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海外ドラマ最新レポート Vol.117 レイ・シーホーン、変わり者ばかり演じた若手時代へて「ベター・コール・ソウル」大抜擢

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「ベター・コール・ソウル」で弁護士のキム・ウェクスラーを演じているレイ・シーホーンは、今年のエミー賞ドラマ部門助演女優賞のノミネート確実と言われる演技派女優。若手時代からさまざまな役に挑戦しながら、注目を浴びる機会に恵まれなかった苦労人でもある。40歳を過ぎて抜擢された、「ベター・コール・ソウル」でようやく実力に人気が追いついたようだ。
 
演技派女優レイ・シーホーンの下積み時代、若手だった頃のオーディションについて米サイトで語っている。
 
豊かなブロンドの髪と大きな瞳が女優としての魅力を引き立てるレイだが、若手時代は意外にも“ヒロイン”としてはオーディションを受けることはほとんどなかったとか。
 
「私は(当時の)主演を演じる女優のようには見られてなかったの。ヒロインぽく見えなかったのね。だからいつも癖のある個性的な役を演じていたわ。若かったから、いろんな役に挑戦しなければならないことを嬉しいとは思えなかった。時には髪を短く刈り上げたり、真っ黒に染めたりもした。とにかく、ロマンチックなヒロインの役にキャストされることはなかったわね。変わった役ばかり、ドラック中毒だったり、イカレてるような役よ」
 
オーディションに呼ばれるのは、ヒロインの脇にいそうな、変人の友達だったり、同僚だったり。レイは想像力に磨きをかけ、さまざまな人格をオーディションで披露した。
 
やがて、主張が強すぎたレイの外見も、歳を取るにつれ、周囲の見方が変わってきた。いわゆる“キャリアウーマン”のようなイメージもついてきたのだ。
 
「だけど中身はそのままの、私なのよ。そこで自分に賭けてみたの、外見からのイメージをあえて外して演じてみようって」
 
幸い、時代もレイの考えに追いついてきた。
 
「テレビの世界も変わったのよね。私たちの番組(『ベター・コール・ソウル』)の主役の女性キム・ウェクスラーは、かつてテレビの主役にいそうな女性じゃなくなっていた。若い頃は変わった役ばかりでツラかったけれど、おかげで大好きな女優という仕事を深く掘り下げて考えることができたわ。素の私とは違う役ばかりで、自分の分身を作り上げなければならなかったし、人間には二面性、三面性があるのも分かった。それこそが、演じる楽しみだものね」
 
「ベター・コール・ソウル」で彼女を大抜擢した、3人のキャスティング・ディレクター、シャロン・ビアリー、シェリー・トーマス、ラッセル・スコット。役に最適の俳優をオーディションで選びだすのが彼女たちの仕事だ。全くオープンなオーディションもあれば、あらかじめ目星をつけた俳優たちを呼び出して行うオーディションがある。ベテランの3人は、以前からレイとは何度も違うオーディションで顔を合わしていたらしい。
 
「一度もキャストされたことはなかったけれど、これまでも彼女たちから、いろんな役のオーディションで呼ばれていたの。シリアスなドラマ、ダークなコメディ、軽いコメディ、その中間みたいな作品、とにかく何でも声を掛けられたわ。落とされてばかりだったけれど、彼女たちは私のありとあらゆる演技を見ていたわけよ。そこで『ベター・コール・ソウル』のオーディションにも呼ばれて、他のあまたの女優たちと一緒にオーディションを受けたの」
 
オーディションに呼び続けるのだから、彼女たちもレイの実力は分かっている。だから、『ベター・コール・ソウル』の時も当然レイに声を掛けたが、今回はいつもとは事情が違っていた。
 
「シャロンとシェリーが、最初から、これは私を役に選ぶためのオーディションだと言ってくれたの。この10年間、形にはならなかったけれど、いろいろなオーディションでの私を見てきたからだって。感激して泣いちゃったわ!」
 
空振りばかりのオーディションが、傑作ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」に続く「ベター・コール・ソウル」での主役キャラクターへの道を切り開いた。実質的に、オーディション前からキム・ウェクスラー役はレイにオファーされていたのだ。
 
「10年の努力が実ったんだと思ったわ。『ベター・コール・ソウル』のような、私の女優人生の中で最高の作品をつかんだのだもの。実際に出演した作品を見てもらったというより、落とされてばかりのオーディションでの演技を評価してもらえたのよ」
 
変わり者の役ばかりで嫌気がさしていた若手時代、そこから人間性の本質を学んだ中堅時代。そして主演級としての貫禄が伴った現在、女優としてすべての結晶が「ベター・コール・ソウル」に表れた。まだ縁のないエミー賞にノミネートされたら、嬉しいご褒美になるだろう。今年のエミー賞ノミネートは、7月16日に発表される。
 
 
<「backstage.com」 5月30日>