全米視聴率ナンバーワン!
卓抜した観察眼で人の心を読む“メンタリスト”、パトリック・ジェーンの活躍を描く正統派ミステリー
もし僕がその答えを知ってたら、きっとたくさんの人が知りたがるだろうね。一般的にエンターテインメントの世界で、何がうまくいって何がうまくいかないかを予想するのはすごく難しいと思う。先のことを予測することが皮肉な結果を生むこともあるし、逆にたくさんの視聴者を惹きつけることもある。僕がすごいなと思ったのは、ドラマが色んな言語で放送されてること。様々な文化の国で、たくさんの人に楽しんでもらえるなんて、本当にすばらしいことだよ。
唯一僕が(ドラマの人気の理由について)言えるとしたら、前半と中盤、後半で構成されたストーリーと、安定感があって何かしら悲しみを抱えてるキャラクターっていうアイディアがよかったんじゃないかな。
そうだな…。特に台本を読んで驚くことはないかな。ただ、挑戦を受ける気持ちで、「よし。こういうことを求められてるってことか。これをどうやって自分なりに演じようかな。この部分は深い意味があるのか、それともキャラクターの新しい要素を引き出す、別のドアを開けることになるのかどっちだろう。もしくは、脚本を自分なりに解釈して、新たな面を引き出すことはできるかな」みたいに考える。テレビドラマに出てくるユニークなキャラクターを演じるカギは、演技の幅を狭めないことだと思う。いつでも違う逃げ道をどこかに作っておく方がいいんだ。
ああ、それはもちろんある。キャラクターについては、奥深くと言うよりはおおまかに理解しているんだ。だから、ブルーノから 「これはどう思う?これは?こっちは?」って聞かれるのが好きだね。たいてい自分では考えもしないようなことだから、おもしろいんだ。ブルーノの決断によって、僕もキャラクターについて新しい一面を想像することができる。そこはいつもおもしろいなと思ってる。ただ、バランスをとらなきゃいけない。あまり変化しすぎると、「いつも見てたドラマはどこ行っちゃったんだ?」って視聴者に思われちゃうからね。
少しだけ学んだかな。確かにシーズン1の時はその部分に焦点が当てられることは多かった。でも、彼が“メンタリスト”であり、他の人よりも正確に物事を見ることができる、というキャラクターのコンセプトが視聴者に理解されてからは、それも少し減ったよね。今も時々は巧妙な技を使ったりして、自分の必要な情報を手に入れようとするけど。でも、いつもジェーンがどうして他の人を観察するのか、どうやってそれをやっているのか自分でも考えてきたんだ。だから、もし今君が何か言ったら、ぜひやってみたいな。君がなぜその質問をするに至ったのか、情報をつなぎ合わせるんだ。もしかして、僕の後ろに何か書いてあったのかな?って考えたり。だから、メンタリストに近い考え方は常にするかもしれないけど、僕はメンタリストではない。これからもメンタリストになることはないね。僕にはそういった精神的なスタミナはないんだ。
シーズン3では、ジェーンのキャラクターは少し冷酷な感じになると思う。時々間違いを犯したりして、少し不安定なんだ。それに、シーズン2で起きた出来事のせいで、よりリスキーな行動をとるようになる。亀裂があらわになっていくよ。
シーズン2の最終回で、ウィリアム・ブレイクの詩(The Tiger)が出てきた。それは、ジェーンがレッド・ジョンについて知る唯一の情報なんだ。ここが視聴者しか知らない、2人のつながりだよね。そこをスタートに、ある事が明らかになって、おもしろい展開が待ってる。意外なつながりが見えてくるんだ。
きっと、かなりの数の殺人事件が起こるんじゃないかな。いつも通りだよ。僕たちのドラマって、中心にあるのは事件そのものではなくて、どうやってその事件を解決していくかだと思うんだ。その辺が他のドラマとは違うところだよね。それに、色んな場面でフラッシュバックシーンが入ってたり、ユーモアがあったりする。でも、このドラマはあくまでも犯罪捜査に焦点を当てたドラマなんだけど、僕たちはそこから足を一歩外に踏み出してる。でも、まずは形がしっかりしていないと、他にもたくさんの犯罪捜査モノのドラマがあるから、ごっちゃになってしまう。だから初めにドラマの枠組みをきちんと作らなきゃいけない。それができているから、僕たちのドラマは今も続いてるんだと思う。回を重ねるごとに、それが最善だってことが分かってきたんだ。
視聴者が犯罪ドラマが好きな理由は、僕が思うに、前半と中盤、後半に分かれたベーシックなストーリーのおかげだと思う。毎回一話の中で事が解決される。それに色々な意味で、僕のキャラクターにはシーズンを通してつながりがある。それに、ドラマの中には冗談を言ったりする“遊び”部分も少しあるから、楽しんでもらえるんだと思うよ。今はものすごくごまかしのない犯罪捜査モノがたくさんあるからね。このドラマにもリアルな部分はあるけど、遊びもある。特に僕は(笑)。他の人は違うかもしれないけど。それに、人間の本質のおもしろさがちょうどいいバランスで描かれてる。最近では犯罪捜査もより科学的になってきていて、より人の心を理解したり、何を隠しているのかを読み取ったりする傾向にあるんだ。
僕にとって、監督業と俳優業を比べてみると、監督業の方が断然達成感がある。よりたくさん越えるべき壁があるし、問題も山ほど出てくる。それが楽しいんだ。でも…10年後に同じ質問をしてみて。また違う答えになるかもしれないから。でも、自分が出演してきたドラマで監督をする喜びは大きい。最初からずっとドラマのことをたくさん考えてきたわけだからね。自問自答したり挑戦したり、それこそ休む暇もないくらいにさ。(製作総指揮の)ブルーノ・ヘラーには自分の意見をちゃんと言えるし、仕事をする上で本当にすばらしい関係が築けてるよ。僕たちは本当に二人三脚で仕事をしてる。僕はブルーノをクリエイティブな面で信頼しているし、彼も僕のクリエイティブな面を信頼してくれてる。彼が脚本を書いたら、そこからは一緒に仕事をするから、自分の思ってることははっきりと伝えるよ。「ドラマのトーンはこんな感じにしたい」とか「ユーモアとドラマのバランスをうまくとりたい」ってね。ブルーノは僕のドラマに対する“ビジョン”に100%協力的。それは他のドラマとは少し違っていて、しかもどう撮りたいかっていうものに対しても僕は結構はっきりとした考えを持ってるんだ。監督をやるなら必要なことだと思うけどね。とにかく、すごく楽しかったから、またやりたいと思ってる。
パトリック・ジェーンのキャラクターは、いろいろな人物の混合体だと考えているんだ。第1話の役作りをしている時によく思い浮かべていたのは、「道化師」(イタリアのオペラ)なんだ。チャップリンの演じる放浪者のこともよく考えていた。あとは、ピーター・セラーズとかね。ホームズはね、常にアシスタント的な人間やパートナーが居るだろう。そういう相手が居ることによって、彼がどんな事をどのように考えているのかを語ることができる。「THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル」だって、僕が演じるジェーンが何をしているかということを説明する相手になるリスボンやチョウみたいな人間たちが居なきゃ成立しないんだよね。コロンボと比較されるというのも良く解るよ。「刑事コロンボ」が放映されていた時からずいぶん年月が経っているということでは、このドラマは時代に逆行しているところがあるかもしれないね。というのは、このドラマでは主役が個性的な人物だから。最近の犯罪ドラマでは、主役はおそろしく真面目な人間が多い。ユニークで個性的な人間は、鑑識の人間たちだったりするんだよ。つまり、そういう個性派は脇役にまわることが多い。主役はあくまでストイックで真面目で英雄的な人物でね。僕たちのドラマは、テクノロジーをあまり使わないという点でも他の刑事ドラマとは対照的だ。ジェーンは銃を持ったタフガイなんかじゃない。彼は肉体的な点では臆病で、暴力を嫌う。でも、精神的な面では何も恐れていない。彼は、銃や科学捜査無しで英雄的な行動を取るんだ。コロンボも、好感が持てるような人間で、相手の敵意を消し、相手に自分が優位に立っているかのように思わせる手段を使う。そうやって、犯人の尻尾を捕まえるわけだ。彼は不器用でヘマばかりしでかしているように見えるものだから、相手は「コイツは絶対、この事件を解決など出来はしない」と馬鹿にするけれど、実は相手を心理的にジワジワと追いつめていく。そういう点で、ジェーンと比較されるのは解るね。このドラマは、科学の代わりに人間の行動から真実を突き止めるという古風な作品なんだよ。
僕は技術的に演技を学んだ俳優じゃない。20年前にひょんなことで俳優になったから、心理主義の研究や、相手との親密さを作り出したり相手の心を読んだりする発想、あるい何かへの糸口を見つける情報を得るために誇張された発言を利用したりすることは、演技に対する僕のアプローチとそう違ってはいないんだ。例えば撮影現場に行って誰かに会う時、「こんにちは。今日、あなたは僕の父親を演じて、僕たちはこれこれこういうシーンを演じて、こういう過去があったりするんですよね」と話しかける。ということで、15分とか20分の間に、親密な関係を構築して、相手が何を考えているか読まなければならないんだ。僕にとっては、音の無い瞬間や相手のエネルギーを汲み取るのが演技の中で大きな部分を占めている。完全に正直に話すということは非常に稀だし、必ずしも考えている通りの事を口に出して言うとは限らないからね。
このドラマはいろいろなレベルで楽しめると思う。俳優として僕がこのドラマに興味を惹かれるところは、このドラマの感情的な中核を占める部分と登場人物の履歴なんだけれど、そういうところは充分描ききれていないと思う。レッド・ジョンの一連の話は人の心をつかんで離さないところがあるとは思うが、僕らは、レッド・ジョンの話ともっと軽い一話完結型の娯楽性の強い話とを組み合わせてドラマを構成している。肝心なことは、僕たちは娯楽性の強い番組を作ろうとしているのであって、それは必ずしもレッド・ジョンの話だけを追うのではなくて、視聴者たちが親近感を抱くようになったジェーンを興味深い状況に置くようなエピソードと組み合わせていくことになるんじゃないかと思っている。僕は、ジェーンをちょっと風変わりな状況に置いてみたいんだ.ジェーンに初めて会って、彼のことを全く知らない人たちに囲まれているような状況は、新鮮だと思うから。視聴者たちも、皆、ジェーンのことを知っているから、そういう状況を観て楽しめるんじゃないかな。リスボン、チョウ、リグスビー、ヴァン・ペルトたちは、ジェーンにウンザリしているところがあるけれど、彼のことを知らない人たちは、彼のやっていることには皆目見当もつかない状態になるからね。
海外の視聴者にも楽しんでもらえるのは、娯楽性を最優先させているからだと思う。恐ろしく真面目なドラマとかではなく、「楽しんでもらえる番組にしよう」という姿勢で作っているからね。愛やセックスは国際語であると言われているけど、僕はユーモアも国を超えて理解してもらえるものだと思っている。可笑しくて楽しいものは、どんな言語でも可笑しくて楽しいものなんだよ。
今さらそう言われてもねえ。時すでに遅かりし、だよ。僕はもう40歳で、既婚で3人の子供が居るんだもの(笑)。でも、40歳という年齢を実感するような時にそのようなお褒めの言葉をもらうのは嬉しいよ。僕の妻に関して言えば、「最もセクシーな男性」リストに載ろうが載るまいが、僕に対しての批判的な態度は変わらない。「ねえ、あなた〜、こっちいらっしゃいよ。セクシーな男性リストの3番目にランキングされたんですもの」なあんて言うわけないから(笑)。娘なんかは、全く理解できないみたいだし。彼女は、僕がリストに載ったなんて馬鹿げていると思っているんだ。娘は16歳半だから、「皆、こういうのがセクシーだと思ってるんだー。どーでもいいけどさ、パパ」なんて感じだったよ(笑)。
(2010年3月)
初めに台本を読んだ僕の妻が、「すごくよく書けてる。まさにCBSの犯罪ドラマね。男性のキャラクターたちよりも女性のキャラクターの方がよく書けてると思う」って言ってたんだ。「本当?見せて」って言って、すぐに僕も読んでみたんだけど、まさに彼女の言う通りだった。台本を読んでクリエイターのブルーノ・ヘラーとすぐ電話で話をした。そのとき僕はオーストラリアにいたんだ。ブルーノはすごく冷静な判断力を持った人だよね。
控えめなんだけど、それがすぐに伝わってきた。ブルーノは、台本にない細かい部分を僕が自由に加えられるようにしてくれたんだ。ストーリーを変えるということではないけど、ある程度僕が好きなように演じることができるようにしてくれた。
とにかく楽しそうだったから、すごくこの人物を演じてみたいと思った。確かに、難しい役だけどね。陽気な性格の裏に、とても辛い過去を抱えてる人物だから。
ジェーンは確かに複雑なキャラクターだと思う。予想できない行動をするけど、自分の降りかかった悲劇に、何とか立ち向かってる。苦しみを抱えたキャラクターだよね。
だから、僕は必ずしも彼はナルシストではないと思うな。ただ、自己中心的だと思われてもいいと思ってるだけで。
演じるという点では、深みのないキャラクターを演じるよりは、複雑な役の方が僕にとっては楽なんだ。誰だって人に見せるための外の顔を持ってる。虚勢を張っているって言うのかな。
でもその虚勢の下には、もっと内面的でプライベートな、人には見せない部分がある。演技をするときは、そういう深みがある役を演じるのが楽しい。・・・それか、僕の顔がいつも苦しんでるように見えるからこういう役が多いのかもしれない(笑)。
ジェーンを演じる時は、パリアッチっていう、涙を流すピエロをイメージして役作りしたんだ。ジェーンが経験した、本当に辛い過去は皮肉にも彼自身と切っても切れない関係なんだよ。
実際に演じ始めると、それぞれの登場人物たちに命が吹き込まれる。撮影がスタートしたのは僕がオーストラリアからアメリカに着いた2日後だったから、あっという間の出来事だったな。気が付いたら撮影現場にいて、撮影が始まってたって感じだよ。
「THE MENTALIST」は今までの犯罪ドラマとは違うんだ。もちろん、視聴者にとって親しみ易いドラマではあると思う。犯罪を扱ってるという点で、やっぱり「シャーロック・ホームズ」と同じ要素があるし。違うのは、メンタリストとしての観察能力に長けた男が主人公だというところ。
ユーモアがあって面白いんだけど、組織のルールに従おうという気持ちが全くない、そんな男が登場してくる。だから、バランスが良いんだと思う。
僕たちにとってなじみがある犯罪ドラマと、新しいタイプの主人公という2つのバランスがね。ジェーンのことをだんだんと理解してもらえて、視聴者の人たちが「あ、まずいぞジェーン」とか、「こういう時のジェーンおもしろくて好きだな」とか思ってくれたら嬉しい。・・・絶妙なバランスなんだ。
「刑事コロンボ」や「刑事コジャック」、「ロックフォードの事件メモ」、「ドクター刑事クインシー」とかに似ている部分と併せて、個性の強い登場人物たちが出てくる犯罪ドラマなんだ。
犯罪ドラマに、犯罪はつきもので、起きる犯罪は別段新しくはなくなじみのあるものかもしれない。けれど、ジェーンというキャラクターが斬新なんだ。ジェーンは全くの予測不能なんだ。
どんなシーンでも、ジェーンは予想外の動きをするから、演じるのが楽しいんだ。例えば取調室のシーンでもそう。取調べのシーンなんて、視聴者はもう何度も見たことがあるようなシーンだと思うんだ。机をはさんで、男が座っているっていうね。
そういうシーンでもジェーンはすごく自由。だから、ライターたちが、ジェーンがやりそうな別のシナリオを考案してくれたりするんだ。
このドラマは単なる犯罪ドラマではなくて、ユーモアやドラマチックなストーリーと組み合わさったドラマなんだ。
それが事件や登場人物にうまくからんでいく。
霊能者が持っているのが“秘めた力”なら、メンタリストが持っているのは“磨かれたスキルと技術”だね。
メンタリストは霊能者とは違う。霊能者を信じる信じないとは関係なく、もともと能力を持ってる人だと思う。でもメンタリストはスキルや技術を持ってる人。テクニックなんだ。
みんな、僕だってその技術を身につけることができる。言葉を操る力も、1つのスキルだから、誰でも習得できるもの。パワーじゃない。僕がメンタリストになる可能性はあるし、みんなにもある。・・・ただ僕には素質はないと思うけどね。
ロケット工学者になれないのと同じだよ。メンタリストをテレビで演じることはできるけれど。メンタリストとして仕事ができるとは思えないね。だからメンタリストとして成功している人たちのことは、すごく尊敬してる。
演じる上で、YouTubeを見たりして、たくさんリサーチしたよ。ブルーノ(・ヘラー、クリエイター)からも、アドバイスをもらったしね。「この男をチェックしろ!」って何人も霊能者を教えてもらった。それで色々ひらめいたんだ。
YouTubeの映像がすごく面白くて、家族を呼んでみんなで一日中一緒に映像を見てたこともある。夢中になったんだ。僕は、どんなトリックが使われているかよりも、彼らがどうやってトリックを演出しているかに釘付けになったよ。
パフォーマンスとして見てみると、ショービジネスと通じるものがある。他人の情報を、本当にうまく引き出す。彼らは受身のように見えるけど、実は積極的に自分の思っている方へと彼らを誘導していくんだ。
今その質問をされて、一番先に頭に浮かんだ人がいるんだけど、やっぱり怖くて知りたくないかな。
考えるだけで怖い。だから名前は挙げないでおくよ。でも、妻の考えてることがある程度分かったら便利だろうなとは思う。クリスマスや誕生日の買い物をする時とかね。それに子供たちも。
10代の娘がいるから、彼女が何を考えてるかは知りたいね。
娘もそう思うことはあるかもしれないけど。
テレビの仕事で一番大変なのは、ペースを維持していくこと。その日の決められた仕事をこなすことはできても、そこに突然他の仕事が入ってきたり、自分の演じるシーンがいつもよりも大変なシーンだったりすると、そのバランスを取るのが大変なんだ。
タイミングが悪いと全てが重なるって、突然増えた仕事量に圧倒される。乗り切れるのかどうか不安に思っている間に、時間はどんどん過ぎて行くしね。
それ以外は、撮影現場にいるのも大好きだし、スタッフと一緒に何かを作っていくプロセスも好きだね。共演者と一緒の仕事もすごく楽しい。
すごくハッピーだよ。テレビの仕事のスピードも好きなんだ。もちろんすごく忙しいし、常に何かを考えなきゃいけないんだけど、それも気に入ってる。映画の仕事は演技にかけられる時間がたっぷりあるから、テレビのペースに慣れてしまうと、映画の仕事に馴染むのが結構難しいんだ。
実は僕は「Xファイル」を見てないんだ。世界中で「Xファイル」を見てないのは多分僕一人かもしれないね。後悔してるよ。でも、ロビン(・タニー)とは今回共演する前からの知り合いなんだ。一緒に何度も練習したよ。
2人はまるで兄と妹みたいでもあるし、時には恋愛対象になるかもしれないし、彼女が僕に対して母親のように接したり、こっちも父親のような気持ちで彼女に接したりする。2人のシーンを演じるのは、すごく楽しい。
ロビン(リズボン役)には僕をからかうネタを時々提供してあげないとね。だからこれもその1つ。ネタを提供できて光栄だよ。
(はにかみまくって)選ばれたのは・・・ま、そうだね・・・楽しいね。でも娘が恥ずかしいって。
ブルーノ・ヘラー:
うん、そのバランスを取るのはなかなか難しいんだよね。その時の視聴者によってレッド・ジョンのエピソードをどれだけ観たいと思っているかというのが違うから、完全に適切なバランスを見いだすのは無理なんじゃないかと思う。普段のエピソードは、レッド・ジョンのエピソードよりもっとずっと軽妙で楽しいけど、レッド・ジョンの側面はこの番組の最強の部分なんだ。レッド・ジョンの話は、登場人物たちを現実の世界にしっかりとつなぎ止めておくような役割を果たしているから。でも、毎週のようにレッド・ジョンの話になったら、暗くて気味の悪いだけのドラマになってしまうだろう。だから、生と死のバランスが肝要なんだよ。
クリス・ロング:
視聴者がレッド・ジョンが登場するエピソードをもっと観たいというのは興味深いことだと思うけれど、そうするとドラマのトーンが暗くなって、サイモンの持ち味である楽しい部分が出せにくくなるんだよね。だから、ブルーノも言っていたようにレッド・ジョンのエピソードでは、暗さと軽妙さのバランスを取るのがとても難しくなる。
ヘラー:
「軽めのドラマ」と呼ばれる際、そこにはちょっと軽視するような含みがあると同時に、「軽めのドラマ」は俳優にとってより簡単なドラマだと思われがちなところもある。でも、実際には、軽妙なドラマを演じる際は、或る一定のトーンを保つよう常に気をつけていなければならないから、俳優にとっては、シリアルキラーが続々と出て来るようなドラマより、「軽めのドラマ」を演じる方がずっと難しいんだよ。
そして、サイモンには、そういう資質があると思ったんだ。彼は、ケイリー・グラント風の魅力があると思うんだけど、そういう魅力を出すのは容易なことではないんだ。実は、彼の演技は非常に技巧的なもので、毎週、すごく努力して演じている。観れば判るように、彼は人と反対の行動を取る人間でもある。彼には底の方に暗い衝動のようなものがある。彼は誠実で毅然とした人間なので、ジェーンのキャラに性格的な2面性を持たせることができるんだ。個人的に、僕は、常に軽妙さの底に潜んでいる妥協しない厳しさが見える瞬間が好きだ。それが垣間見える時は、素敵な冷ややかさがある。
ヘラー:
その通りだよ。僕たちはサイモンをキャストすることができて、素晴らしくラッキーだった。この番組の成功は、サイモンと、彼が素晴らしい俳優であると同時に素晴らしいエンターテイナーであるという事実に負うところが大きいと思う。彼は、自分の演技と共にストーリーや、自分がどのようにスクリーンに映るかということについて、非常に鋭い直感を持っている。だから、僕は、彼の言うことには真剣に耳を傾けて、パトリック・ジェーンがどのように成長し、彼がどのような言動を取るかについては、彼とコラボすることが多いんだ。そうしないのは愚かなことだからね。TV界で活躍していて視聴者を楽しませる人たちも多いけど、サイモンは本物のTVスターだと思う。彼にはTVのスクリーンで際立つカリスマがある。視聴者たちは彼を観たいと思うんだ。
ヘラー:
クリス(・ロング)は、撮影現場でいつもサイモンの近くに居なければならないんだよ。というのは、彼は常に何かアイディアを考えついたり、いろいろなやり方を思いついたりするから。特に最初の段階で、サイモンが主役になり、彼が演技するのを観るやいなや、主人公は、僕が考えていたよりももっとずっとチャーミングでフットワークが軽く、楽しげな人間になった。パトリック・ジェーンはサイモンによって人物像が確立した。それはひとえにサイモンの魅力だと思う。彼が部屋に入って来ると、皆が微笑むんだ。彼はハンサムでチャーミングだからね。サイモンには確実にそういう魅力があるし、犯罪の話に暗い性格の登場人物を組み合わせるなんて馬鹿げているしね。それと、このドラマが成功しているのは、俳優としてのサイモン・ベイカーの本質をちゃんと観たことのある人が居なかったからなのだと思う。彼の演技の断片は観たことがあっても、彼の持ち味を活かした大きな役ではなく、陰気な役だったり、制限の大きい役だったりしたから。このドラマで、サイモンは自分の魅力を開花させることができたんだよ。
ロング:
サイモンは自分が演じている役が大好きなんじゃないかな。僕は本当にそう思う。彼は、毎日、ここにやって来て、自分の役を出来る限り楽しく、素晴らしく演じようとしている。だから、彼は常に興味津々な状態だし、いつも積極的だ。パトリック・ジェーンはサイモンの所有物みたいなものだからね。
ヘラー:
そうだね。そこなんだよ。同じような状態になる俳優たちは多い。役が自分の所有物のようになると、独占欲が出て彼らの内面の何かを表現するということになる。でもサイモンはとても寛大な俳優だ。非常に保守的といってもいい。彼は、「どうやったら本物らしく見えるか?」と考える代わりに、「これは視聴者にどう受け止められるだろうか?」と考える。本物らしく見せようとする俳優の方が多いけれど、最適なやり方はカメラに向かって演技をすること、つまり、視聴者を頭に入れて演技することなんだ。そうやって、彼は視聴者をドラマの世界に惹き込む。気味悪くて暗い内容でも、彼は視聴者をその世界に惹き込もうとする。彼は、それが自分の仕事だと考えているからだ。だからこそ、彼のために脚本を書いて、彼と一緒に仕事をするのはとても楽しいんだ。彼は、僕たちがしていることのさらに先のことをしようとするから。
ヘラー:
僕たち二人ともイギリス人だから、イギリスのドラマにルーツがあるに違いないとは思うよ。でも、アメリカのこの業界で仕事をするようになってから長いのも事実だから、そういう意識はあまり無いね。僕たちはとにかく、アメリカのTV番組の主流に沿ったドラマを作っているに過ぎない。
ロング:
撮影の際、僕たちは、カリフォルニアがいかに美しい場所であるということを思い知らされる。今朝もマリブに行ったんだけど、その美しさにはいつも感嘆させられる。僕たちは常に、番組の中でそういうカリフォルニアのシーンを多く入れようとしているんだ。
ヘラー:
そうだね。でも、僕は、このドラマが世界中のどこでも成功するような番組にしたいと思っている。アメリカやイギリスだけじゃなくて、ルーマニアやオーストラリア、中国などでも、広く観られる番組にしたいんだ。できるだけ大勢の視聴者に楽しんでもらえるよう、特定の視聴者を意識しないで作っている。素晴らしい番組なのに、アメリカの文化に特定し過ぎているばかりに海外では成功しない番組がたくさんあるからね。僕たちは、アメリカ人以外でも理解できて楽しめる番組を作ろうとしているんだよ。
ヘラー:
そうだね。探偵物の番組は多かれ少なかれ全てシャーロック・ホームズを基盤にしていると思う。「CSI」のような技術を駆使して犯罪を解決していくようなドラマは違うけれど、賢い登場人物が周囲の他の人間よりもより多くの事を知っている、といったドラマはシャーロック・ホームズと同じだ。脚本家たちだって、コナン・ドイルから盗作しているという事実を隠蔽しようとしているんだ。(笑)
ロング:
あと、ちょっと「刑事コロンボ」的なところもあるよね。
ヘラー:
そうだね。コロンボだってホームズだけど、ただ、帰り際に「最後にもう1つだけ」と付け加えるわけだ。(笑)
ロング:
ブルーノはクリエイター兼脚本家チームのリーダーで、僕は演出とプロダクションの方を担当しているけど、仕事を分けてはいないんだ。
ヘラー:
そう。いつも2人で協力し合っている。僕たちは、ポストプロダクションの仕事は一緒に行なっているし。僕は番組運営の担当ということになっているけれど、実際に毎日、番組を運営しているのはクリスだしね。
ヘラー:
TV番組の製作は全てがすごく速く進むんだ。1つのエピソードを2週間で作るからね。まるで早指しチェスをしているみたいに。とにかく駒の進め方が全て正しいことを祈るしかないんだ。やり直す時間は無いから。撮り直しも出来ない。「あのさ、これって上手くいかないみたいだ」なんてことは言えないんだ。まあまあの出来の脚本だったとしても、何とか上手く作るしかない。だから、優れた俳優が必要なんだよね。監督も優秀な人が必要になる。上手く作り上げるためには、毎日がそういうバランスを取りながらの綱渡り状態なんだ。だから、1日めに考えていた素晴らしいアイディアが8日めに違うアイディアに変わっていたということはないんだ。振り返らずに前進あるのみだからね。
ロング:
ただ、製作全体のプロセスはもっと長い。1つのエピソードの脚本を完成させるにはだいたい2ヶ月ぐらいかかるんだ。だからブルーノと僕は、いつも6つか7つのエピソードを同時進行させて仕事しているんだよ。
(2010年3月)
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