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池田憲章の海外TVシリーズ 検証ファイルSPECIAL ミステリーゾーン 夏の傑作選1〜4 解説:池田憲章

夏の暑さを吹きとばす身も凍るSFホラー、永遠に暗闇が続くかと思われる悪夢のようなサイコ・ホラー、不気味な不条理ストーリー、ユーモア満点のファンタジーとSFテレビ史上に残るドラマ派の秀作「ミステリー・ゾーン」(1959〜64)の中から選りすぐりの傑作をセレクション。多彩なホラー・タッチの魅力を楽しんでほしい。作品をよりおもしろく見るための作品ガイドを、ホームページで検証ファイルしてみよう。
池田 憲章

2003年7月放送

【傑作選1】
60分版#03「海底の墳墓」
30分版#82「生きている仮面」
30分版#16「強いぞディングル君」

【傑作選2】
60分版#12「暗闇の男」出演:デニス・ホッパー
30分版#84「人形は囁く」
30分版#22「火星人は誰だ」

【傑作選3】
30分版#44「真夜中の遊戯」
30分版#31「子供の世界」
30分版#61「2万フィートの戦慄」
30分版#12「遠来の客」

【傑作選4】
60分版#02「物云わぬ少女」
30分版#87「最後の支配者」
30分版#23「無用な男」

【傑作選 1】

「海底の墳墓」

脚本:ロッド・サーリング監督:ペリー・ラファティ
アメリカ海軍の駆逐艦が遭遇する海底から響く打撃音。海底を調査すると、それは20年前に沈んだアメリカ軍の潜水艦だった。誰が中にいるのか?!そして、ベル甲板長は、不思議な幻影を見始める。海底の潜水艦は彼が20年前に乗っていて、沈没時に脱出した潜水艦だったのだ。「死んだ仲間が俺を呼んでいるんだ…」ベルは叫ぶのだが…。
「ミステリー・ゾーン」の第4シーズンは、他シーズンのように1話30分ではなく、1話1時間で制作されています。そのためにスケール・アップして、駆逐艦や潜水艦の水中調査シーン、セットではないロケーション撮影も見ごたえある海洋ホラー作品となっています。番組の企画、製作者であるロッド・サーリングが自ら脚本を書いた現代の幽霊船を描いたもので、海底から響いてくる打撃音を誰がたたいているのかというサウンドをうまく使った恐怖は圧巻です。

「生きている仮面」

脚本:ロッド・サーリング監督:アイダ・ルピノ
年老いた百万長者ジェイソン・フォスターに死期が迫っていた。遺産目あてで集まってくる強欲な家族たち。街はカーニバルの時期だ。ジェイソンは遺産をやるかわりに彼が世界中から集めた仮面を家族につけさせる。今晩それをつければ遺産を分ける約束で、家族は仮面をつけるのだが…。ロッド・サーリングが描くホラーの代表作、息詰まるクライマックスは必見。「ミステリー・ゾーン」のドラマ派のタッチが見事で、女優出身のアイダ・ルピノ監督の描く役者のキャラクター表現が楽しめる。

「強いぞディングル君」

脚本:ロッド・サーリング監督:バック・ホートン
さえないセールスマンのディングル。気弱な彼を火星人が実験材料に選んだ。突然300倍の力を彼に与えたのだ。ディングル君の見せるスーパーパワーは大評判。テレビ局はくるわ、大人気になるわの大騒ぎだ。ディングル君を演じるのは、映画「ロッキー」の名トレーナー役で有名な名脇役俳優は、バージェス・メレディス。彼はロッド・サ−リングに愛された名優で、「ミステリー・ゾーン」には4回も出演している。ホラ話のようなSFユーモア作品で、カリカチュアした人物描写や軽快な演技を楽しんでほしい。

【傑作選 2】

「暗闇の男」

脚本:ロッド・サーリング監督:スチュアート・ローゼンバーグ
ネオ・ナチスのひ弱な若きリーダー、ピーター・ボルマー(デニス・ホッパー)は、勢力拡大を夢見ていた。ある夜、姿を見せぬ暗闇の中にいる男が彼に演説や活動のアドバイスをした。演説は受け、勢力は拡大していく。暗闇の中の男は何をさせようというのか?1時間、たっぷりと描かれる心理ホラー。「イージー・ライダー」のデニス・ホッパーがファシズムのパワーにあこがれる青年ピーターのダーク・サイドを熱演する。独裁主義のファシズムを育てていく人間の弱さと凶暴さのずるさをえぐりだしていくサーリングのセリフが堪能できる秀作。暗闇を印象的に見せるジョージ・クレメンス撮影監督の映像も秀逸!

「人形は囁く」

脚本:A・T・ストラスフィールド監督:ロバート・バトラー
落ちめの腹話術師ジョナサン・ウェスト(ジャッキー・クーパー)は、人形にそそのかされて盗みを計画する。人形はまるで生きているようにジョナサンに語りかけた。人形が話すのを見た家主の姪の少女は人形のシーザーを詰問する…。「ミステリー・ゾーン」には、人形を題材にした数々の傑作ホラーがあるが、「人形は囁く」は第5シーズンの悪夢のような好編。特殊メイクのウィリアム・タトルが作り出した表情が圧巻のシーザーの不気味さを、ぜひ見てほしい。監督のロバート・バトラーは、後に「スタートレック/宇宙大作戦」「ヒル・ストリート・ブルース」を手がける人間描写の名手だ。

「火星人は誰だ」

脚本:ロッド・サーリング監督:モンゴメリー・ピットマン
何かが着陸した跡を追った警官が運転手とバスの乗客7人に出会う。しかし、運転手は客は6人だったと証言する。では、7人目は誰だというのだ!ロッド・サーリングがホラーとユーモア・タッチを見事に融合させた一篇。世の中には話していて、時々理解できない人がいるけど、ひょっとしたらその人は宇宙人かもしれないぞ…と、サーリングがニヤリとしているのが見えるような気がする。

【傑作選 3】

「真夜中の遊戯」

脚本:ジョージ・クレイトン・ジョンソン監督:ラモントジョンソン
老人ホームで、子供のようにふるまうのが若さの秘訣と話すホイットニーを、いい年をしてとバカにするベン。しかし、ベンは深夜にカンケリをして遊ぶホイットニーたちに、ある異変が起きたことを知った…。1983年に映画「トワイライト・ゾーン」としてスティーブン・スピルバーグ監督が劇場スクリーンでリメイクした名編。時間と空間を自在に行き来する「ミステリー・ゾーン」の魅力を放つ作品で、ラストに取り残されていく無残さと感動を呼ぶ演出が絶品。単なるホラーではないこの味わいをぜひ堪能してほしい。

「子供の世界」

原作:ジェローム・ビクスビィ脚本:ロッド・サーリング監督:ジェイムス・シェルドン
超能力を持つ少年アンソニー(ビル・ムーミー)は、村の絶対的権力者だった。両親も家族も村人も気まぐれで暴力的なアンソニーを怒らせないように言いなりになっていた。悪夢のような「ミステリー・ゾーン」の代表的な傑作。アンソニーの超能力によって、人間が人形になったり、夏に雪が降ったり、心理的バイオレンスが全編に展開する。原作のSF小説に惚れこんだサーリングはまず脚本を書いてしまい、数日後に原作のビクスビイにテレビ化の許可を申し込んだほどだった。1983年に映画「トワイライト・ゾーン」でジョー・ダンテ監督(「グレムリン」「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」)がリメイクした。2002年米国UPYネットワークで「子供の世界」の40年後を描く続編が制作され、同じキャストのビル・ムーニー出演で放送された。

「2万フィートの戦慄」

脚本:リチャード・マシスン監督:リチャード・ドナー
旅客機に乗りこんだウィルソン(ウィリアム・シャトナー)は、ノイローゼで病院から退院したばかりだった。夜空を飛ぶ旅客機の中で、ウィルソンは翼のエンジンに不気味な怪物が舞い降り、壊そうとしているのを目撃する。しかし、他の乗客は妻も含めて、誰も彼の言うことを信じなかった…。「ミステリー・ゾーン」屈指の傑作。「激突」「ヘル・ハウス」や「オメガマン」で知られるホラーSF作家リチャード・マシスンの脚本が圧巻。監督は後に映画「リーサル・ウェポン」シリーズを手がけるリチャード・ドナー監督。「スタートレック/宇宙大作戦」のカーク船長役、ウィリアム・シャトナーがウィルソンを熱演。ともかく必見のエピソードである。1983年の映画「トワイライト・ゾーン」ではジョージ・ミラー監督(「マッドマックス」「ベイブ・都会へ行く」)がリメイクした。

「遠来の客」

脚本:リチャード・マシスン監督:ダグラス・ヘイズ
人里離れた農場に1人で住む老婆(アグネス・ムーアヘッド)の家に小さな宇宙船が着陸する。宇宙船から現われた小さな人間は、老婆に攻撃してきた。老婆はこの奇怪な侵入者と戦い始める。老婆を演じるのは「奥さまは魔女」でサマンサの母エンドラ役を演じて有名なアグネス・ムーアヘッド。老婆は一言もセリフを話さず、息をあらげ、悲鳴をあげて闘う実験的な演出がサスペンスを高めていく。ディズニーのアニメ映画を手がけたこともあるダグラス・ヘイズ監督は的確なカット割でSFホラー・タッチの映像をもりあげた。ラストの切れ味もお見事!

【傑作選 4】

「物云わぬ少女」

脚本:リチャード・マシスン監督:スチュアート・ローゼンバーグ
ドイツ人のニールセン一家はアメリカの片田舎に引越し、周囲の人々とつきあうこともなく、暮らしていた。ある日ニールセン家が火事になり、不幸にも一人娘のイルザだけが生き残った。ハリー保安官夫妻に保護されたイルザだったが、彼女は一言も口をきかない。イルザは、両親によってテレパシーだけで話すよう育てられていたのだった。イルザにとって、現実世界は奇怪なミステリー・ゾーンだったのだ。彼女の運命は…。テレパシーで話す彼女がまるで無音の世界にいて、周囲の高ぶる感情が、押し寄せてくる音楽として表現されるテレパシー描写の演出が絶品。かつて娘を亡くした過去を持つ保安官夫人が、イルザを世話するうちに彼女が娘に見えてきて、ついには必死でイルザを守ろうとするドラマが感動を呼ぶ演出を味わいたい。ハート・ウォーミングな見応えがうれしいSF作品である。

「最後の支配者」

脚本:ロッド・サーリング監督:リチャード・ドナー
能率ばかりを考える社長のウィップルは、従業員を次々にクビにして、コンピューターの自動制御へ変えていく。社員から文句が出たところで、ウィップルには少しも気にしなかった。人間にとって本当に大切なものは何なのかというサーリングの、オートメーション社会に向けて放たれた皮肉なSFホラー。リチャード・ドナー監督のブラック・ユーモア好きの作品タッチも味わえる。SF映画の名作「禁断の惑星」(1956)に出ていた人気ロボットのロビーも効果的にゲスト出演している。

「無用な男」

脚本:ロッド・サーリング監督:エリオット・シルバースタイン
自由な読書を禁じられた未来社会。図書館員のロムニィ(バージェス・メレディス)は、裁判官による公開裁判で死刑を宣告されるが…。高さ5メートル以上の扉や、文字通りはるか高みの台座から見下ろす裁判官など、舞台劇にも似たセット・デザインと、見事なカメラ・ワークが仰天するような効果を生んだ作品。バージェス・メレディスの人間らしい小さな幸せを踏みにじる未来社会のアイロニーに満ちたセリフを存分に楽しんでほしい。「ミステリー・ゾーン」がTVドラマの実験場でもあったことがよく判る作品だ。舞台劇のディレクターだったシルバースタインのケレン味ある作品設計や音響効果も見ものだ!