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スパドラ!最新USレポート Vol.535:「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストン、"ブリーフ"姿で表現したかったこと

July 11, 2017

BreakingBad_yr1_us250_0711.jpg傑作ドラマシリーズ「ブレキング・バッド」にウォルター・ホワイト役で主演し、エミー賞をはじめ数々の賞を総なめしたブライアン・クランストン。ブロードウエーの舞台やハリウッド映画でも主役を務め、今や“トップ俳優”そして“スター”とみなされる存在となった。米の有名報道番組「60ミニッツ」のインタビューに答えたブライアンは、両親の離婚、「ブレイキング・バッド」についてなど赤裸々に語っている。

「スターになれるとは思ってなかったよ。全然無理だと思ってた」

売れっ子スターのブライアンはこう語る。謙虚というより、むしろ経験からの言葉なのかもしれない。

育った環境は複雑だった。両親は共に俳優。しかし役には恵まれず、売れなかった。それでも父はスターになることをあきらめず、夢を見続けていた。

「(父は)中年の危機ってやつさ、しかも特大のね。家族を捨てて出て行ってしまったんだ。それから家族は空中分解。母は心折れて、完全に打ちひしがれた。そのうち、食べていくために身の回りの物を売るようになった。ついに家も手放すことになり、追い出されたってわけさ」

まだ11歳のブライアンにとっては屈折した少年期の始まりだった。

「両親の離婚はまるで体に焼き印を押されたような気持ちだった。ずっと離婚を認めてなかったよ。友達に『君のお父さんを見かけないね』と言われると、僕は嘘をついた。『お父さんは夜遅くに帰ってくるんだよ、目が覚めたら僕らと遊んでくれる』ってね。何度も何度も嘘をついたから、そのうちそれが本当だと思えるようになったものさ」

暗い少年期を過ごしたブライアンは、皮肉にも両親と同じ職業を目指す。しかし、両親よりもずっとツイていたらしい、ブライアンはいくつかのドラマやコメディにゲスト出演するようになる。しかもそのうちの一本は90年代の米国民的シットコム「となりのサインフェルド」だった。

5話分のゲスト出演をブライアンは「お笑いブートキャンプに放り込まれた気分だった」と回顧する。この“特訓”が功を奏したのか、やがてそれがレギュラー入りした「マルコム in the Middle」につながってゆく。

「彼は頼りにならない男だったよなあ、まったく無責任。いつもぼんやり、頭をお留守にしてるんだ」

これは「マルコム in the Middle」で、ブライアンが演じていたマルコム3兄弟の父親ハルについてのコメント。決して、ブライアンが実父について語っているわけではない。

7シーズンのち「マルコム in the Middle」は打ち切られた。それはブライアンにとって、人生最大の幸運の訪れだった。

「『マルコム in the Middle』が次シーズンも更新されていたら、僕は『ブレイキング・バッド』のパイロット版に参加することは出来なかった。もしそうだったなら、今頃このインタビューを受けているのは、僕じゃない誰かだったろう」

「マルコム in the Middle」から「ブレイキング・バッド」へ。ブライアンのコメディからシリアスなドラマへの大きな転身は世間を驚かせた。

「二つの役の間には大きな違いがあるよね。だけど共通点もある、ブリーフだ」

アリゾナの荒野にブリーフ姿でたたずむウォルター・ホワイトの姿は、「ブレイキング・バッド」の象徴の一つでもある。一方、それほど有名ではないが、「マルコム in the Middle」でも時折、ハルはブリーフ姿を披露していた。

「ハルにとって、彼がブリーフ姿になるというのは、まだ少年のような子どもじみた性格を表していたんだと思う。ウォルターにとっては、つまり彼はあの時、それだけミジメな男だったってことさ」

ミジメな男から“スター”になったブライアン、次にブリーフ姿を見せるときは、どんな意味を込めるのだろうか?


<「cbsnews.com」 7月9日付け>