのペースが違うと言う。

「映画は2~3ヶ月の間、その役を演じるだけだし、準備期間もそう長くはない。でも、『シックス・フィート・アンダー』では時間をかけてじっくり役を成長させていくことができた。映画でもテレビでも特にどちらを好むということは無いけれど、テレビだったら、やっぱり『シックス・フィート・アンダー』のような質の高い番組に出たいな。あのドラマの仕事は、まるでベンツを運転しているような気分になるクオリティの高さだから、その後でユーゴ(注:アメリカで一時出回ったユーゴスラヴィア製の安かろう悪かろうな車)を運転する気にはなれないだろう?(笑)」

エミー賞やゴールデングローブ賞をはじめ、数々の賞を受賞してきた「シックス・フィート・アンダー」は、俳優として充実感のある仕事だっただけでなく、フレディのキャリアを大きく変えた作品でもあるそうだ。 「『シックス・フィート・アンダー』は、僕にたくさんの機会を与えてくれた。『ドリーマー』にキャストされたのも、『シックス・フィート・アンダー』を観たジョンが僕の演技を気に入ってくれたからなんだ。この後も、『トラフィック』を書いたスティーヴン・ギャガンが脚本を担当している『ハヴォック』に出演しているし、『ドリーマー』と一緒にトロント映画祭でプレミア上映される『ハーシュ・タイムス』ではクリスチャン・ベールと共演した。今は、フロリダで『ポセイドン・アドベンチャー』のリメイクを撮影中だし、M・ナイト・シャマランの新作『レディ・イン・ザ・ウォーター』への出演も決まったところで、なかなか良い調子だよ」

フレディはロサンゼルスに住んでいるが、「シックス・フィート・アンダー」に出演するようになってからは、ファンに呼び止められることも増えてきたとか。 「たいがい、皆、礼儀正しいし、番組の熱心なファンであることを僕に話したいだけなんだ。でも、レストランで食事をしているところにやって来て僕と一緒に写真を撮りたいなんて言われると、現実離れした感じがするね。もっと超現実的な気持ちになったのは、バスの横腹に自分の顔が付いているのを見た時だ。家族と一緒に車に乗っていて、交差点の信号待ちでバスのとなりに並んで停まっていたら、僕の子供の1人が、『ねえパパ、パパの顔がバスに付いてるよ!』と騒ぎ出した。彼が指差す方向を見たら、本当にバスの横腹に『シックス・フィート・アンダー』の広告ポスターが取り付けられていて、僕もそこに顔を出していた。僕たちは一緒にそのポスターを見つめていたんだけど、何だか妙な気持ちがしたよ。父親の顔がバスの横腹に付いている子供の気持ちなんて想像できないもの」

その子供の1人、ジャンカルロは、「シックス・フィート・アンダー」で、フレディ演じるフェデリコの息子、フリオ役を演じているが、フレディは、自分の子供が芸能界に入ることについては奨励も反対もするつもりはないという。 「ジャンカルロがフリオ役を演じることになったのは、アラン・ボールがオーディションを受けさせることを勧めたからなんだけど、僕は最初、ちょっと躊躇したんだ。自分の子供たちは普通らしい家庭で育って欲しいと考えているからね。でも、ジャンカルロはオーディションに受かっちゃって、彼自身も出演することを楽しんでいるようだから、まあ良いかと思っている。将来はどうなるか判らないけれど、彼が俳優になることに興味を示せば応援していこうと思っているし、そうじゃなかったら、それはそれで良いと考えているんだ」

小柄で童顔ゆえ、20代そこそこといっても通ってしまうようなフレディに、父親らしい表情がチラリとのぞいた瞬間であった。

【ロサンゼルス(米) 荻原順子 2005年7月】