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海外ドラマ最新レポート Vol.461  「ベター・コール・ソウル」のレイ・シーホーン 父の死後、歩み始めた女優の道

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ベター・コール・ソウル」シーズン5で最も株を上げたのは、レイ・シーホーンだろう。これまでも数々のTVシリーズにゲスト出演していたが、「ベター・コール・ソウル」以前はほぼ無名。ところが、このキム・ウェクスラー役で一気に知名度と信頼を得て、次回作はヴィンス・ギリガン(「ベター・コール・ソウル」「ブレイキング・バッド」クリエーター)が手がける新シリーズ主演だという。現在50歳。遅咲きのレイが演技の道へ進むことを決めたのは父の死がきっかけだったと、米紙のインタビューに明かしている。
 
海軍犯罪捜査局(現在のNCIS)の捜査員だった父の転勤に伴い、幼少期はバージニア州から日本、アリゾナ州など各地を転々とする生活だったというレイ。9歳でバージニア州に定住するも、一家での幸せな生活は長く続かず、両親が離婚。母はレイと姉を連れ父の住む家の近くに引っ越した。 この時の記憶を、レイは両親が夫婦として危機の状態にあったことに気づかず、傷心したと語る。そして同時に「ラブストーリーが終わってしまったような感覚だった」とも。
レイは当時から、独立心の強い子供だったという。それは、度重なる一家の引越で新しい環境に合わせなければならなかったこと、新しい友達を作ることに慣れていたのが理由だとか。離婚を経て、シングルマザーとしてたくましく生きる母親の姿にも強く影響を受けた。
 
絵画を学んでいたレイが大学一年生の時、父が亡くなった。「私たちは仲が良かったから、とても辛かった」と語る、その死が転機となった。 「父も母も私がどんな将来を夢見ようと自由にさせてくれました、むしろ何でも好きにしなさいと背中を押してくれました」 父はかつて「ボートを買って、釣具店を開きたかった」、そんな昔話をしてくれたことがあった。願いは叶わず、父は無念だったろうか、「私はそんな生き方はしない」とレイは心に誓った。 そしてレイはかねてから気になっていたダンスと演技のクラスをとることにした。レイは空想するのが好きで、ストーリーを書くのも得意だった。「ひそかに役者になって、自分のストーリーを演じることができたら最高だと思っていました」
 
自身を「当時TVに出ていた女優みたいなルックスではなかった」と冷静に分析。もしかして、それはレイが遅咲きだったことと関係があるかもしれない。
しかし、幸いなことに大学の演技コーチはレイの才能を見抜き、以後も良きアドバイザーとして支えてくれたという。卒業後もワシントンDCエリアの演劇シーンで活躍、NYやハリウッドから離れた地で、型にはまらず才能を磨いた。そして長い下積みを経て、「ベター・コール・ソウル」でその才能は世界中に知れ渡ることとなった。「ベター・コール・ソウル」も幕を閉じ、レイは次にどんな演技を見せてくれるのか。今もっとも見逃せない女優の一人であることは間違いない。
 
 
<「wsj.com」  4月19日>