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海外ドラマ最新レポート Vol.128 「STARTUP スタートアップ」の異色ヒロイン、オトマラ・マレロ 番組の細部へのこだわりに感心

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仮想通貨やダークネットなど、ITで広がる現代のテクノロジーとその闇を描く「STARTUP スタートアップ」。主演はアダム・ブロディ、マーティン・フリーマン、そして鍵となるIT技術者を演じる、異色のヒロインがオトマラ・マレロだ。
 
「STARTUP スタートアップ」では、最新のテクノロジーがテーマとなっているが、国際都市フロリダ州マイアミを舞台に人種・国籍・性別など“ダイバーシティ”も見どころの一つ。
 
オトマラは、地元マイアミ生まれ。空調会社を経営する父は、1980年、「Mariel boatlift」と呼ばれるキューバ・マリエル港からの難民として米国に移民した。専業主婦の母は、偽のパスポートで米国に入国したエクアドル人だ。
 
複雑なダイバーシティそれぞれにストーリーがある。これこそがリアルなマイアミだ。
 
米オンラインメディアのインタビューに答えた、オトマラは、自身が演じるイジー・モラレスをある意味、自分自身そのものだと言う。
 
「最初、イジー役のために“ヒスパニック系の女優”を探しているとだけ言われて、特別な人種は問われてなかったの。それから、イジーはマイアミ出身のキューバ系となり、最後にはハイアリアで生まれた女の子の設定になった。それを聞いて、『この子は私そのものだ』って思ったわ。私のちょっとしたスラングの使い方や態度が、イジーっぽく見せるのに役立ってるんじゃないかしら」
 
ハイアリアはマイアミ郊外の都市。人口の6割以上がキューバ系だ。野心あふれる、キューバ系移民の子イジーが生まれるにピッタリの街だろう。
 
まさにはまり役。そして、イジーは初めてつかんだ大役でもある。
 
「これは私にとって、すごく、すごく大きな役よ。『Ballers/ボウラーズ』で役をもらったけれど、台詞は全部カットされた。ジョナ・ヒルの映画『ウォー・ドッグス』にも出たけど、カットされちゃった。なのに、今、私は主役の一人として番組に出てるのよ! 皆に喜んでもらってるわ、やったね!って。これまでマイアミのローカルCMに出たり、台詞が一行しかない仕事をしたり、オーディションを受けまくったり、そんな努力が報われたと思う」
 
何よりオトマラが嬉しいのは、「STARTUP スタートアップ」が地元マイアミを舞台としていること。実際にはプエルトリコで撮影されてはいるものの、製作側の細かい演出には地元民として感心している。
 
「マイアミが舞台であることに常に注意を払っているのが素晴らしいと思う。特にキューバ文化に対しては、文句のつけようがないくらい。たとえば、私の父親(役)が料理を作るシーンがあったのだけど、ピカディージョにレーズンを入れたのよ。それがキューバ・スタイル! 細かい配慮がなされていると思ったわ。マイアミを舞台にしたドラマのほとんどは、きらびやかな海岸線と美しい女性を見せるだけ。だけど、マイアミにはそれだけじゃない、文化があるのよ」
 
文化や舞台へのこだわりは、内容へのこだわりにもつながるはず。リアルにこだわるから刺激も増す。「STARTUP スタートアップ」は、新しい世界を視聴者に見せてくれる。
 
 
<「miamiherald.com」 2016年9月2日>