| 岸川 |
お待たせしました、谷口さん。谷口さんは「エンタープライズ」でスコット・バクラが演じるジョナサン・アーチャー役として参加されました。最初に「スタートレック」シリーズの主役だという話があったときのことは覚えていらっしゃいますか。 |
| 谷口 |
やはり突然のことでして。自然な流れで、リハーサルをしなくちゃいけないので、ビデオをいただきました。そこでアーチャーの顔を見ましたら、バクラさんって、僕、2度ほど別の長尺でやらしていただいていたんです。同じ顔だ。この顔ならやれるんじゃないか、と。バクラさんとは鼻のラインが似てるんです。
我々も顔でキャスティングされることがよくあります。もちろん、声でもあるんですが。バクラさんを2本くらいやったとき、あまり違和感がなかったんです。リハーサルの後、本番になったわけですが、松岡さんが今おっしゃったこととは逆に、テストを1回やったら「船長としてキツすぎる」と言われたんです。 |
| 岸川 |
同じ演出家の方ですよね。 |
| 谷口 |
そうです。引き続きですから。もっと包容力をもってみんなを統率してくれないかと言われたので、その後は注意しながら、優しい中に厳しさも持った船長を心がけてはいます。 |
| 岸川 |
歴代の船長の中では割と素の部分が多いというか、人間臭い感じはします。 |
| 谷口 |
そうですね。バクラさんが非常に自然な芝居をされているので、ある意味ではナチュラルにやりやすいというか、入り込みやすいですね。先ほどキツすぎると言われたのも、1作目がちょうど、異星人が侵入してきて、そのケガ人を送り届けるところから始まります。バルカン人の副長のトゥポルと一緒に送り届けるんですが、もうそこから激高しているんです。そういうことがあったものですから、どうしても非常にキツい表現になったということがありました。 |
| 岸川 |
ストーリーのほうでも、「どうして行っちゃいけないのか!」とバルカン大使に激高しながら言ってたしなめられる部分もありました。 |
| 谷口 |
そうです、そうです。ありました。 |
| 岸川 |
バルカン人があまり感情を出さないキャラクターなので、対比して余計に激高しているように見えてしまうのかもしれませんね。 |
| 谷口 |
そうです、そうです。 |
| 岸川 |
今、ちょうど第3シーズンが始まるわけですが、すでにアフレコは終了したのですか。 |
| 谷口 |
終わりました。 |
| 岸川 |
内容についてはこれからのお楽しみということなんですが、軽く触れると、第1・2は読み切りの、ちょっとのんびりした話が多かったのですが、第3シーズンは、いわゆる「DS9」の最終章にも近い、ひとつの大きなアクション的な流れにはなっています。 |
| 谷口 |
時間のことが出てきて、とんでもないところへ連れて行かれたりするようなことがありました。 |
| 岸川 |
出てくる宇宙人も多彩です。 |
| 谷口 |
多彩になってきて、驚く展開になっていきます。 |
| 岸川 |
谷口さんは「エンタープライズ」に参加される以前に、「宇宙大作戦」「新スタートレック」「ディープスペース・ナイン」「ヴォイジャー」のどれかをご覧になったことはありましたか。 |
| 谷口 |
何度かゲストで参加させているんです。麦人さん、玄田さん、松岡さんのところにそれぞれ数回出させていただいているので、若干はわかります。 |
| 岸川 |
でも、いざ主役で入って毎週やっていると、「こういう話、こういう世界観なんだ」といった感じで見えてくるものはありましたか。 |
| 谷口 |
こんなに船長あるいは艦長が単独でクルーを置いて外へ出かけていくのかなということを、我々声優仲間でいつも話しているんです。「船長、行きすぎ。外へ」って。 |
| 岸川 |
でも、カークのときもそうでしたよね。 |
| 矢島 |
そうでしたね(笑)。 |
| 岸川 |
そして、普通の船は船長が残って部下が行くものだということになって、上陸班という設定で細かくつくられたのが「新スタートレック」でした。だから、ピカードは割と降りていかず、ライカーやデータが行くようになっていました。 |
| 麦人 |
少ないですね。 |
| 岸川 |
玄田さんのシスコも割とそうですね。 |
| 玄田 |
そうですね。たまには出て行きますけどね。 |
| 岸川 |
ジェインウェイも割と艦にいて、行くのはトゥヴォックなんかが多いです。 |
| 松岡 |
そうですね。 |
| 岸川 |
その辺は「エンタープライズ」「宇宙大作戦」があって、船長がそういうことをやっちゃまずいんじゃないのということになって、24世紀で規則が変わったような感じもします。 |
| 谷口 |
そうなのかもしれませんね。 |
| 矢島 |
そうですね。我々は古典的なパターンなんです。 |
| 谷口 |
そうですね。 |
| 岸川 |
だから2人とも「船長」で、こちらは「艦長」という言い方なのではないでしょうか。同じ「captain」で階級も大佐なのですが、その辺で時代が違うという感じを出しているんだと思います。 |
| 谷口 |
そうですね。クルーを信頼していないわけではないのに、なぜか自分で出かけて行くという。 |
| 岸川 |
なぜでしょうね。 |
| 谷口 |
ねえ。それも命がけで。ほとんど命がけなんですよ。(一同笑) |
| 矢島 |
カークの場合ははっきりしていますよね。危険なものは全部自分が負わなければならないという使命感をしっかりと出しています。 |
| 谷口 |
確かにそれは今度のシリーズでもありました。やはり、私が行かないと問題解決にはならないということで、どうしても自分が出ていくということは言っていました。 |
| 岸川 |
責任感がすごく強いんでしょうね。 |
| 谷口 |
ええ。相当強いですね。以前のシリーズでは、船長あるいは艦長の少年時代や少女時代は出てきたんでしょうか。 |
| 岸川 |
例えばカークですと、少年時代の話ではないのですが、学生時代にフィネガンという先輩のいじめっ子がいて、それの幻影が出てくるという話がありました。(TOS第27話「おかしなおかしな遊園惑星」)ピカードも、士官学校の学生時代にケンカをして人工心臓になったとか。(TNG第42話「愚かなる欲望」第140話「運命の分かれ道」) |
| 麦人 |
忘れちゃったな……。吉水くんのときじゃないかな。 |
| 岸川 |
いろいろあります。例えば「エンタープライズ」では1話(ENT「夢への旅立ち パート1」)の冒頭で、アーチャーが少年として出てきて、お父さんと一緒にプラモデルをつくっていて、それを海岸で飛ばすシーンがあります。 |
| 谷口 |
そうなんです。 |
| 岸川 |
ああいうのはないですね。 |
| 谷口 |
そうですか。1話で驚いたのは、お父さんに「風を怖れるな」と言われて、エンタープライズが出発するとき、「風に向かって行け」と言うシーンがあります。それは非常に象徴的なシーンでした。非常に人間的な船長です。クルーの数も少ないんですよね。 |
| 岸川 |
そうですね。第3シーズンになって、外部から特定の目的を持ったチームが乗り込んできますが、第2シーズンまでは少ないですよね。 |
| 谷口 |
非常に少ないですよね。100人を切るクルーです。 |
| 岸川 |
船も小さいですから。 |
| 谷口 |
小さいですもんね。 |
| 岸川 |
麦人さんのエンタープライズD型、ギャラクシー級はものすごく大きいのですが、時代によってだんだん大きくなっていっているんです。 |
| 谷口 |
ワープ航法で船が壊れるのではないかという危惧をもちながら航行するのですが、私たちはちょうどワープ航法ができたばかりなので、それ以上出すと船が壊れるということを恐れながら行くのですが、そういう話は先の話にはないですね。 |
| 岸川 |
ないですね。「エンタープライズ」の第1話では、ワープでクリンゴンの星まで行きます。ふつうだったら練習して慣熟訓練をやってから船を慣らし運転して行くのに、時間がないからといきなりムチャするなあという感じで行ってしまいます。 |
| 谷口 |
いきなり本番ですね。 |
| 岸川 |
それは大変だと思いますね。 |
| 谷口 |
内田直哉さんが機関主任のトリップという役をやられています。この機関主任の言葉は、非常に専門用語ばかり出てくるものですから、内田直哉さんが非常に苦労されていました。普通のセリフでも彼は前後を逆に言う癖のある俳優さんなんです。(一同笑) |
| 谷口 |
この機関主任が本番で専門用語を逆に言ったりしてしまうんです。だから、みんなでこれは非常にウケていて、「機関主任がはっきりしてくれないから船がガタガタになるんじゃないか」ということを言ったりして笑いあっています。 |
| 岸川 |
そういうテイクが残っていたら、DVDに入っているとおもしろいですね。 |
| 谷口 |
NG集なんかに入れるとおもしろいですよね。 |
| 玄田 |
取っておけば、そんなのはいっぱいあるよね。笑えるものが。 |
| 松岡 |
「ヴォイジャー」はワープ10をやったんです。(VOY第31話「限界速度ワープ10」)パリスとジェインウェイがワープ10をして、サンショウウオに……。なんであれはサンショウウオなんですか。 |
| 岸川 |
松岡さんは前にもその話をおっしゃっていましたが、よっぽど印象深いんですね。 |
| 松岡 |
どうも気に入っていますね、あのサンショウウオ。子どもまでいてね。あのときも、ワープのときは「ワープ6(シックス)」とか「ワープ7(セブン)」と、あてるときに英語で言うんです。たしかあのとき、「ワープ9.9」「ワープ9.95」というのがあったんです。ずっと言っていて、「ワープ7(セブン)」「ワープ8(エイト)」と言っていって、「ワープ9.9」だけどういうわけか「きゅうてんきゅう」と日本語なんです(笑)。 |
| 岸川 |
そういうことはよくわりますよね。 |
| 松岡 |
どうしても英語で言うとこぼれちゃう。 |
| 岸川 |
気にはならないんだけど、後で考えるとかなり変だとか。 |
| 松岡 |
変ですよね。たしかあのままオンエアになっていると思うんですけれど。 |
| 岸川 |
だから、例えばポイントナニナニととか「7.0(セブン・ポイント・ゼロ)」みたいな言い方も、矢島さんのころは「宇宙暦4.73(よんてんななさん)」というように「てん」という言い方をしていました。「新スタートレック」も「てん」ですが、「ポイント」という言い方をします。頭の中で算用数字なんかがいろいろ並ぶんだけど、よくわからない。聞いているこちらも、日付と時間を言っているのだろうけれど、宇宙暦はよくわからないと思いながら昔は見ていました。 |
| 松岡 |
難しい言葉がいっぱい出てくるから(笑)。 |
| 岸川 |
「エンタープライズ」は今までの「スタートレック」のシリーズに比べて、シャワーシーンのような、ヤングアダルトサービスシーンが多いような気がします。 |
| 谷口 |
トゥポルのシャワーのシーンとか、背中からなのですが、相当目を楽しませるシーンがいっぱい出てきます。これまでにない映像ですよね。 |
| 岸川 |
ホシが通風口から降りてくると上着が脱げてしまって隠すようなシーンもあります。あれは明らかに作劇的には必要ないんだけれど、何となくサービスで入っている感じはします。 |
| 谷口 |
大作ものについてくるB級映画に、よく「このシーンはいらないだろう」というきわどいシーンがわざとついてくるものがあります。あれはそれと全く似たところがあります。(一同笑) |
| 岸川 |
「DS9」にはそういうシーンは全然なかったですもんね。 |
| 玄田 |
一つ挙げれば、ウォーフとダックスがちょっと抱き合うシーンで、ダックスのまだらなのがずーっとあるんだけど、これがどこまでつながってるのか、僕らは興味津々で見てたんだけど、それはウォーフだけが知っている。そういった恋愛や、オドーとキラの恋愛とか。なかなか大人の恋でよかったですよね。際どいところはなかったですけれども、じっくりここまで恋愛というものを考えたのは、この作品でした。 |